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第五話 襲撃!

 ツーがマナの家にやって来てはや四日、最初の頃はほとんど会話の無かった二人であったが――――


 「ただいま~!」


 学校が終わり、家へと帰って来たマナ。 

 すると、玄関に小走りでツーがやって来た。


 「おかえり、マナ」

 「うん、ただいまツーちゃん」


 最初の頃は話しかけても適当な相槌しかしなかったツーであったが、今ではツーの方から声を掛けて来てくれるようになるまで進歩していた。

 靴を脱いで居間の方へと歩いて行く二人。母親のマミは今は仕事中、警察という事もあり帰りが遅くなることも珍しくも無い。そして父親は現在出張中で不在の為、今この家にはマナとツーの二人だけである。

 ツーを一人残しておくのは不安であったが、マミは仕事の合間、家に電話を架けて彼女の心配をしていた。マナが帰って来る時間帯からは娘を信じてマミも電話を架けてはいない。


 「ごはん・・・冷蔵庫にあるから時間になったら食べてだって・・・」

 「まだ時間あるね・・・少し部屋で何かして時間潰そう!」


 マナはツーの手を握って部屋へと駆け足で向かう。

 ツーは引っ張られながらも彼女の手を握り返して付いて行った。




 部屋ではマナは学校であった一日の出来事を話していた。

 ツーはその話を黙って聞いていた。しかし、その顔は少し興味が湧いている様にも見える。

 年頃の少女たちが楽しそうな時間を過ごしていた頃、家の前に訪問客が来ていた。




 「ここか・・・」


 一人の男がマナの家の玄関前に立っていた。

 男はインターホンに指を当て、ボタンを押した。






 E地区の魔法警察署、そこではマミはツーについての情報を集めていた。今日一日の仕事は終わり、少し帰りを遅らせ彼女のことを調べているのだ。

 すると、彼女の携帯がマミのポケットで振動して、連絡が来た事を知らせて来た。

 

 「あら・・・彼女からね」


 電話の相手は、以前ツーを保護したその日に相談し、連絡を取っていたJ地区からやって来た刑事であった。彼女はツーと同じ地区内に住んでいたという事で何か情報が得られないかと相談していたのだ。


 「もしもし・・・本当?」


 電話の相手はどうやら彼女についての一つの情報を得た様だ。


 「・・・・・何ですって!?」


 電話相手から得られた情報は予想外のものであり、マミは他の同僚達の人目もはばからずに大きな声で驚きを表す。周囲の者達は突然大きな声を出したマミに怪訝な顔をするが、そんな事など今のマミには些末な事であった。

 

 「そう・・・分かったわ、有難う星川さん!」


 マミは情報提供者に感謝を示すと、電話を切り、すぐに家へと電話を架ける。

 しかし、返事は返ってこなかった。この時、彼女達は外にいた。


 ある者から逃げる為・・・・・・。


 「くっ!」

 

 マミはすぐさま家へと向かう。


 「(彼女の言っていた情報が確かな物だとすれば、ツーちゃんとマナの二人だけにしておくのは危険すぎるわ!)」


 自分はなんて軽薄な考えをしていたのだろう。

 虐待の類を受けていたなどと・・・・・・。


 「急がないと・・・!」






 ――ピンポーンッ――


 マミから電話が架かるその少し前、一人の男がマナの家のインターホンを押していた。


 「?・・・・誰か来た」


 家の中に響き渡るチャイムの音に反応するマナ。

 部屋を出て誰が来たのかモニターで確かめようとするマナであったが・・・・・・。


 「えっ」

 「だめ・・・」


 ツーは部屋を出ようとするマナの手を掴んで引き留める。

 ツーのそんな行動を不思議そうに思うマナであったが、一つの可能性が思い浮かぶ。それは、母親から聞いていた可能性の話、ツーが虐待を受けていたかもしれないというもの。もしかしたら彼女は自分を苛めていた親が連れ戻しに来たのかと勘違いしているのかもしれない。いや、勘違いとは限らないだろう。もしかしたらツーの関係者が来ているのかもしれない。


 「(どうしよう・・・)」


 今の状況に困り果てるマナ。

 

 だが・・・違う、ツーが彼女を引き留めている理由はもっと重要な物であった。


 「行っちゃだめ・・・・・外に出たら――――」


 ツーはマナの手を握りながら、彼女へと警告する。


 「殺されちゃう」

 「え・・・?」


 次の瞬間――――



 ――どかぁぁぁぁぁんッ!!――

 「!?」


 突然玄関の方面から何かが破壊されたような音が響き渡った。

 予想外の出来事に驚き、固まってしまうマナ。そんな彼女の腕をツーは引いて窓の外へと誘導する。


 「ここから逃げる・・・早く!」

 「えっ?な、何!?」


 まるで状況がつかめないマナの手をいつもとは逆に今度はツーが掴んで、外に逃げようとする。

 二人は窓から外に出る。幸いなことにマナの部屋は一階にあり、窓から外に出る事も出来た。

 外に出ると、ツーはマナの腕を引いて家から離れる。マナは整理が追い付かない頭でツーについて行く。




 「ちっ・・・居ないか」

 

 その頃、一人の白衣の男がマナの家の扉を破壊し、家の中へと侵入し、ある少女を探していた。

 土足で家を荒らし、血眼になり目的の少女を探す男であったが、目的の人物は見当たらない。


 「糞がッ!!〝ナンバー2〟、どこだ!!」


 白衣の男は苛立ちながら家の中を探すが、どこにも彼女が居ないことを確認すると、破壊した玄関から外へと出た。

 すると、近所の人間たちが何人かこちらを見ている。


 「ちっ!」


 男は舌打ちをするとその場から急いで離れた。




 その頃、マナとツーは少し歩いた場所にある公園、〝安らぎ公園〟へとやって来た。

 二人共ここまで裸足で走って来たため、マナは足の裏を押さえながら痛む足をかばっていた。


 「いっっ・・ねえツーちゃん、一体どうゆう事!?」

 「・・・・・」


 マナは今の状況の説明を求めるが、ツーは何も答えてくれない。

 ツーはマナに頭を下げて謝罪とお礼を言った。


 「ごめんなさい、私のせいで巻き込んで。そして・・・ありがとう。ほんの少しの間だったけど楽しい生活だった」

 「え・・・」


 ツーはそう言って体内にある力、魔力を解放する。


 ――ボシュウゥゥッ――

 「わっ!?」


 ツーから解放された魔力に驚くマナ。

 そんなマナを置いてツーは肉体を強化し、マナの前から離れて行った。


 「あっ、ツーちゃん!!どこに行くの!?」


 後ろから聴こえてくるマナの声を無視して、ツーは自分を追う男の元へと走る。

 もう、マナをこれ以上巻き込まない為に・・・・・・。




 ツーは魔力を解放し、公園から少し離れた空き地へとやって来た。

 しばらくの間その場で佇んでいると、その場に新たな訪問者がやって来た。


 「探したぞ!〝ナンバー2〟・・・ッ!!」

 「・・・・・・」


 男ゆっくりとした足取りでツーへと近づき、そして・・・・・。


 ――バシィッ!!――

 「あうっ!?」


 おもいっきり平手打ちを浴びせた。

 その衝撃で倒れてしまうツー。そんな彼女の胸倉を掴んで男は彼女の体を無理やり引き起こした。


 「お前!よくもまぁこの俺から逃げてくれたものだな!お前が居なくなったため、やって来たJ地区の警察の犬共に研究所は壊滅!お前が逃げずにあそこに居ればあんな連中なんて簡単に片づけられたものを!!!」

 「うぐぅ・・・!?」

 「・・・ちっ、まあいいさ」


 男はツーの胸倉から手を離して彼女を地面へと落とす。

 今まで怒りの形相を浮かべていた男であったが、その顔には突然笑みが浮かぶ。しかし、その微笑みはとても醜いものであった。

 

 「お前さえいればまた稼げる。ほら、とりあえずここから離れるぞ」


 そう言ってツーの手を引く男。

 しかし、ツーはその場から動こうとはしない。


 「おい、どうした」

 

 その場から動こうとしないツーに怪訝な顔を向ける男。

 ツーは俯きながら、弱弱しい声で男に訴ったえた。


 「いや・・・」

 「あっ?」

 「もう・・・誰も殺したくない。もう・・・いや」


 ツーは弱々しくも男について行く事を拒絶する。

 そんな彼女の態度に男の額にビキリと血管が浮かぶ。


 「何言ってんだ・・・お前」

 「ごめんなさい、でも・・・もう嫌なの。これ以上誰かを苦しめて生きていくなんて・・・・・だから、お願い。もう私を解放して・・・」

 「出来るわけねぇだろう!?」

 ――ばちぃッ!――

 「あう!?」


 男はツーの頬に平手打ちを叩き込む。

 しかし、ツーはめげずに懸命に彼へと訴える。


 「お願いします、お願いします・・・」

 「テメェッ!!!」


 ついに堪忍袋の緒が切れた男は手の形を平手打ちのパーから握りこぶしのグーへと変えた。

 そしてそれを振り下ろそうとした時――――


 「やめてぇッ!!」

 「!?」


 一人の少女の声が空地へと響く。

 そこに現れたのは先程公園で別れた少女、睡無マナであった。



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