3話 準備、
目が覚めると見知らぬ一室に居た。どうやら椅子に括り付けられているらしい。身動きが取れない。すると奥から怒鳴り声が聞こえてきた。
「このバカ者!何回ミスを繰り返せば気が済む!最後まで気を抜くなと何回も言っただろうに!!」
「はっ!申し訳ありませんでしたっ!」
「まぁまぁ落ち着いてください〜。ほら、彼が起きましたよ宇津井司令〜」
ぼやけた目で見える人影は3人。さっき水を操っていた女性。小柄で小太りで偉そうなおじさん。それと椅子に座ったスーツ姿の女性だ。
「怖い思いをさせてすまなかったね。私は宇津井 和彦。ここで指揮官をさせてもらっている者だ。君には少し聞きたいことがあってここに連れてきたが安心してくれ。この記憶は君から抹消されるからトラウマなどは残らんぞ。」
『指揮官…?さっきからなんなんですか!わけもわからず連行されて、挙げ句の果てに記憶を無くす?意味がわからないですよ!』
そして気付く。
『あ!壱砂は!?あいつは無事なんですか!?』
「彼も大丈夫だ。君と隔離はしているが無事だよ。なんせ機密事項なものでね、記憶のことは許してくれ」
頭が追いつかない。まぁ記憶を消すのだから説明はしなくてもいいという事なんだろう。このおっさん壱砂は無事だと言ってるがやはり不安だ。
「それより君の名前は?一応身元を確認しなきゃならないからね」
『朝雲です。朝雲 玄真』
宇津井は少し顔を引きつらせて、強めに聞いてきた。
「朝雲…?もしかして君の父親は少し前に亡くなってたりするか?」
『…はい。2年前に事故で死んだと姉からは聞いていますが…?』
「もしかして君の父親の名は玄助、姉は聖かい?」
俺が頷くと宇津井は頭を抱え、そこにあった椅子に座り込んだ。
「事情が変わった。君には話しておかなくてはならないことがある。君の父親の事についてと、この組織についてだ。」
『あの、宇津井さん。話が急すぎて俺頭がパンクしそうです…。まずは壱砂に会わせていただけませんか…?』
「…あぁ、いいだろう。海崎君も踏まえた上で一から話をさせてくれ」