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汚された箱庭  作者: 瀬川弘毅
2 猛虎の雄叫び
9/34

9 休息

 討伐隊とて、一年中山籠もりをしているわけではない。集団生活を送る上では、大量の食料や日用品が必要となる。定期的に下山し、物資を調達していた。

 大勢で動けば人目につくため、班ごとに分かれて車で移動する。車といっても戦闘時に使うトレーラーではなく普通の自家用車で、また目的地も班ごとにばらつかせてある。


 第十八班も、岸田の運転で街へ向かっていた。迷彩柄の戦闘服ではなく久々に私服を着ているせいか、車内にはどことなく解放感が漂っていた。

 田畑ばかりが広がる麓から、高速道路を利用して一気に市街地へ車を走らせる。別に田舎町のスーパーでも良いのでは、と思うかもしれないが、やはり人を隠すには人の中だ。それに、過疎地域の狭いコミュニティ内では噂が伝わるのが早い。見慣れない客がいわゆる「爆買い」をしていったとなれば、怪しまれるのは必然である。


 やがてハイウェイ沿いに高層ビルが立ち並ぶようになってくると、後部座席に座っていた森川は、窓から身を乗り出すようにしてそれを見つめた。目がきらきらと輝いていて、黒のチュニックが小悪魔のような印象を与える。

「綾音ちゃん、楽しそうだね」

 隣で、井上がにこにこして言う。今日の彼女は、白を基調とした清楚なコーディネートだった。

「うん。うち、こっちに来てから観光らしいこと全然できてへんから。気分転換にちょうどええかなって」


 横で二人の会話を聞きながら、蓮は少し感心していた。森川が関西から上京したのは、あくまで討伐隊に入るためらしい。自分が彼女の立場なら、名所の一つや二つくらい見て回りたくなりそうなものだ。ストイックなんだな、と思う。

「あまり浮かれすぎるな」

 助手席から後ろを振り返った佐伯が、呆れたように言う。

「俺たちの目的は物資の調達だ。遊びに来たわけじゃない」


「まあまあ、少しくらいはいいじゃねえか」

 視線を前方に向けたまま、そこに岸田が割って入った。アロハシャツが妙に似合っている。岸田がハンドルを操作し、車は高速道路出口へと向かった。どうやら目的地は近いらしい。

「買い物リストを渡されてはいるし予算に上限も設定されてるが、その範囲内なら何をしてもおとがめはない。品物の値段をちょっと高めに報告しとけばいいんだよ」

 五人には事前にプリペイドカードが一枚ずつ渡されており、それにチャージされている金額で上手くやりくりしなければならない。夕方には買い出しを終えてキャンプ地に戻る予定で、チャージされた額には昼食代も含まれている。使い道をある程度自分で決められるのは事実だった。


「実を言うと、俺も少し行きたい店があってな」

「班長まで……」

 もう何を言っても無駄だと観念したのか、佐伯は口をつぐんだ。間もなく車がコインパーキングに停められ、第十八班は行動を開始した。


 ヒートアイランド現象というやつだろうか。やけに辺りが暑く感じて、蓮は羽織っていた革ジャンを脱いだ。 

 先刻行われた役割分担で、蓮と佐伯は食料品を買いに行くことになっている。前を歩く佐伯に追いつくと、彼は渡された買い物リストを睨んでいるところだった。薄手のTシャツを着ている効果か、引き締まった体のラインがよく分かる。

「何だよ、難しい顔をして」

「実はな、和泉」

 柄にもなく困った表情をしてみせて、佐伯はぶっきらぼうに言った。

「俺はこういう類のことを全くしたことがない。つまり、コツのようなものが分からない」

「……お使いに行ったことは?」

「全然ない」

 真顔で即答されて、蓮は面食らった。彼自身、父親の方針で勉強ばかりさせられて育ったが、幼い頃はよく母に連れられて食料品店に買い物に行ったものだ。近所のスーパーの売り場は熟知していたという自信がある。


「一体、どういう生活を送ってきたんだよ」

「悪かったな、両親が無精者で。俺の母はほとんど料理をせず、外食が多かった。父も似たようなものだ」

 過去形を使っているのは、父母をスパイダーに殺されているからだろう。まずい話題に触れてしまった気がして、蓮は話を逸らすことにした。

「分かった、買い物は俺がやる。佐伯はカートを押すのを手伝ってくれればいい」

「そこまで馬鹿にされるのも心外なんだが」

 鼻を鳴らして吐き捨てた佐伯に、蓮はやれやれと首を振った。

「あーもう、面倒くさいな……」

 ああだこうだと言い合いながら、二人は目的の大型スーパーを目指した。


 一方、森川と井上は生活用品を担当していた。ドラッグストアに入り、リストに記載された商品を探して買い物かごにぽんぽん投げ入れていく。

「綾音ちゃん、すごいね。手際いいな」

「えへへー、まあね」

 素直に感嘆する井上に、森川は悪戯っぽく笑いかけた。

「だって、早めに終わらせて別のことしたいやん?」

 下心を隠そうともしない彼女に、井上の尊敬の念は崩れたかに見えた。驚いたように目を瞬かせ、やがて微笑む。

「……うん!」

 しかし、共犯関係はあっさりと成立した。

 二人は猛スピードで店から店へ渡り歩き、正午には買い物のほとんどを完了していた。


「レシートのお返しになります。ありがとうございます」

 レジの女性からプリペイドカードと領収書を受け取り、蓮はカートを押して歩いた。明細を見ると、残額はだいぶ少なくなっていた。のちに上に報告する際に必要となるので、カード入れの中に領収書を大切にしまい込む。

 無事に買い物は終えたが、今からレジ袋に品物を全て詰めなければならない。台の上にかごを置き、数枚の袋をその脇に置く。


 佐伯には、レジを抜けた先で待っていてもらう予定だった。通路がやや狭く、二人で通ると他の買い物客の邪魔になるかもしれないと判断したからだった。

 だが、彼の姿は見当たらない。

(トイレにでも行ってるんだろう)

 そう考え、蓮は佐伯を待たずに袋詰めを始めた。これでスーパー巡りも三件目である。ずっと歩きどおしだったことを考えると、別に不自然なタイミングではなかった。


 けれども、十分待ってみても佐伯は現れない。気になって御手洗いを覗いてみたが、やはり彼はいなかった。

(あいつ、どこに行きやがったんだ。知らない街で迷子になるなんて、笑い事じゃ済まないぞ)

 すぐにでも周辺を捜索したいのはやまやまだったが、買った食料品を置いていくわけにもいかない。蓮は一旦コインパーキングに戻ると、缶詰やレトルト食品でいっぱいのビニール袋をトランクに押し込んだ。一人でこれだけの量を運ぶのは、なかなかの重労働だった。


 荷物を車に積んで身軽になると、蓮はポケットから小型の無線機を取り出した。緊急時の連絡用にと、岸田から班員に渡されていたものだ。

 佐伯を探しに行って、自分も道に迷うようなことになっては本末転倒、ミイラ取りがミイラになるとはまさにこのことである。事前に班員たちに連絡しておくのは最善だと判断し、蓮はまず岸田に連絡してみた。

「もしもし、班長ですか?大変なんです、佐伯が」


『ん?何だってえ?』

 声の調子から察するに、明らかに酒に酔っている。こんな真昼間から飲んでるのか、と蓮は呆れてしまった。買い物のノルマの方は大丈夫なのだろうか。

『達郎さん、お電話? ひょっとして仕事先の方かしら』

 何やら女の人の声も聞こえる。バーだかキャバクラだか知らないが、岸田のいる店は割といかがわしい部類に入るのかもしれない。

『大したことねえよ、野暮用だ野暮用』


 いまいち呂律が回っていない岸田がそう言い、直後に鈍い衝撃音がした。まさかとは思うが、無線をその辺に放り投げたのではあるまいか。

『仕事が何だ、あんなものクソったれだ。そんなことより楽しもうぜ。姉ちゃん、もう一杯ついでくれよ』

 先程の女性が嬉しそうに答えるのが聞こえた時点で、蓮は通話を終了していた。酒に酔った班長を頼るのは無理だということは、分かり切っていた。

 ため息をつき、今度は森川の無線に連絡を入れることにする。


「やったー、九十三点!」

「さすが綾音ちゃん!」

 同時刻、カラオケボックスの一室で彼女たちは大いに楽しんでいた。

 買い物を終えた後、二人は考えた。車のトランクに荷物を置きに行けば、自分たちが早めに用を済ませて遊んでいたことが班員たちに分かってしまう。ゆえにコインロッカーに品物を預け、両手の空いた状態で悠々と街に繰り出したのだった。


 残額は限られていたが、贅沢しすぎなければ十分すぎるくらいの額だった。ファッションビルで流行の服を買ってみたり、最近SNSで人気が広がっているらしい有名スイーツを食べに行ったり。これまで東京都心部にほとんど来たことがないという森川は、見るもの全てに目を丸くし、心から小旅行を満喫しているようだった。楽しそうにしている彼女を見て、井上も幸せだった。

 歩き回って少し疲れたので、休憩がてら最後の締めにカラオケに行こうということになった。森川は握ったマイクをなかなか離さず、トレンドの曲をノリノリで歌っている。


「綾音ちゃん、何か鳴ってるよ?」

「え? あ、本当や」

 森川は一瞬怪訝そうな表情を浮かべた後、スカートのポケットに忍ばせていた無線機を取り出した。一旦マイクをテーブルに置き、ソファに腰を下ろす。

「もしもし?」


『森川か?俺だ、和泉だ。実は今、ちょっと面倒なことになってて―』

 ちょうどそのとき、次に歌おうと予約していた曲の前奏が流れ始めた。出だしから大音量で音楽が響き、無線機の向こうで蓮は片耳を押さえた。

「ごめん、周りがうるさくて聞こえんかった……渚ちゃん、一旦曲止めてくれん?」

 うん、と頷いて井上が機器を操作し、演奏が中止された。それを横目で見つつ、森川は無線機に囁いた。

「蓮君、もう大丈夫よ」


『そ、そうか。ええと、佐伯が―』

 リリリリリ、とタイミング悪く鳴った電話の音が蓮の声をかき消してしまった。森川は無線を下に置き、部屋の壁に備え付けられた受話器をとった。

「あー、分かりました。あと十分で終了ですね。はい、はい……」

 電話はまだ続いている。誰かが無線機を拾い上げる音がして、蓮はほっとした。恐らく井上だろう。

「和泉君、私だけど。……あっ、ごめんなさい」


 きょとんとした様子で言った直後、再び何かの曲の前奏が流れ始める。複数の曲を予約してあって。全部を取り消していなかったのだろう。蓮は非常にやきもきした。

 さすがに耐えかねて、通話を終了する。騒音に囲まれている彼女たちと、今の状況でまともな会話をするのは無理だ。追々連絡を入れるしかないだろう。

(そもそも、あいつらは何で今カラオケにいるんだよ。……まあ、そうなっちゃったものは仕方がないか)

無線をポケットに押し込み、蓮は覚悟を決めた。


(班長は酔っぱらってるし、森川と井上もあてにならない。こうなったら、俺一人ででも佐伯を探し出してやる)

 最後に寄ったスーパーから、まだそんなに遠くには行っていないだろう。まずはその周囲を探すのが先決だ。友の行方を追うべく、蓮はトランクを閉めると勢いよく走り出した。


 街中を駆け回り、もう無理かと諦めかけたそのとき、視界の隅に見慣れた顔が映った。反対側の歩道を歩いていて、こちらには気づいていない様子だ。

 蓮は一瞬迷った。森川たちに連絡するべきか、それともこのまま後を追うべきか。

 足早に道を急ぐ佐伯を見やり、蓮の心は決まった。ここで見失っては元も子もない。もう少し後をつけるべきだと判断し、蓮は横断歩道の信号が青になるやいなや走り出した。通りの反対側に辿り着いてすぐに左に方向転換し、足を緩めない。


 しかし、討伐隊の訓練で足腰を鍛えているのは向こうも同じだ。追跡に気づいた素振りすら見せないものの、他の通行人より明らかに速いペースで歩き続けている。蓮も全力で追いかけているのだが、人通りが多くてなかなか前に進めない。おまけにキャッチセールスの類に捕まりそうにもなり、苦労は絶えなかった。二人はほぼ一定の距離を保ちながら、人混みを縫うようにして街を巡るかたちになった。


 青いシャツを着た背中を必死に追いながら、蓮は何故佐伯が独断行動を取っているのかについて考えてみた。

 確かにあのスーパーは店内が広かったが、だからといって迷子になるほどではあるまい。おそらく、彼は意図的に抜け出したのだろう。

 彼の性格からして、単に規則に反発して遊び歩こうというわけではなさそうだ。第一、それなら自分を誘ってくれても良かったはずだ。買い物を途中で放り出して行く必要もない。

 自分の目を盗んで行方をくらましたという点から、行き先を皆に知られたくなかったことは容易に想像できる。では、佐伯は一体どこへ向かおうとしているのか。


 今思うと出発の前日、彼はやけに熱心にこの地域の地図を読み込んでいた気がする。岸田から配られていたものだったが、大体の行き先は彼自身が指示するのでさほど目を通す必要はない、と言われていた。それをあえて熟読していたのは、やはり本来の目的地以外で立ち寄りたい場所があったからに違いない。

走る速度を落とさずに、蓮は懐から地図を取り出した。ざっと眺めてみても、佐伯がどこを目指しているのかいまいち分からない。角を曲がった後ろ姿を追いかける。


 ふと、思い当たることがあった。この先を真っ直ぐ進むと、比較的広い敷地をもつ霊園に行きつくらしい。もしかすると、亡くなった佐伯の両親がそこに眠っているのではないか。佐伯は誰にも話さず、一人でその供養をしに来たのではないだろうか。

 けれども、スパイダーに捕食された人間の遺体が残っていることは珍しいとも聞く。たとえ残っていても手や足といった「食べ残し」が主で、そこから殺された人物を特定するのは難しいらしい。きちんと埋葬されるケースはレアだ。佐伯の父母がその例外に当てはまるのかは、少し怪しい。


 はたして佐伯は通りを直進せず、再び右折した。後を追って十字路を曲がった蓮は、刹那足を止めてしまった。

 そびえていたのは、無個性な外観をそなえた十数階建てのビルであった。白一色に塗られた壁に窓は少なく、どことなく息苦しい雰囲気が漂っている。周囲を高い塀で囲まれていることも、閉鎖的な印象を強めた。

 真っ白な外壁の上部に一箇所だけ、ロゴのようなものがあしらわれている。剣と盾を交差させたようなマークは、まさしく政府軍のものだった。佐伯は、迷いのない足取りでその門をくぐろうとする。


(どういうことだ。何であいつが、軍の施設へ向かっている⁉)

 混乱の中に置き去りにされ、蓮は理解に苦しんでいた。政府からすれば、自分たち討伐隊は国家の方針に反発する逆賊だ。捕らえられれば処罰を受けるのは避けられないし、尋問されて仲間の居場所を吐かされることになるかもしれない。どうしてそんな自殺めいた行為に及ばなければならないのだ。

 とにかく、彼を止めなければならない。佐伯の思惑が何であれ、話はそれからだ。蓮は我に返ったように走り出し、一気に距離を縮めた。佐伯は警備の者らしい男と話をしていて、まだ塀の内側に入れていなかったのだ。

 やがて二人は会話をやめ、佐伯は軍の関係者らしき二人組に連れられて中に入っていった。一体どうやって彼らを丸め込んだのか知らないが、二人は割と友好的な態度で接しているように見えた。


 門をくぐろうとした蓮を、先ほどの門番の男が呼び止めた。

「おい、待て」

「悪い。急ぎの用事なんだ」

 横をすり抜けるようにして、蓮が先へ進もうとする。

「待てと言っているだろう」

 しかし、尋常ではない力で肩を掴まれ、立ち止まることを余儀なくされる。握り潰さんばかりの強い力に、蓮は驚いた。観念して男の方へ向き直り、思わずあっと声を上げそうになる。


「あんた、確か特殊部隊の」

「ほう。ガキにしては記憶力が良いじゃないか」

 がっちりとした肉体を誇る男が、にやりと笑う。ベージュの軍服に同色の帽子を被っていたため分からなかったが、蓮は前に一度その男と対面したことがあった。

 はっとして、佐伯の両脇を固める男たちにも視線を向ける。軍服を纏っているけれども、忘れるはずのない顔ぶれだった。左の眼鏡をかけた男が政府軍の松木、右のピアスをした金髪の男が藤宮だ。


「特殊部隊隊長の澤田剛だ。こんなところでターゲットに巡り合えるとは、実に都合がいい」

 澤田は肩から手を離すと上着を脱ぎ捨て、ゴキゴキと首を鳴らした。さしずめ、戦闘の前の準備運動といったところか。

「そこを通してくれ。俺はあいつを……仲間を連れ戻さなきゃならない」

「それは無理な相談だ。彼は俺たちの軍門に下ったのだから」

 蓮の目を真っ直ぐに見返し、澤田はかぶりを振った。


「そうか。なら、力ずくで通してもらうしかないな」

 身構えた蓮を、しかし澤田は手で軽く制した。

「何か勘違いしているようだが、彼が我々の側についたのは彼自身の意志によるものだ。別に、俺が彼をそそのかしたわけじゃあない」

「何⁉ ……じゃあ、どうして」

 それではまるで、佐伯は討伐隊を裏切ったも同然ではないか。スパイダーを狩るのが彼の達成すべき目標だったのではないのか。スパイダーを守ろうとしている軍に味方するなど、何を血迷ったのか。動揺を隠せない蓮に、澤田が人の悪い笑みを浮かべる。


「さあ、どうしてだろうな。ともかく、彼には今後我々と共に行動してもらう。討伐隊でレベルの高い訓練を受けてきた彼なら、即戦力になるだろう。水を差すような真似はやめてもらおうか」

「何が何だか分からないけど……そんなこと、絶対にさせない!」

 瞳に闘志をみなぎらせ、蓮は言い放った。同時に、全身に溢れんばかりの力が満ちる。これまでにも二回ほど味わった感覚だ。 

 強化された脚力を最大限に発揮し、蓮が塀を軽々と跳び越える。向こう側に着地した蓮の隣に、同様にして素早く中に踏み込んだ澤田が立ちはだかる。行く手を遮るようにして立つ彼と間合いを計り、蓮は数歩横に動いた。


 対峙した両者は戦いを決意し、ほとんど同時にコマンドを唱えていた。

「―『能力解放』!」

 吹き荒れる二つの衝撃波が、ビルの前に植えられた木々を揺さぶる。

 膨張した筋肉が茶色の体毛に包まれた、熊の特徴をそなえた獣人。金色のたてがみと発達した肉体を誇る、獅子に似た姿の戦士。

 鋭利な爪をもつ両腕を胸の前で構え、雄叫びを上げる。次の瞬間、二人は激突していた。



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