令嬢レベル2-1
ついに!ついに!念願の令嬢レベル2だ。鏡を見ようと思った瞬間。
『演技スキルレベル11に上がりました』
『スワトロ語(書き)がレベル13に上がりました』
『スワトロ語(発音)がレベル13に上がりました』
『美肌レベルが14に上がりました』
『容姿レベルが15に上がりました』
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狂うと思うほどすごい数のレベルアップアナウンスが鳴り響いた。
何も考えられず、頭も身体もガンガンと痛み。私はその場でふっと意識を失った。
今まで取得した全てのスキルのレベルアップ。その莫大な情報で、最後までアナウンスを聞けなかった私は気づかなかった。
『レベルボーナスとしてスキルポイントを5手に入れました』
そんな、聞いたことがないアナウンスが混ざっていることに。
ふと目を開くと白衣を着たおじさんが私を見ていた。
「お嬢様!目覚められましたか!?」
「…ここは…」
喋る声が、掠れた。コホンと咳をするとおじさんは水差しの水をコップに注いでくれた。其れを一口飲んでほっと一心地つける。
「お嬢様、どこか痛いところや違和感はございませんか?」
ぼんやりとした頭がクリアになると思い出した。彼はうちのかかりつけ医だ。
違和感。身体を軽く動かすも特に不調は無い。むしろとても身体が軽い。頭も冴え渡っている。
「不調は無さそうかと」
「そうですか。なら寝不足と過労ですかな。無茶はしちゃ行けませんよ」
「はい」
寝不足ってなんだと思った瞬間、刺繍が完成したことと令嬢レベルが上がったことを思い出す。同時に爆音の様なレベルアップを。
ああ、そういうことと納得しているとバンッと扉が乱暴に開けられた。
飛び込んできたのは泣きそうな顔の母様で。
母様はそのまま走ってきて私を強く強く抱きしめた。
「起きたのねリルチェル!とても、とても心配したのよ!」
母様のおむねで、あっししま……
パタパタと手を振ると、母様と一緒に入ってきたアリーが止めてくれて何とか助かった。
だが。
泣き濡れた目で、母様にギロッと睨まれる。怖くないけれどとても気まずい。
「聞いたわよリルチェル!毎日夜更かしして刺繍を刺していたそうじゃない!そんな無茶をしちゃダメよ!」
あー。そういうことになっちゃうのか。まあ真実は私の中だけだから仕方がないのだけれど、黙って大人しくそういうことにしておく。
「ごめんなさいお母様」
確かに無理をしたのも確かだし。謝れば母様はまた感極まったのか私を抱いて泣き出した。
母様が泣き出してオロオロする私を、アリーやお医者さんは優しく見守っていた。
その後父様にも怒られたけれど二人はハンカチをとても喜んでくれた。私の感謝の気持ちはきっと、伝わっただろう。
ゴタゴタが終わって夜。アリーが部屋を出ていってから夜明かりの中そっと鏡台の前に座る。
『リルチェル・フランソワ(8)』
『令嬢レベル2(愛人や一つ格上跡取り、それ以上上の三男レベル)』
………愛人の文字が消えてないぃぃぃい!!




