令嬢レベル2-7
ビシュー様のお母様=侯爵夫人!
今までで一番偉い人の登場で一瞬笑顔がひきつると、さっとビシューが私と夫人の間に立った。
「母上、リルチェルが緊張します」
「あら、リラックスしていいわよ……リルチェルちゃん、ねえ?随分と仲良くなったみたいね、ビシュー」
「はい。短い時間ですが友情を深めましたので」
守られているのはわかったけれどこの状態は失礼に当たるのでビシューの背中をとんとんと叩く。するとビシューが振り向いたので、笑って頷くと彼の隣に立った。
「ビシュー様はとても見識が広く、話しているだけで知識が広がる楽しい時間を過ごせました」
「へえ……」
ニコニコと笑っていて、何を考えているか読めないけれど私を見定める空気は感じた。けれどエイラー夫人と違って見下す感じはない。ただ、好奇心で気になると言った感じだ。
そしてビシュー様からは呼び捨てにしてって言ったよねという圧迫感を感じるが、親御さんの前で言えるわけが無いでしょうという圧迫感で返す。
言葉もなく語り合う私たちを見てさらに親御さんまた何かを考えたようだ。
「母上、リルチェルはロシャン語もスワベル語も勉強しているらしいですよ。スワベル語は僕なんかよりすごく上手くって、負けてられません」
「まあ!すごい勉強家なのね。家庭教師の先生はどなたなのかしら?」
「チェンダー・ロザリア先生です」
「ああ、知ってるわ。語学に長けた良い先生ね」
うんうん、と頷きながら笑って。ビシュー様も笑っているが、何を考えているのかさっぱり分からない。とりあえずニコニコと笑っておくけれど。
「良いお友達が出来たわねビシュー。でもそろそろ帰るからお別れを言いなさい?」
「……じゃあ母上、リルチェルをリルチェルの母上の所に連れていくまで一緒にいてもいいですか?」
「それくらいなら構わないわ。一緒に行きましょう?」
「はい。わざわざありがとうございます」
ビシュー様が差し出された手を取る。
するとビシュー様は楽しそうに私と手を繋いで歩き出した。頼もしい感じがして、兄が居たらこんな感じなのかなあと連れられるままに付いていく。
「本当に仲良くなったのねえ、ビシュー」
「ええ。リルチェルは大事な友です」
なっちゃいけなかったのかな。子爵令嬢ごときが。
内心でガクガクしているとすぐに先程のパーティ会場に着いた。
母様はエイラー夫人の近くにいて、エイラー子息も同じテーブルに座っていた。
そして全員が、私とビシュー様の繋がれた手をじっとみた。
「お母様、途中で退席をして申し訳ありません」
「僕が彼女のドレスを汚してしまったんです。フランソワ夫人、申し訳ありませんでした」
手を離して母様の傍に行きたかったのに。何故かビシュー様は手をぎゅっと力を込めて握って離してくれることはなかった。




