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令嬢レベル2-10


今日はコースター家にお呼ばれをする日だった。

そんな日にこんなものが出れば薄々何を求められているのかわかるだろう。


『緊急クエスト』

『今から5:21後に発生する接触クエストを好感状態でクリアせよ。好感状態でクリアすると一部スキルの経験値に追加ボーナスが入り、失敗すると一部スキルの必要経験値が増えます』


ああ、コースター家で逢う先生に緊急クエストが入ったようだ。

ただでさえ侯爵家!に行くのに

ただでさえ婚約者候補!なのに

新しい先生!なのに

どうやら緊急クエストまでも私を追い詰めて来るそうですよ…ハハハ…。


「出来ましたよお嬢様。まるで合わせて作られたように髪飾りもお似合いですわ」


「…ありがとうアリー」


両親から貰ったドレスを着て、ビシュー様から頂いた髪飾りをつけて。アリーに身支度を整えて貰い勉強道具を小さなカバンに入れて手に持つ。

部屋を出ると母様が廊下の向こうから歩いてきた。


「リルチェル…コースター家からお迎えの馬車が来たわ」


「わざわざ呼びに来てくださったのですか?ありがとうございます母様」


「…なるべく貴女の不安を和らげてあげたいの」


そう言うと母様は私の手を握った。子供みたいに…子供だけど、手を繋いで貰って共に廊下を歩く。


「ごめんなさいね、リルチェル。貴女に政略結婚なんてさせるつもりは無かったのだけれど、うちにそこまで力がなくって…」


「母様、気になさらないでください。それに父様が頑張って『候補』にしてくれたこと、わかっていますから」


「リルチェル…!」


母様、大好きです。

母様や父様のお気持ちはわかっています。私に恋愛結婚をさせたかったと。


大丈夫、わかっていますから。


……そんな子供を売り払うような、悲嘆にくれた様を見せるのはおやめ下さい…!


え、私が思う以上に状況は悪いのだろうか。もう断れない問答無用コース一択なのだろうか。

……幸せな結婚は、出来ないのだろうか。


母様の悲しそうな態度で不安になる。怖くなる。


そんな私の不安を煽ってくれたのはお迎えの馬車だった。


きらきらドーン


そんな擬音語がつきそうな大きくてキラキラと飾られたコースター家の家紋入りの馬車。

御者と、馬に乗った護衛が四人。


え、護衛つきの馬車なんて乗ったこと無いですけど。と思ったけれど馬車に乗ったのはまだエイラー子息の誕生日パーティに行った時だけだった。比較対象が少なすぎて分からない。


「お嬢様、お手をどうぞ」


若く、スーツを着た御者に手を出されて彼に手伝って貰いながらば一人馬車に乗り込む。

馬車の中には本やぬいぐるみ、花やクッションなど明らかに私への気遣いの品が置かれていた。


「気をつけてね、リルチェル!」


「ふぁっ、あ、ああ、はい母様!行ってまいります」


「中のものは奥様とビシュー坊っちゃまからのプレゼントになりますのでお好きにしてください」


そう御者が言うとがちゃんと扉が閉じられた。

広い馬車内。私、売られていくのだろうか。不安がさらに不安を呼ぶ。

不安を晴らすように、本に手を出した。



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