国民と私
ふふ、何とか抜け出して見せたわ。
さて、まずはどこに行こうかしら。
「あの・・・」
国民に話しかけられたとたん、私のプライドがチクッとした。
「そなた、無礼であるぞ。私にみだりに話しかけるな!」
名ばかりとは分かっていても、やはり王家としてのプライドは忘れない。
「す、すみません。」
国民は身長が低く、服もボロボロだった。
「ところであなたはどのような身分で?」
「ふっ。次期女王継承者・・・」
「女王様!?申し訳ございません。もてなすほどの身分ではないゆえ・・・」
「最後まで聞け!次期女王継承者になりそこねた者だ。」
「そ、そうでございましたか。ところで、そのように高い身分の方がなぜこのような汚い町へ?」
「豊かにするために来た。畑はどこだ?」
「畑など、燃えました。」
「そうか。ならば、種はどこで手に入れた?」
「豊国の島です。」
「ああ、あのうすきみわるい島か。名に合わぬな。本日からあの島は絶望の島と呼べ。」
「はい。」
「まあ、私が取りに行ってやる。何の種が欲しい?」
「大豆の種をたくさん欲しいです。お願いします。」
まあ、大豆は様々な物に加工できるからね。それに、栄養もあるし。
「待ってろ。それと、お前の名は?」
「バツマイです。」
私は泳いで豊国の島改め絶望の島へ向かった。