領都【ダルトーム】(5)
ここはダルトーム探索者協会の協会長室。
そして、僕は【協会】からの依頼に応え、多量の高位魔石を供出し、王家の宝具の操縦者としての役割を果たしたのです。
ダルトームの【協会】は、御屋形様の要請に応え、【ソロム】での【魔獣暴走】の鎮圧に多大な貢献をしたのです。
事実です。ウソは云っていません。
僕も、協会長である先生も、どちらかというと、あまり金銭には興味はなく、本当はダラダラとやっていきたいだけなのです。
いえ、別に志が尊いわけではなく、単に一定の財産や収入を確保できているので、面倒なことに関わりたくないというところなのです。
「この師匠にして、この弟子あり」ですね。
今回は、【ソロム】の不手際を、【ダルトーム】が解決した構造になっています。
【ソロム】の後見は【王家】。【ソロム】はこれまで蓄積してきた膨大な富を全て吐き出す形になります。王家もまた、【ソロム】が約定を違わぬよう、相当の配慮を行う必要があります。何せ、王家の要請に基づき、各伯爵家が【魔獣暴走】の解決にあたったのですから。
僕には2つの立場があるということ。
僕は、正式に【ダルトーム騎士団】の騎士として爵位を得ていました。宝具を操るものとしての位置付けと、【魔獣暴走】が終わってみれば、その働きに係る褒美について、親権者や後見者に介入させない措置のためもあるとのこと。
その代わり、ダルトーム側で仕事を続けてね、といったところでしょうか。そういえば、『秋の交遊会』の頃から、そんな事を云われて(ちらつかされて)いましたね。
もう一つは、B級探索者として、【協会】からの最重要級の依頼を解決した事に対する報酬です。僕は大量の高位魔石の供出と、宝具を操るものとしての推薦を見事に熟したことになります。
……、【翡翠の大鎧】、さすがに内装への被害と汚染が酷く、復旧できるかは未定とのこと。ただ、外装や駆動系の機能自体は失われておらず、魔術研究所預かりの案件となったとのことです。
操作者がいない状況で、あれだけの巨体を運ぶのに、どれだけの魔石が必要かは考えないことにしましょう。かなりの物資を無理やり【南の大迷宮】の20階層に運び込んでましたから、階層移動や転移魔法陣での物資移送に係る追加魔石は相当のものだと思います。
ああ、本当に格好良かったなあ、【翡翠の大鎧】。廃棄するなら、譲り受けたかったなあ……