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鬼と忌み子  作者: 朔月
1/1

出会い

亀更新ですが、お読み頂けると嬉しいです。


それはある昔、山奥の村には古くからの言い伝えがあった。

曰く、白髪赤眼の子は呪いを招く忌み子だと。


だが忌み子であれど7つまでは神の子、育てねばならぬと云う掟もあった。

それは当たり前の様に7つを超えた忌み子は捨てられる、そういうものだった。


ある年その村では忌み子が7つになろうという年だったのが幸か不幸か嵐で土砂崩れが起き、村の田畑は潰れ飢饉が起きた。



飢えに苦しむ村人達は忌み子を山の蛇神に生贄にすれば飢饉を逃れられるかもしれないと、どこからともなく噂がたった。

根も葉もないが1人でも口減らしをと村長や忌み子の両親は忌み子を山奥の古い祠へ追いやった。


逃げぬ様にと雨よけの柱に縄までして。



忌み子は何も知らない女の子だった。


「ひっく、ぐずっ」


夜になっても来ない迎えに何も知らなくとも自分が捨てられた事位はどうしても分かってしまう。

忌み子はどうせ7つまでとろくな物も食べられず、着物も使い回しの古着でみすぼらしい子供だった。



夜通し泣く忌み子に声がかけられたのは朝日が出た頃だった。


「やかましいぞガキ、お前がいつまでも泣くから夜が明けてしまったではないか」


「ひにゃっ!?」


突然飛んできた男の苛立った声に変な声を上げた忌み子はぺしゃっと転んでまた泣き出した。


祠の裏から出てきた男は忌み子と同じ白髪赤眼の大男であった。

端正な顔を不機嫌そうに歪め忌み子を見やると、縄を長い爪で容易く切ってしまった。


「そら、縄はもう無い。どこへでも行け」


しっしと追い払うように忌み子に言った大男はこれで驚いたガキがどこかへ行けばいいとそう思っていた。


「帰る場所、な、ない」


しゃくりあげながら忌み子は大男を見上げ、大男の着ていた黒い着物の裾を掴んだ。


「あ?知らねぇよ、俺は寝る」


忌み子の手を振り払い、大男は祠の裏でそのまま眠ってしまった。



暫く寝てなんだか暖かいと目を覚ました大男の横には丸まって穏やかに寝る忌み子がいた。


「ガキ!?なんでまだいるんだよ」


大男の驚いた声に忌み子は目を開くが


「あったかい…」


そう一言発して忌み子はまた寝てしまった。


忌み子は村では誰かと寝るなど許されず、物置でいつも寝ていた為に大男の体温が心地よく

何より空腹と山を登って夜通し泣いた疲労で動けなかったのだ。


大男は大きく溜息をついて忌み子を退かそうとしたが、裾を掴んで寝る忌み子の安心した様な顔に何故か振り払えず面倒になった大男も寝直す事にした。



大男はその日珍しく嫌な夢も見ずによく寝れた。

だが、腕の中に忌み子の温かさは無く暫し呆然としていた。


そうか、ただ疲れていただけで…

ここに留まる理由もなく、あの忌み子は隣村にでも向かったのだろう。


何故かざわざわした感情が芽生え居心地が悪くなった大男は山の中へ入っていった。

少し気を紛らわしたかったのだろう。



森の中をふらりと歩き川辺の岩に腰掛け感傷に浸る等久々だと自嘲しながら空を見ていると不意に裾を何かが引いた。


「あ?」


見下ろすと、忌み子がボロボロになってそこにいたのだ。


「なんだお前、怪我してんのか」


自分から心配する様な言葉が出た事に大男は驚きながらも忌み子の傷に酷いものがないか観察し始めた。


「これ、きのう、ねかせてくれた、お礼」


笹や篠竹で編んだのであろう不格好な籠に、木の実や果物、薬草が入っていた。

それを大男に差し出す忌み子。


「お前、これ探しに森に入ったのか?」


呆れた様に大男が言うと忌み子は縮こまって駄目だったかと、尋ねる。


「寝かせたって言っても地べただぞ。それにお礼なんて要らねぇんだよ。でもまぁ、ありがとな」


頭を撫でてやると忌み子は嬉しそうにはにかんだ。

大男はその笑顔がなんだか心地よくて、傍に置いてもいいかもしれないと思い始めていたのだった。

最後までお読み下さりありがとうございます。

拙い分ですが、励みになります。

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