令嬢レベル3-8
本日四話目の更新です。次の更新は20:00です。
目覚めた瞬間、服が乱れてないことを確認してとりあえず安堵した。
穢されていればそれだけで終わりだったから。
『クエスト開始まであと3分です』
そして場所を確認する。
なんと、そこはまだコースター邸だった。窓から見える庭園がそうだったのでわかる。けれどこの部屋は見たことがない。
ベッドに寝かされていたけれどいつもの客間では無い。
見たことの無い私物ーーーーそれだけで察することが出来るが、今はそれを確認する余裕はない。
見たところここは寝室。
ならばその扉の向こうはーーーー
『くそっなんで誰も俺の命令を聞かないんだ』
向こう側から苛立った声が聞こえて、背筋がゾッとする。
辺りを見回し、慌てては居るが机や引き出しを漁る。
そして見つける。文房具が収められている棚を。手紙が置いてある横に……ペンや紙、そしてハサミがあった。
『クエスト開始します』
そしてガチャっと言う扉が開く音と共にーーージョキっと髪を切った。
「り、リルチェル!?何をやってるんだ!!」
ジョキジョキと慌てたドイル様が止める前に滅茶苦茶髪を切る。
そして腕を掴まれるがーーーーハサミを手放して、彼の手を振り払い睨みあげる。
『美髪スキルがレベル2に下がりました!』
『基準を満たしません!美容レベルが4に下がりました』
『基準を満たしません!令嬢レベルが2に下がりました』
『基準を満たしません!スワトロ語レベルが…』
一瞬目を瞑り、システムメッセージをオフにする。
消す直前語学など様々なスキルのレベルが落ちるのを感じた。恐らく令嬢レベル3にすることによって上がったスキルだろう。
これで令嬢レベルは2。かっと目を開き睨みつける。
『リルチェル・フランソワ(10)』
『令嬢レベル2(愛人や一つ格上までの跡取り、それ以上上の三男レベル)』
つまり、ドイル様。貴方は対象外です。
「貴方なんかに助けられるくらいならば、私は修道女になりますわ!いい加減迷惑ですの!私とヴィの邪魔をなさらないで!!」
振り払われた手を見て、短い髪になった私を見て
呆然とするドイル様。その瞳には今まであった熱っぽい感情は見えなかった。代わりにあったのはーーー失望。
お願いだからこれで諦めて。そう思っているとドイル様が後ろから現れた誰かに振り向かされてーー殴り飛ばされた。
「リル!?」
「ヴィ!」
息を切らして現れたヴィに駆け寄り、手を広げた彼に抱きしめられる。強く強く抱きしめられてカタカタと身体が震え出す。
怖かった。すごく怖かったんだ。
ヴィが助けに来てくれた。そう思うとこぼれ落ちる涙が止まらなかった。




