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令嬢レベル2-13


即座にペンを置いて立ち上がり、頭を下げる。


「本日はお招きいただきありがとうございます。フランソワの長女、リルチェル・フランソワと申します」


咄嗟の事だったが、何とか完璧な礼を取れた。


「楽にして良い。初めましてコースターの当主のザキエラ・コースターだ。こっちは息子のロック。ビシューの兄に当たる」


「初めまして、ロック・コースターです」


頭をあげると、硬い表情の二人がいた。無表情でこちらを凝視してきて戸惑いながらもにっこりと笑う。

……だが、反応はない。一切無い。


「父上、兄上、リルチェルが怯えます。リルチェルはまだ8歳の少女なんですよ」


え、どうしようと困っていると苦笑を浮かべたビシュー様がフォロー?を入れてくれた。するとザキエラ様は眉間に皺を寄せて、不機嫌になってしまった。え、どうしよう。


『リルチェル嬢はロシャン語が堪能と聞くが、本当か?』


『あ…はい。一応家の先生にはどこでも通用するとは言われています』


『ふむ』


【スワベル語も堪能とビシューが言ってたけど…】


【はい。スワベル語も習得してあります】


ザキエラ様とロック様の質問に答えると二人はふむ、と考え出した。


【言葉だけか?外国に関しては他にも何かあるか?】


【あ、今は外国に関しては言葉だけになります】


【そうか。ならば教師は用意するから指定した教育を受けてもらうが、構わないね】


【わかりました】


私の返答に静かに頷くと、お二人は部屋から出ていった。

一瞬の嵐のようで、居なくなったあと放心状態になるとビシュー様に頭を撫でられて、座らされた。


「リルチェルは本当にスワベル語も上手だね。僕も負けてられないや」


「ほっほ、そうですのう。若様は頭に入れることはお上手でも発音等が苦手ですからなあ」


「彼女の前でばらさないでよ先生」


「ほっほっほ」


えっと。えっと。

好感状態になれたのだろうか。

甘さの欠片も見当たらないザキエラ様とロック様。お二人の考えは私には一切読めなかった。


「僕も勉強を頑張るから、一緒に頑張ろうねリルチェル。あ、でも辛かったら父さんを止めるから言ってね」


「わかりました」


でもまあ。教育環境を整えてくれる=クエストは成功なんじゃないだろうか。となると表情は読めなかったけれど好感を抱いてくれたんだと、思う。




老先生の授業は非常に有意義な時間だった。

授業が終わると、私はビシュー様とお茶を頂いた。


「これがロシャンで飲まれているお茶だよ」


「……随分甘いんですね」


「そうだね。でもさっぱりしていて美味しいだろう?」


「ええ」


よく見れば茶器もレースと同じく模様が描かれている。

言葉も、歴史も、物まである。

コースター家に溢れているロシャンの物。


「ビシュー様はロシャンがお好きなんですか?」


だからてっきりロシャンの文化が好きなのかと思ったのだけれど。

問うた瞬間、ビシュー様の表情はわかりやすく陰った。



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