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第三話 街案内

 睡無家で過ごす事となったツーという少女。

 そんな彼女は今――――


 ――チャプチャプッ――

 「温かい・・・・・」


 水の跳ねる音が響き渡る。

 現在彼女は汚れている体を綺麗にするため、マミに勧められ入浴をしていた。

 温かなお湯が彼女の体温だけでなく心も温めてくれた。お湯の中へと潜り、その温もりを堪能するツー。

 そこへふろ場の外からマナの声が聴こえて来る。


 「ツーちゃん、ここにタオルと、それから着替えを置いておくね」

 

 マナがそう言って風呂場の外に設置されている洗面台の近くへとおいて置く。

 そして風呂場から退散するマナ。彼女は居間の方へと戻り、一息つく。


 「しばらくの間、一緒に居るんだから仲良くしないと・・・」


 マナはこれから同じ屋根の下で過ごす風呂場に居る少女の事を考える。

 しかし何故彼女はJ地区からこのE地区まで一人で・・・まさか本当にお母さんの言う通り虐待を受けて・・・・。

 すると、部屋の扉が開き振り返るとそこには――――


 「・・・さっぱりした。お風呂有難う」

 「わあああああっ!だめだよそんな格好で来たら!?」


 部屋に戻って来たツーはなんと自分の出会い頭と同様、全裸の状態で部屋へとやって来たのだ。

 いくら同性とはいえ目の前で裸で来られれば動揺もする。


 「どうして服を着ていないの!?」

 「・・・私の服じゃないから・・・着ていいか分からなかったから」


 実はマナが服を置いておくように言っていた時、彼女はお湯の中へと潜っていた為、マナの言葉がよく聴こえなかったのだ。そのため洗面所に置いてあった服が自分が着ていいのかどうかで悩み、悩んだ末に何も身に着けずにやって来たのだ。

 予想外の事態にテンパるマナ。顔を真っ赤にしてあわあわとうろたえる彼女に助け船が入った。


 「あらあら、そんな格好じゃ風邪をひくわ」


 そう言ってマミはツーを着替えが置いてある風呂場まで連れて行った。

 まさか一日に二度も同じ人間の裸を見る事になるとは思わなかった為、マナの頭はショートしたかのように煙を上げていた。


 「うぅ~~、うまくやっていけるかな?」


 予想外過ぎる行動を取るツーに早くも先行きが不安となったマナであった。






 その夜、ツーはマナの部屋でその部屋の主であるマナと共に就寝する事となった。

 マナとツーは色合いは違うが同じ模様のパジャマを着ており、マナが布団の上に上がりツーをベッドへと誘う。


 「ツーちゃん、一緒に寝よ」

 「・・・いい、私はここで寝る」

 

 ツーは床に猫の様に丸まり、そのまま眠りにつこうとする。

 そんな彼女にマナは彼女の体を軽く揺すり、床上で眠るのを阻止する。


 「だめだよそんな所でねちゃ・・・体痛くなるよ」


 そう言ってツーを立ち上がらせベッドの上へと誘導するマナ。

 ツーは特に抵抗もせずおとなしくベッドに上がってくれた。そして二人は並んで布団の中へと入って行く。

 

 「温かいね、ツーちゃん」

 「・・・・・・」


 マナの言葉に特に返事を返さずツーはすぐに眠りについてしまう。

 隣の少女の小さな寝息がマナの耳に聴こえる。それに釣られてマナにも睡魔が襲ってきた。瞼が少しずつ重たくなっていき、ついに瞳を閉じたマナ。意識が薄れているまどろみの中、彼女は明日、この町のことを案内してあげようと考えていた。

 明日の土曜日、学校は休みであるこの日、この町の事を教えて親睦を深めようと計画するマナ。


 そして・・・マナはそのまま眠りについた・・・・・・。






 そして翌日、朝日の光が窓の外から差し込み、マナの意識を刺激して彼女のことを目覚めさせた。

 布団から顔を出し、可愛らしい欠伸を一つするマナ。そしてその後、隣へと視線を傾けた。そこには未だ目覚めておらず、寝息を立てているツーの姿が在った。

 彼女はどうやら未だに夢の世界の中に居る様だ。そして、彼女は眠りながらマナの手を握っていた。


 「ふふ・・・」


 そんな彼女に思わず嬉しそうな顔をするマナ。

 もしかしたら少しは信頼してくれているのかも・・・。そんな事を考えながらマナはツーのことを起こそうと声を掛ける。

 そして、夢の世界から現実へと帰還したツー。彼女はまだ完全に眠気が覚めた訳ではなく、ぐしぐしと眠たげな表情で目元をこする。


 「おはよう、ツーちゃん」

 「・・・・・・」


 マナは挨拶をするが、ツーは小さく頷くだけであった。

 どうやらまだ完全には心を開いてはくれないようだ。


 「(今日は頑張らないと!)」


 今日一日の街案内で親睦を深めようと意気込むマナ。

 そこへマミがノックをして部屋へと入って来た。


 「おはよう二人共、朝食が出来てるから着替えてから来なさい」

 「はーい」

 「・・・はい」


 二人は頷くと着替え始め、朝食の用意してある居間の方へと足を運んだ。




 昼食を取り終わった三人、マミは食べ終わった食器を洗っている。

 そしてマナはツーに話しかけている。


 「ねえツーちゃん、今日は私、学校が休みだからこの町を案内してあげるよ」

 「そうね・・・ツーちゃんもこの町の事をよく知っておいた方がいいからね」


 マナの提案に洗い終わった食器を拭きながらマミも賛成の意を示す。

 こうして、今日一日の日程が決まったマナとツー。二人は食後に少し家の中でくつろぐと外へと繰り出した。

 

 「あの子もこれで少しは笑う様になってくれればいいんだけど・・・」


 家を出て行った二人を見送りながらマミはそう願ったのだった。

 同じ年頃の娘を持っている一児の母としてはやはり心配に思ってしまうものだ。






 外へと繰り出したマナとツー。二人は家の近くの街まで繰り出していた。

 ツーは外の光景に興味があるのかキョロキョロと歩を進めながら街の様子を見物している。そんなツーを見てマナは外に繰り出して良かったと思った。

 すると、鼻をくすぐるおいしそうな臭いが二人の元へと漂ってきた。視線を向けると路上屋台でたい焼きを売っているようだ。マナはツーの手を引いてたい焼き屋を目指しながら笑って言った。


 「ツーちゃん、たい焼きだよ!買ってあげるから一緒に食べよ!!」

 「・・・・・・」


 ツーはマナに手を引かれ、たい焼き屋まで小走りで移動した。




 近くのベンチに座りたい焼きを食べるマナとツー。

 マナはおいしそうにかぶりつくが、隣ではツーが不思議そうな顔でたい焼きを眺めていた。


 「?・・・どうしたのツーちゃん」

 

 一向にたい焼きに手を付けようとしないツーにマナはどうしたのかと思う。

 ツーはたい焼きを眺めながらマナに聞いた。

 

 「不思議・・・魚の形をしている。どうして?」

 「え・・・どうして?・・・えっと、たい焼きだから?」


 うまい答えが見つからずよく解らない答えを出すマナ。

 ツーはしばらく眺めると小さな口でたい焼きにかぶりつく。中から甘い餡子の甘味がツーの舌に広がり、彼女の目が輝く。

 たい焼きなど見たことすらなかった彼女は多少警戒もしたが、その予想以上のおいしさにそのまま勢いよく食べてしまった。


 「あっ、口に餡子付いてるよ」


 マナはポケットからティッシュを取り出し、ツーの口を綺麗にする。

 

 「・・・有難う」

 「うん、いーよ」


 大分自分にも慣れてくれたのかなと思うマナ。

 すると、そこへ一人の男性、見た感じ高校生くらいの人物が声を掛けて来た。


 「マナじゃないか、奇遇だな」

 「あっ、マサトおにいちゃん!」


 声を掛けて来た人物はマナのよく知る人物、アタラシス学園という魔法を学ぶ学園に所属している津田マサトという人物であった。



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