腕相撲 1
翌日の夕刻。
俺と白玉は円型のテーブルに各々の右腕を出して臨戦態勢を取っていた。
これからふたりで腕相撲を行うのだ。
白玉からの提案だったが、俺は嘲笑した。
いかに怪力とは言え、俺の本気の腕力と張り合おうなど笑止千万。
すると奴はにひーっと満面の笑みを浮かべて告げた。
「これは普通の腕相撲じゃないよ。どっちが我慢できるかの腕相撲だよ」
意味不明な提案に若干困惑しつつも白玉の手を掴んで驚いた。
奴は全く力を加えていないではないか。やる気を感じられぬ。
「どうした。本気で来い」
「さっき言ったじゃん。我慢比べの腕相撲だって」
「成程。この勝負、先に根が尽きて倒した方が負けなのだな」
「そういうこと。飲み込み早いね」
時は過ぎていく。食事は振舞ってやったので空腹の心配はないだろうが、この勝負をいつまで続けるつもりなのだろうか。
互いの手を握り、けれど決して力は加えてはいけない奇妙な腕相撲。
俺の額から汗が噴き出し、次第に力が抜けていくのを感じた。
「やはり、力が」
「あれ~? 不動くん、もうギブアップなの?」
「お前如きに負けるなどあってはならぬ」
ふたりだけの腕相撲はまだ続く。