(侯爵夫人)アマンダ・ソロム(4)
「ねえ、あなた。義兄のところなら兎も角、私達の家族と、高位貴族の嫡流では、婚姻は難しいのではないの?」
「文字通り、『調整が難しい』ので、ダルトーム伯も私も頭を抱えている感じさ。そもそも、君の云う通り、高位貴族が私達のような『魔力量が並み』の者を嫡流に充てることはない。
それならば、放っておいてほしいのだけれど、私が2~3年で侯爵家から外れるなどとは余りに無責任な考え方だ。それ故、『ソロムが約束を果たす担保』として兄上の家ではなく、私の家族と縁を結んでいくのが筋だろうと。」
「……」
「ダルトーム伯は、エミリ姫の夫としてベリウスを……とも考えたそうだが、それこそ、ダルトーム家は武門の出であり、【魔獣暴走】の時は自分が迷宮に降りたくらいだ。ダルトーム伯自身がその条件を飲み込むことはできないだろう。」
「たとえば、『ジェシカをダルトーム伯の側室に』とか……」
呟いた私は、怒りと悲しみが混ざった心持で、半分泣き顔になっていると思います。
「ダルトーム伯は否定しなかったけれど、『心底、その状況は堪えてほしい』という表情だったよ。貴族のそういった点を、伯爵はあまりお好みでない。それこそ、武家と商人という間柄だったが、その辺りの感覚は、私達と伯爵は非常に似通っているからね。
だが、そもそも私達は今後に向けて協力するといっても、今回の【ソロム】の後始末は、非常に大事になっていて、それを履行するための担保として、その協定だけでは周囲が弱いといっているのが実情だ。
分かり切った話かも知れないけれど……【ソロムの魔獣暴走】を引き起こした【ソロム】に、それだけの責任があるということなのだと思う。」
オーランドはそっと私の頬を撫でました。
「もう、申し訳ないとは云ってはいけないのだろうね……
いずれにせよ、ジェシカの嫁ぎ先についても、いろいろ考えはじめないといけない時期に来ていた。私達の魔力量が少ないのは、魑魅魍魎の世界に足を突っ込まなくてすむ、ある意味、良い特性なのかもしれない。
出来るだけ、ジェシカが幸せになれる方法を探していくから。」
ここ数日、ずっと悩んでいたのであろう。責任ある侯爵家の長として、娘の幸せを願う父として、オーランドはそう呟いたのでした。




