表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/348

【オールラウンダー】アーチボルト・グレイン(1)

 正直、家庭教師の依頼アルバイトは楽だ。

 週に1回、領主家の次男坊に魔法を教えることと、あとは月に幾度かの【協会】からの依頼を捌くことで十分だ。

 俺もすでに40歳になる。

 探索者としては、成功した部類だろう。既にそこそこ金も貯めた。今のような仕事量でも金は貯まっていく。若い嫁さんみつけて、家でも買おうかなと思っているが、面倒くさいのでそこまではしていない。


 魔術を教えている領主家の次男坊リードは、これといった特徴のない容姿に、これまた特徴のない魔力量しかもたない貴族だ。13歳になったら貴族たちの子弟が集う王都の学園であっても、いわゆる平均レベルであろう。

 風と火の初級魔術が使えて、魔力の一部を身体強化に充てる方法を身に付ければ、王都であろうと領主家であろうと、一定の仕事はできるだろう。さすがに、妾腹の子ということで家自体に関わる人生はないと思っていた方が現実的だが、平凡とはいえ「平民とは異なり、魔術も武術も使えるようになる」なるのだから、人生としては悪くない。


 1か月間、寝込んでいたらしいが~それもよくあることだ、流行病で貴族の子ですら死ぬことなんて~ここ3か月は、どうにも不可思議なことに領主家の敷地内にある小規模迷宮の掃除に拘っているらしい。


 ある意味、剣術でいえば「素振り」の延長みたいなものだろうか。

 ひどく単調で、基本ではあるがやりたい部類の訓練ではない。埃っぽい迷宮の中で、下等とはいえ魔獣と相対し、それを退治したところで暗灰色のあまり価値のない魔石だ。鼠とはいえ魔獣に噛み付かれれば死に至る可能性を考えると、わざわざ、この規模の迷宮に入り込む必要はない。

 だから、強いて言うなら、修業としてなら理解できる。

 魔術はどんなに使っても、その効果は修業を理由に向上することはない。でも、戦いの中で如何に円滑で効果的に術を行使するかという視点でいえば、只々、練習量と経験量に尽きる。


 その意味では、「風と火の初級魔術が使えて、魔力の一部を身体強化に充てる方法を身に付け」つつある。俺が指導しなくても、俺の術を行使する様を診て、少しでも術を身に付けようとして、それが着実に進んでいるのだから、俺としても好都合だ。


 先日、リードは小規模迷宮の奥にある転移陣を見つけた。

 毎日、小規模迷宮に入って、かたっぱしから魔獣を退治しているせいか、魔獣の気配も一切ない。

 転移陣は、シンプルな単なる移動用の陣であった。


 2人で転移してみると、そこは石壁で区切られたセーフティゾーンであった。

 人が入った形跡もなく~もし入っていれば、ワーランド家からの探索ルートが確立されているであろう~どこかの大迷宮の外れルートからの転移陣に相違なかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ