令嬢レベル2-12
「リルチェル待たせてごめんね」
「コースター夫人が相手をしてくださったので大丈夫ですよビシュー様」
夫人に連れられるまま食堂に連れていかれると、途中でビシュー様が待っていた。
ビシュー様は私の全身を一通り見て察してくれたようだ。
こんなに緊張する着せ替え人形は初めてだった…!
「リルチェルは愛らしいから飾りがいがあったわ。ごめんなさいねビシュー、貴方のあげた髪飾りを着けてきてくれたのに外しちゃったわ」
「せめて僕に一目見せてから着替えさせても良かったんじゃないですか、母上」
「また次回にしなさい」
ニコニコと息子を切り捨てる母に、ビシュー様はため息をついてから私に向かって微笑んだ。
「でも、似合ってるよリルチェル。大人びた衣装もとても素敵だよ」
「ありがとうございます。こう言った服はうちにはあまりないので新鮮ですね」
フリルの少ないシンプルで、刺繍と宝石が縫い付けられたドレス。宝石つきのドレスなんて、怖すぎる。
内心でガクガクしてるとビシュー様が目の前で頭を下げて手を差し出した。
「では、お嬢さん。ランチまで僕にエスコートさせてくれますか?」
「…はい、お願いします」
若くても紳士なビシュー様にエスコートをされて食堂に案内される。
食事を取るのは夫人とビシュー様と私だけのようだ。
「旦那様と長男はもうすぐ帰ると思うから後で挨拶させるわね」
「ビシュー様は三人兄弟でしたっけ?」
「うん、一番上の兄さんは父の補佐をしていて、すぐ上の兄さんは今、留学してるんだ」
「留学!といえばロシャンですか?」
「うん。僕も12になったら行く予定なんだ」
「そうなんですね」
我が国に学園は無い。先程読んだ本にロシャンには大きな学園があると書いていたが本当だったようだ。付け焼き刃でも身につけた知識が発揮されるのはとても楽しい。
「でも長期連休には帰ってくるから、安心してねリルチェル」
安心ってなんだろう。よく分からないけれどとりあえず微笑んで頷いた。
食後はビシュー様に午後の先生に紹介された。
その時、あれ?と思った。
何故なら緊急クエストの時間よりも早かったからだ。当然システムアナウンスも無い。首を傾げつつも、ビシュー様と一緒に授業を受ける。
「流石はチェンダー女史の自慢の生徒さんじゃなあ。理解がとても早いのう」
「先生の教え方がわかりやすいのです」
今日から受ける私と、既に受けていたビシュー様の進みは当然違う。
けれど老先生はテキパキと別習熟の授業を教えてくれ、またビシュー様も自分の勉強をしつつちょこちょこと教えてくれた。
恐ろしいことに、老先生はスワトロの歴史と同時にロシャンと、エルドラという国の歴史を教えてくれた。
同年代としてリンクさせつつ、ごちゃ混ぜにならないように、けれど的確にわかりやすく教えてくれる
おかげで、今日初めて受けたの歴史の授業なのに
『歴史スキル(ロシャン)のレベルが1に上がりました』
『歴史スキル(エルドラ)のレベルが1に上がりました』
『歴史スキル(ロシャン)のレベルが2に上がりました』
『歴史スキル(エルドラ)のレベルが2に上がりました』
『歴史スキル(スワトロ)のレベルが13に上がりました』
レベルがゴリゴリ上がっていく。と言うかスワトロは既に学んで居るのに初心とも言えるはずの部分でも知識になる部分があるのがすごい。
とても授業が楽しかった。
そんな時だった。
『クエストを開始します』
唐突にアナウンスが聞こえたのは。
するとコンコンと扉がノックされて。
「失礼する」
中に入ってきたのは赤毛に緑の目のおじ様と、白金の髪に緑の目の青年だった。
即座に察する。
この二人が緊急クエストの対象で………ビシュー様のお父上と兄上だ。




