令嬢レベル1-4
優しいジャンお兄様は私がせがむとそれから毎日教本を説明しながら読み聞かせてくれた。
そんな私たちを知った一番上のレンお兄様も学園の教本を時折私に読み聞かせてくれて、ドーリィ女史の授業は無視して黙々と書き取りの練習をした。
ドーリィ女史との関係は完全に破綻していたが、お父様に言いつければ私がサボっていることもバレてしまう。故に私と女史は日々楽しくもない時間を過ごしていた。
『やはり教師に勉学を習うべきだと思います。100の知識は1つの体験に負けることもありますので』
わかっていましてよ。でも、ドーリィ女史は絶対に嫌ですもの。
『彼女のあの態度はお嬢様に非があっても?』
あっても!あの言葉だけは絶対に許せませんわ。
ドーリィ女史も初めは優しかった。それを授業を嫌がって聞かなかったりサボったりした私のせいで変化してしまった。
それはわかっているけれど、今更謝ったりなんか出来ないし彼女とは口も聞きたくないわ。
怒っているとやはり頭にふわりとした感触を感じる。現実には何も無いけれど、ささくれだった心はすっと落ち着いていった。
『でしたら何とかほかの教師を見つけなくてはなりません。ジャン様とレン様のお話だけでは限界があるとわかっておいででしょう?』
それは、わかっている。
お兄様達とのお勉強はとても有意義だ。その証拠に知識の中の細かいものは大体が「ダメダメ」から「ちょっとダメ」へと進化を遂げた。
だが、教養と美容が全くすすまない。
婚活曰く、お兄様たちは男性だからそういうものは女性に聞かねばならぬようだ。
だがうちは母様が居ない。母様は私が小さい頃に亡くなったそうだ。
メイドや侍女、下働きの女たちは居るけれど。
私は女性と言う性別のものには一通り嫌われていた。私も嫌いだからおあいこだけれど。
お父様は私のわがままは大抵聞いてくれるけれど、基本的に私を見ないから気づかない。
レンお兄様は学園の寮で暮らしていてたまにしか居ないので気づかない。
ジャンお兄様は気づいているけれど、私が何も言わないからどうしたものかと様子見をしてらっしゃる。ただ、気づいているので私をうんと可愛がってくれてる。
でも、このままじゃ淑女計画が詰まってしまうわ。
どうしようと困っている私を救ってくれたのは、いつも優しいジャンお兄様だった。
「ねえカレディ。明日は僕と一緒にお城に行ってみないかい?」
「おしろ、ですか?でもいいのですか、お兄様はお勉強をしに行ってらっしゃるのでしょ?」
「うん。カレディ昨日割り算が分からないって言ってたろ?僕もちょっと苦手だからカレディが良かったらお城にいる先生に一緒に質問しに行かないかな?」
「お兄様が良いと仰るなら行きますわ」
お出かけ!お兄様と!私が家の外に出る機会はほぼ無い。
大好きなジャンお兄様とお出かけで、はしゃいで。
その夜はクローゼットから余所行きのお洋服をいっぱい出して明日はどれを着ていこうかうんと考えて。
これと決めたお気に入りの服を抱きしめて眠ってしまい、お城には二番目にお気に入りの服で行くことになった。




