領都【ダルトーム】(4)
「なあ、リー。お前は【魔獣暴走】鎮圧のため、高位魔石2千個を供出し、宝具【翡翠の大鎧】を操って【魔獣暴走】を鎮圧した。まさに救世の英雄だ。
でもな、だれがどう見ても『おかしい』、あり得ない状況だ。
単刀直入に聞く。
ここだけの話だ。お前、何を企んでいる。」
先日、御屋形様から云われた台詞を、先生はそのまま僕に投げつけます。
「先生、分かってていってますよね。」
「ああ。本当に、本当に、一応、お前には感謝しているんだよ。一応な。」
受付嬢のユーリさんが、先生と僕の前にお茶を置いてくれています。
ああ、ユーリさんってかわいいなあ……と、いえるような雰囲気ではありません。
先生も、ユーリさんも、本当に疲れ果てた表情をしています。
かくいう僕も、12歳という年齢で、今回の作戦で意識を失うまで働き、体調が戻ってからも財務室に籠って、まさに終戦処理に巻き込まれているところです。
僕、学生なんですよ。
いつ、学園に戻れるんですか?
※【王都】において、今回の【魔獣暴走】案件の事後手続きがひと段落するまで。
「はあ……、俺もユーリも愚痴をいいたいのは山々なんだが、まあ、今回の【魔獣暴走】の被害がこの程度に収まったのは、すべてお前のおかげだし、お前が悪目立ちしたくないっていってくれているから、俺の交渉もはかどっているんだけどな。」
ダルトーム伯爵家、家宰のトルド・グレインさんと、ダルトーム探索者協会会長のアーチボルト先生が、実の兄弟であったということは、今回の【魔獣暴走】案件ではじめて知ったところです。
先生は、高位の魔術師であったことも考えると、おそらく、どこぞの高位貴族の子弟とは思っていましたが、まさかダルトーム伯爵……御屋形様の従弟だとは思いもしなかったところです。
「僕としては、もともと、先生のおかげで稼ぐことのできた魔石ですし、【大迷宮】の事を考えると、これからも定期的に魔蟲を退治し続けた方が良いことが分かったんで。
そう、今回の魔石の確保は、まさに先生のおかげですよ、先生!」
「どさくさまぎれに、俺に面倒を押し付けようとするんじゃねえよ!
はあ、そうはいっても、お前はまだ子供だしなあ。エーデの奴に押し付けようと思っても、あいつもそれどころじゃないしなあ……」
いつも、感想や誤字修正、ありがとうございます。
一応、今回のリード君のお話は、プロット上、領都【ダルトーム】(6)で終わります。
ただ、折角なんで、もう少し、ことの顛末を含め、書き進められたらなあと思っています。
引き続き、お付き合いいただければと思います。