令嬢レベル1-2
次に目覚めた時、夢は夢のままだった。
私は美少女のままだったのだ。
目を開くとまた天蓋ベッドに寝かされていた。が、傍にはメイド服を着た女性がいた。
部屋の中を拭き掃除していたメイドさんは私を見ると嬉しそうに笑ってすぐに傍に来た。
「おはようございますお嬢様。熱は下がられたようですね」
介助されて身体を起こし、差し出されたコップの水を飲み。喉を潤すと濡れタオルで顔を拭かれる。
彼女は……アリーだ。
何故かするりとそんなことが分かる。
「ありがとうアリー」
素直に感謝を告げると、アリーは少し驚いてから嬉しそうに笑った。そして私の額に手を当てて、頷く。
「もう大丈夫ですね。奥様と旦那様が心配されてますのでお呼びしてきますね。お嬢様はそのままゆっくりしてらしてください」
「わかった」
柔らかな声で優しくそう言うと、アリーは部屋から出ていった。
奥様…母様で、リリエル・フランソワ。父様はダニエル・フランソワ。爵位は子爵で、うちは領土はないけれど商会や農園を抱えていてそこそこ裕福な家庭だ。
そんな情報がぱっぱと頭に浮かんで、映像と共に流れていく。
両親はさすが私の親だけあってとても綺麗だった。金の髪は父様、水色の瞳は母様譲りらしい。
どうやらリルチェルの知識は私でも問題なく思い出せるらしい。
ん?私って、なんだろう。
私はリルチェルじゃないか。
アリーにはああ言われたけれど、鏡台の前まで歩き自分の顔を見る。
何故か一瞬違和感を感じたけれどそれは当たり前の私の顔で。ただ、鏡に映る私には何故か不思議なステータスウィンドウが見えていた。
『リルチェル・フランソワ(5)』
『令嬢レベル1(愛人や後妻、駆け落ち婚の対象レベル)』
なんだろうと思いつつ、愛人と言う文字に強烈な嫌悪感を抱く。
と言うかこの文字は何語で、なぜ私に読めるんだろう。
不思議に思い鏡に手を伸ばすーーーーと。
名前のあるところを触ると、表示内容が変わった。
『リルチェル・フランソワ(5)』
『令嬢レベル1(愛人や後妻、駆け落ち婚の対象レベル)
家格レベル1(固定)
教養レベル1
知識レベル1
美容レベル2
令嬢レベル2必要条件
家格レベル1(固定)
教養レベル2
知識レベル2
美容レベル2
そうか。私は顔だけが現段階では良いのか。
さらに自分の表記である教養レベル1に触れると『食事マナーレベル1』や『姿勢レベル1』など色々な項目が出てきた。
試しに美容レベル2に触れてみると色々なレベル1に混ざって……『容姿レベル12』という物があった。なるほど、容姿が良いから美容レベルだけ2なのか。
ならば、教養や知識のレベルをあげて令嬢レベルを上げれば。
令嬢レベルの横の愛人と言った表記が変わるんじゃないだろうか。
今度こそ幸せな結婚をしたい。だからレベル上げを頑張ってみようかな。
…ん、今度こそってなんだろう。
そんな疑問は浮かんだけれど、直ぐにまた無意識の中へと消えていった。




