大蚯蚓の夢
唯ゆっくりと呼吸をするように
愛を込めて吐き出しました
じめじめとした、歩き心地の悪い道だった。
湿った石畳に苔がカーペットみたいに這っていたが、それでいて、空気は清涼であったし、温和な小鳥の囀りや、もっと下の方であろうに存在するであろう清流の音なんかは寧ろ気持ちいいくらいだった。
生家のある咬穿村から、北東の方向に道なりに7kmくらいの場所に位置する『哀愁の丘』。自然豊かで、たまに散歩に来る人だってちらほらいるのだ。
その最奥の誰も目もくれないひっそりとした空間に、ちっぽけなお墓に毎月1回訪れて、ヒマワリを1輪だけお供えする。たまに、彼女の好きだった赤マルの箱をひとつ添えたりもして。
そんなことが習慣になりつつあるということは、きっとあの日からは随分時間がながれたのだろう。
思い出そうとするとガリガリと引っ掻かれるように痛む脳みそや、ぐにゃっと歪む視界に全身に走る嫌な悪寒も、もはや慣れっこだ。
「すごく暗くて深い沼があってね」
「うんうん」
「そこにはたくさんの気持ち悪いものがあるのよ」
「たとえば?」
「ぐちゃぐちゃのおおみみすよ」
「それは不気味だね」
「そこからたまぁにひっそりとそれが出るのね」
「危なくないのかい?」
「危なくないわ...けれど...」
「けれど.....?」
「あなたがいれば危なくはないのよ」
「守れって言うのかい?」
「そういうことじゃあないのよ?」
クスリと訝しげに笑って見せた。
彼女は
そういう時に寂しげな顔を浮かべる