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(侯爵令嬢)ジェシカ・ソロム(3)

先般、土曜日・日曜日に約2,000字/回のペースで……っていってましたが。

よく考えると年末年始なんですね。

皆さん、年の瀬でドタバタしているかも知れないんですが、

折角なので、本日・明日・明後日と投稿していこうと思います。

 新学期がはじまって1か月と半月。

 私は、リード君のことを考える時間が段々増えていることに気が付きました。

 確かに、A組の中でリード君の編入という事件の衝撃インパクトが強かったのも事実です。

 でも、それだけではない。やはり、リード君の存在が奇異であることは疑いようがないでしょう。


「……それでは、属性の定義は、相当、曖昧ではないのですか、先生。人は自分の持つ属性の魔術しか行使できませんし、高位の魔術師は、誰がどの属性の魔術を使えるのか見通すことができます。

では、その属性の魔術とは?たとえば火属性の中級範囲魔術で、『彼方』と唱えれば、遠方の敵に炎を巻き付けることができます。それは疑いなく、風の属性による作用でしょう。

 しかし、術者は火属性しか持ち合わせていない。矛盾していますよね。」


「リードさ……ワーランド君。行使する魔術とは、実は、様々な要素が一体化パッケージされて存在するという事が判明しています。

 あなたの云う複数属性の力の影響を受けながら、その一体化された行使する魔術が、どの属性グループ配置されるかは、その術を形成した時点で決まるものと考えられています。」


「それは確定ではないのですか。独自オリジナルの術を形成することは、【研究所】でも行われていることだと思うのですが。」


「確かに術形成は、【研究所】の大きな研究課題ですし、私の専門の分野でもあります。

 ただ、現在社会で行使される魔術は、そのほとんどが過去から引き継がれてきた術なのです。【研究所】で開発した魔術も散見されますが、その絶対量は少なく、用いる機会も非常に限定されたものです。

 それは、過去から存在する魔術オリジナルを組み合わせることで、様々な奇跡を起こすことが可能なのです。

 そのため、極めて少ない開発事例サンプルで起きたことが、本当に原理に位置づけられる事象なのかは、未だ証明されていません。」


「……」


「ああ、ジェシカさん、ごめんなさいね。また、少し(・・)話が脱線してしまいました。教科書に戻りましょう。全く、気を抜くと、すぐに斜め上の質問を……ひいいいい……いや、要点を得た質問でしたね。

 さあ、次の単元にいきましょうか。実際に、魔素をどう動かすのかを進めてみましょう。」


 そう、フォルマッテ先生がリード君を依怙贔屓しているようには、あまり……全く見えません。どちらかというと、先生の方が「怖れ」を感じているかの様子です。

 リード君がフォルマッテ先生の弱みを握っているのでしょうか。その割には、信頼関係自体はしっかりしている感がありますね。

 こんな感じで、2年A組の初級ライトクラスの魔術実習の講義は進んでいきます。

 そして、講義が終わると、いつもフォルマッテ先生は疲れ果てている状態になっています。


 ところで、講義自体は、非常に効率良く分かりやすく教えてくださっていて、私としては大変助かっているのですが、講義時間の半分はリード君の質問に対する回答なので、講義の進行度合は、当初の想定どおりになっています。


 講義が終わり、フォルマッテ先生が教員室に戻ります。

 いつもであれば他の級友クラスメイトと教室で合流するところですが、彼女たちの講義が遅れており、私とリード君は教室で自習することとなりました。

 こういう時って緊張しますよね。


 でも、リード君は、この空いた時間に、おもむろにノートを取り出し、それを不機嫌そうに眺め始めて……


 ふと、リード君が、こちらを見ました。お互い目があいました。

 凄く不機嫌なリード君の表情……、これはとても気まずい……。やはり、リード君は「私」に対してマイナスの感情をお持ちなのでしょうか。


「ああ、ああ、ジェシカさん、ごめんなさい。学校とは全く関係ないところで、ドタバタしているもので。」


「それは、やはりワーランド領のこと、それとも、探索者のお仕事のことなのですか。」


「マリノ君あたりから聞いたのかなあ……、ご存じだったら恐縮だけど、実家の方が少しうまくいっていなくて。何分、領地のことなので伯爵家とも調整していかないといけないけれど、今、父はあまり動けない状況なものだから、僕も巻き込まれている感じなんです。」


「あの……、同じ魔術実習しょきゅうこうざを受けていることですし、もう少し言葉を崩してもらっても構いませんよ……?」


「そうですか。ジェシカさんがそういうなら。ジェシカさんも?」


「ええ、私もお許しいただけるなら。同じ級友クラスメイトですし。」


 遅ればせながら、リード君と自己紹介をしあうこととなりました。

 そして、リード君は私のことをほとんどご存じないということも分かりました。

 正直、社交界では有名な話であり、私の魔力が貴族としては平凡な事について、私のいないところで揶揄されてはいますが、私が見聞する範囲ではそういった事はありません。


 家の事情が大きく変わりましたし、私の置かれている立場もやはり大きく変わりましたが、こうして、【王立学園】にソロム家の者として昨年度と変わりなく通えているということは、ありがたい事なのかも知れません。

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