【災厄】多頭大蛇(2)
◇◇◇◇
諜報部隊が【南の大迷宮】に帰還した様子です。
本部の方が騒々しくなりました。
騎士達に召集がかかります。僕と二コラ嬢も声がかかります。
「私も呼ばれるなんて、どういう事かしら……」
二コラさんが青ざめています。その気持ちも分かります。
まあ、いい報告ではないよね、残念だけれども。
◇◇◇◇
「悪い報告と、そこまで悪くはない報告がある。」
騎士、従士、探索者等、【ソロムの迷宮】に投入されるメンバーを前に、ダルトーム伯爵の説明がはじまった。
「まず、想定どおりの悪い報告から。
【災厄】級の魔獣が上層に向かってきている。多頭大蛇だ。
頭の数は9つ。胴体には短い脚が4つ。全長は数十メートルで、洞窟型迷宮だと「つっかえて」上にはあがれない大きさ、つまり相当でかい。また、多頭大蛇の権能は『毒と再生』であり、周囲の魔獣群を巻き込みながら進行している様子。
少なくとも【東雲の霧玉】の霧の効果は望めないだろう。」
伯爵は軽く手をあげ、そのまま説明を続ける。
「そこまで悪くはない報告とは、後方支援を含めて毒対応できる体制がすでに整っている事。それと、多頭大蛇はひたすら上層階をめざしており、最初の一手はこちらから攻撃できるという点だ。相手は相当の巨体であり、『嵌め』ることができれば、ほぼ身動きが取れない状況にできるだろう。」
「御屋形様、毒が無効となれば【東雲の霧玉】ではなく、高位術式での集中砲火で、ということでしょうか。」
「多頭大蛇の瘴気の被害をできるだけ防ぐためには、従来のセーフティエリアを中心とした大気制御が望ましい。初撃は交差路にて集中砲火、セーフティエリアに向け撤退し、【翡翠の大鎧】で防衛線を構築し、瘴気を制御しつつ、多頭大蛇を削る。
持久戦だ。」