謎の美少女登場!!
俺と蜘蛛女の間に割って入ったのは小柄な女のガキだった。
白髪のツインテールに、赤いチャイナ服を着ている。髪の間から見える耳は尖っていた。女は地面を蹴って跳躍すると、宙を舞って踵落としを蜘蛛女の顔に当てた。
「ギィヤアアアアアアアッ!」
断末魔をあげて顔から胴まで縦に引き裂かれた蜘蛛女はそのまま往生された。
この女、できる。いかに相性の問題で弱っているとはいえ、俺が苦戦した蜘蛛女を一撃で撃破したのだ。並の使い手ではない。
「よっと」
動けないでいる俺を見ると軽々と糸を引きちぎると、手を差し伸べた。
「君、大丈夫?」
俺が手を掴んだ瞬間に一気に立たされてしまう。
一二三キロの俺を引き上げるとは中々の怪力だ。
ガキは服の埃を払って笑顔を見せた。
「にひー。私は白玉! 君はなんていうの?」
「怒りをもって人を救いに導く不動仁王だ」
「不動くんって言うんだね。よろしく!」
手を差し出されたので形式的に握手をするが、このガキ、俺が怖くないのか。
「怖くないよー。不動くんってイケメンだし」
イケメン? それに今、読心を使用したな。
これまでの人生で散々なほど凶悪顔だの鬼だのと言われた俺が初めて顔面を称賛された。
どうやらこのガキの美的感覚は相当に世間ズレしているに違いない。
その時、おずおずとした様子で先ほどの赤い頭巾のガキが木の影から出てきた。
「あの、ありがとうございます」
「礼は要らん」
ふたりに踵を返し歩き出そうとするが、一瞬で白髪のガキに行く手を阻まれる。
腕を広げて先へと行かせない素振りを見せた。そして頬を膨らませて腕を組む。
「不動くん、泊まるところあるの?」
「無い。だが野宿でも構わん。慣れている」
「ダメだよー、ご飯も摂らなくちゃ。じゃあ、行こう」
俺の腕を引っ張り超スピードで走り出す。
振り返ると赤い頭巾のガキが手を振っているのが見えた。
それにしてもこの女、なんというパワーだ。
中々などと言うレベルではない。この俺が一切の抵抗ができないのだから。
これはどうやら評価を改める必要があるかもしれん。
俺は基本的に自分より優れた者にしか名前で呼ばない。
だから弟子に対しても「ガキ」で通している。だが、こいつはどうやら違うらしい。
「白玉、俺をどこへ連れていくつもりだ」
「おー、初めて名前で呼んでくれたねえ! 嬉しいよ、不動くん。
ってもさっき会ったばかりなんだけど! どこに連れていくかって?
街の喫茶店だよ。美味しいお店を知っているから! 私に任せて!」
どうやら俺は大変な女に出会ってしまったらしい。
一体、これからどうなるというのだ。
先が思いやられる。