(講師兼主席研究員)二コル・フォルマッテ(1)
【ソロムの魔獣暴走】鎮圧の動員要請を受けた私は、その功績により、主席研究員の地位を受けました。
主な研究主題は、宝具【翡翠の大鎧】の修復。
多頭大蛇の毒素に操縦席を汚染され、幾度も締め付けられ、ぶつけられた【翡翠の大鎧】ですが、【操縦席】の気密性については完全復元できていないものの、外装の傷や凹みに対しては、自動修復機能が働くようで、必要資材として深層高位魔石を継続提供され、それを【翡翠の大鎧】に投入したところ、その機能が働き、稼働も可能になりました。
「畜生……」
内装を改修し、毒素の除染をして、【翡翠の大鎧】の試行を私が行っていましたが、その姿を見たリードさんが恨みつらみの籠った発言をするわけです。
「リードさんは、もう背が伸びたから、【翡翠の大鎧】には乗れないのですから、諦めなさい。」
成長期であるリードさんは、あれから結構、背が伸びました。操縦席には辛うじて入れても、精度の高い操縦はもうできないでしょう。一方の私は、当然ながらこれ以上、背が伸びるわけもなく。
私も少し恨みがましい声で対応してしまいました。
……、リードさんの目が、こ わ い。
「冗談です。本心でないです。反省しています。だから睨まないでください!」
【翡翠の大鎧】の操縦席から、速攻で私は謝罪しました。
◇
もう、察していただいていると思います。
私は、ダルトーム騎士団への派遣を兼務している状況です。ある時は、王立学園の講師。ある時は王立魔術研究所の主席研究員、そしてある時はダルトーム騎士団の従士。そして、その正体は……
いえ、全部、正体ではあるのですが、いろいろと意図もあります。
たとえば、ダルトーム騎士団において。
私の位置づけは、『騎士リード・ワーランドの従士』という役割になります。
たとえば、王立学園において。
2年A組の担任をしていますが、これは、非常識極まりないリードさんの行動から「他の生徒を守るため」という役割になります。
そして、魔術研究所において。
今後も最高戦力になり得る【翡翠の大鎧】について、【災厄】多頭大蛇の討伐にもっとも貢献した操縦者の運用方法を引き継ぐため、という役目もあるわけです。
上席であるリードさんから逃れならない……それが、私の現況なのです(涙)。
19時に(2)を投稿します。




