第3話「邂逅」
「人工の契約者、ねえ」
二日後の深夜。ユウトはくたびれた三トン半、トラックの助手席で呟く。
車内はネツキの求めで緩く暖房が効いている。
場所は新潟県柏崎市。北陸自動車道の西山インターチェンジの上り車線、立体交差の真下に、道に逆走する形で停車していた。
「なんだ、まだ納得いってないのか」
玄方所属の尖兵部隊による、四号甲都「アガノ」(新潟県阿賀野市)から三号甲都「ヤスギ」への極秘移送計画。その移送される「モノ」の奪取が、この依頼の主目的だった。
勿論、それだけであれば、何もユウトの協力を求めるような話ではない。
人工の契約者。尖兵部隊に配置されたその存在こそが、宮内がユウトたちに依頼を持ちかけた最大の理由だった。
傭兵を装った宮内の尖兵との共同作戦。ユウトたちの役割は単純明快だ。契約者の排除、或いは無力化。
「お前が言うんだから、サエが供与者ではないって話は信じるとしよう。なら、奴らは何から力を引き出している。少なくとも三年前の時点では、奴らにセイレイをどうにかできるだけの力はなかった筈だ」
ハンドルに両の肘をつき、酒の注がれた杯を片手にネツキが眼を細める。
「ユウトが何を気にしているのか、わたしには手に取るようにわかるぜ。要は、その為にサエの力が利用されているんじゃないかって心配なんだろ。でもな、それこそ今は考えるだけ無駄ってもんだ」
そして杯を傾ける。
「遠くばかり見ていて自分の作った死体に躓いても、わたしは助けないからな」
そう言うネツキの瞳は、遥か空に浮かぶ月を映していた。
◆◆◆
そして午前一時過ぎ。事態は動く。
金山山頂から、光無線通信により作戦開始の合図が発せられたのだ。
「情報どおり、ってわけか。どうするユウト。手勢の尖兵二十六人が、丸々敵になって待ち構えてでもしたら」
キーを捻り電動機を始動させ、アクセルを踏み込みながら悪魔が囁く。
思わず笑いが零れた。
「そりゃまた、なんとも迂遠なことだな」
ネツキも本気で言っているわけではない。仕事前の気晴らしだ。対処法くらいは、暇つぶしに考えているかもしれないが。
全開にした窓から、天井へと上がる。
ほぼ同時だった。山陰で立て続けの閃光、そして爆音が辺りに重く響く。
路面に仕掛けた爆薬(C4)を、宮内の部隊が起爆させたのだ。わずかな時間差は、進路を塞ぎ、退路を断つという二段構えであるが故。
足を止めた車列へと撃ち込まれた対戦車擲弾発射器(RPG)弾頭の炸裂が、余韻に震える大気を焦がす。
直前、二種の異なる光輝の合間に、ユウトは膨れ上がる励起された咒素の波を見た。
刹那の音の空白。咒素に乗せたネツキの声が、直にユウトの鼓膜を叩く。
『畜生、こいつは当たりだ。奴らイラエトの眷属を連れてやがる』
「なっ……」
飛び出した名前にユウトは絶句した。
機関銃の掃射が再び行く手を音で満たす。
アルバスのイラエト。その名は、中東に降り立った災渦に次いで、ヒトの世に知れ渡っている。それはイラエトが始まりの四柱にして、人類に対し土地と民の領有を最初に宣言したセイレイであるからだ。
それだけに衝撃は大きい。
『アレの領地は北欧だろ、なんだってこんな場所に』
だがネツキが何かを応えるより早く、カーブの先、その光景がユウトの眼に飛び込んだ。
爆薬(C4)により捲れあがったコンクリート。奥には停車した四台の車両。
装甲車二台に、輸送車一台トラック一台。何れも古びた一般車両を偽装している。前後を装甲車が固め、間に輸送車とトラックを配置する布陣だ。
車列から少し離れた場所に、榴弾が穿った穴が八。奇襲はものの見事に失敗だった。
玄方の手勢は十八。火線を張り、宮内からの猛攻に淀みなく応戦している。玄方の尖兵は全員がフルフェイスのヘルメットを身に付けており、素顔は定かではない。
人数は情報通り。しかしそんなことを喜んでいる余裕は欠片もない。内の五の垂れ流す咒素が、明らかに異質だった。恐らくは、人工の契約者とやらが一の、眷属が四。
ユウトはそこまでをコンマ一秒とかからず読み取る。
ネツキにも見えているだろうが、トラックは速度を緩めない。ばかりか、戦闘区域へと向けて更なる加速を始めた。
ヘッドライトを灯しもしない電動式のトラックの接近に、この銃声の鳴り止まぬ戦場でいち早く気づいたのは、やはり眷属と思しき二つの影だった。
掲げられる掌。その先で、イラエトの起源を持つ咒素が収斂を始める。
ヤバイ。そうユウトが思ったのと、ネツキがハンドルを切ったのは同時だった。
横転ぎりぎりの急激な進路変更。慌てて天井にしがみ付くその脇を、不可視の何かが通り過ぎた。余波に、荷台の幌が裂ける。遥か後方では、金切り声にも似た異音が破壊の嵐を吹き散らしていた。
それは展開と呼ばれる起源の発現。
黄泉竈食など、所詮はヒトの肉体に生じた副次的な現象に過ぎない。
そもそも咒素とは何であるのか。
咒素は、玄方の言う異界の大気ですらない。幽世という次元を構成する最小単位。言わば、現世の素粒子に、また物理法則に等しい。
その咒素で、セイレイという存在は構成されている。サエという堺を破り現世へ咒素をもたらした元凶。幽世からの侵犯者。それがセイレイの正体なのだ。
セイレイの有する超常性とは、即ち幽世の理に他ならない。
起源とはセイレイの個そのものだ。呼吸をするようにセイレイは咒素を取り込み、己が身とすることでそこに起源を与える。
起源を与えられた咒素は、励起され連鎖崩壊する時に、起源の持つ意味を事象として具現化する。
言わばヒトにとっての手足だ。
物質を転換し、エネルギーとすることでヒトが身体を動かすように、起源とその意味という個の法則に基づいて、咒素の見かけ上の在り方を変質させる。
セイレイが起源を発現させることと、ヒトがその腕を振るうこととは、本質的には同じ。
起源を持たない眷族がなぜ展開を可能としているのか。それは眷属の眷属たる所以。起源を成すセイレイの、その身の一部に近しい存在であることに由来する。
より論理的に。咒素の起源に方向性を与え、相応しい量を励起させることで、眷属もまた超常の業を行使することが出来た。
イラエトの起源は歪みとその是正。欠陥と修復。今のは恐らく、空間そのものを球状に歪ませ、撃ち出してきたのだろう。
二人目の掌から咒素が放たれる。
『次は――』
『任せておけ』
ユウトは無造作に右腕を横薙ぎに払う。その刹那、右腕で咒素が弾けた。
トラックの前方を赤と黒の五条が横切る。直後、トラックの両脇後方でコンクリートが粉微塵に砕け散った。
振り抜かれたユウトの腕の先には、長さにして五メートル超、熊手を思わせる長大な五指。
起源を展開させたのではない。ただ体内から引き出した高密度の咒素に、形を与えただけ。粗雑な代物だ。
しかしそれで事足りるのも事実。
ネツキの起源とは、清浄に零れる穢れの一滴。如何なる正常さえ蝕む、禍を司る赤と黒の毒牙。
ユウトは、展開されたイラエトの起源にネツキの起源を差し込むことで、招かれる事象の崩壊を誘導したのだ。
そう。契約者などと呼ばれるユウトとて、ネツキというセイレイの半身。咒素は己の身体も同然だった。
近距離の爆発に車体が小さく跳ねる。下手糞がとネツキの罵声が聞こえた気がする。
積荷の幾つかが路上に転がった。
落下の衝撃に耐え切れなかったのだろう。四の棒と一の球体を持つ積荷――腐乱したヒトの躯は、幾つもの部位に千切れ、溶けかけた管と黒ずんだ体液で路面を濡らした。
飛び交う銃声に空隙が目立つ。
敵の攻撃が緩んだだけではない。味方の手も止まっていた。
立て続けの爆発で、向いていた注意が落下物に気づかせたのだろう。
だがもう遅い。トラックは間もなく戦闘区域に、その手前の陥没したコンクリートに到達する。その意味の理解は、その身を以ってすることとなるだろう。
荷台の幌を右の腕の一振りで払う。露になるのは五十あまり積まれた死体の山。
重質量の接近に、今更ながら玄方の兵たちが引き金を絞るも、五の赤黒の鞭が悉くを叩き落とす。
そしてトラックは穴めがけて飛び込み、死体の山が膨張、破裂した。
横転し車列へと突っ込むトラックの荷台から、コールタールを思わせる粘性の液体、最悪の起源を持つ咒素が吹き散らされる。
辺りに漂う猛烈な死臭。ユウトすら慣れ得ぬ冒涜的な臭気。
それは咒素に備わった起源の臭いだ。フルフェイスのヘルメットすら、何の役にも立ちはしない。
敵の統率が乱れる。訓練された兵たちが恐慌状態に陥っていた。幼子のように悲鳴をあげ、泣き叫び、逃げ惑っていた。
無理もない。死臭は咒素そのものだ。起源を与えられていない咒素に、いくら耐性のある尖兵であろうと、ネツキによって展開された壊疽の性質に抗う術はない。
眷属すらその動きを止めていた。発現を殺してある味方ですらも、動くことが出来ずにいた。
地獄すら良心的に思える惨状の只中を、ユウトとネツキは駆け抜ける。横転の瞬間、放散する咒素に紛れ飛び出した二人は、既に目標である車列三番目、装甲トラックを目前にしていた。
だがあと数歩の地点でユウトは足を止める。
「モノは頼む」
それだけを早口に身を翻す。
向き直った先、銀光が閃いた。上段から振り下ろされる素直な太刀筋。刀身を包むのは、掠めただけで対象を挽肉にする凶悪な咒素。
ユウトはそれを、束ねた帯状の五指で正面から受け止める。触れた二つの起源の間に生じる、放電にも似た大音。不完全に具象化したイラエトの起源が、無差別に周囲を歪曲しようとしていた。
が、それは叶わない。辺りを満たす咒素、ネツキによって起源を与えられたそれが、不完全な顕在化すらも阻害していた。
何故セイレイが領地を欲するのか。その答えのひとつがこれだ。
特定の起源を持つ咒素で満たされた領域。その内では、領域の主以外の起源が、悉くその意味を減退させる。
今やこの戦場は、ネツキが五十の躯を媒介にして作り上げた、即席の領地だった。
ユウトが腕を力任せに振り抜くと、襲撃者はその勢いを利用して間合いを取った。
襲撃者――契約者は細身の男だった。真直ぐに伸びた背筋。二陣の奇襲で瓦解しつつある戦局にありながら、堂々たる姿。背丈はユウトよりわずかに高い程度だろうが、男としての風格がある。
咒素の害毒に侵されながらも対応して見せたところからして、眷族より遥かにイラエトの起源に近い存在だ。
眷属たちもじきに体勢を立て直す。
ユウトもネツキも、咒素の放出を最小限に抑えるため、体内の咒素総量を極限まで減らしていた。即席の領地は、不足する咒素の供給源としての役割も担っている。
だが、領域は高々半径にして五十メートル程度。ネツキが対象物を運び出し、戦域を離脱したところで、奴らは反撃に転じるだろう。
よもやセイレイのネツキが遅れを取るとは思わないが、今はヒトの殻に縛られている。平時であれば咒素を隠すのに最適なそれも、戦場ではただの足枷。重ねて言うが、ユウトはネツキの身を案じているのではない。これは宮内の部隊(お荷物)をどうするかという話なのだ。
眷属が、それも四体も紛れているという最重要の情報。抜けていたことに悪態をつきたくもなる。
どうあれ、こうなっては数合の内にケリを付ける必要があった。
咒素の赤黒い肉で肥大した右腕に、捻くれた咒槍を構える。
「この時を、僕がどれほど待ち望んだことか」
ヘルメット越しの声は篭っていて、最初そうだとは思えなかった。いや、それだけではない。ユウトの記憶にある声の印象から、あまりにもかけ離れていたのだ。
「長い、三年だった」
契約者の、外したヘルメットの下から覗いたのは、かつての友、アキミの顔だった。
「久しぶりだな。ユウト」
だが、とても再会を喜ぶような雰囲気ではない。
ユウトを見据えるその瞳には、三年前に相対した時にはなかった憎悪が、くっきりと浮かんで見えた。
何故と。湧き出す疑問は、しかし向けられた憎悪に対するものではない。けれどその問いを言葉にする暇を、アキミは与えてはくれなかった。
たった一歩の踏み込み。それだけで五メートルの距離を零に詰められる。地を這うような体勢。路面すれすれの低軌道から、刀身が跳ね上がる。
間一髪。鼻先を荒れ狂う咒素が通り抜ける。肌に幾筋もの裂傷が走る。
ネツキの咒素が辺りを満たしていなければ、間違いなく頭部を破壊されていただろう一撃。そこには確かな殺意が込められている。
頭上で旋回した刀身が、左から水平に襲い来る。
体勢の崩れた今、跳躍して距離を取るのは不可能。そう判断したユウトは槍を解き、五条の帯へと戻しコンクリートを叩く。
巨大な腕に殴られたかのように、ユウトの身体が後方へと吹き飛ぶ。間合いを外された刃が空を薙いだ。
続けて二合、三合と得物が打ち交わされる。
一方的な殺意。次第にユウトの中で、疑念は怒気へと塗り替えられていく。そして四合。
「お前は。お前はなんてことをしてくれたんだ」
ユウトが血の滲むような声で、静かに怒号を発した。
「それを君が口にするか」
互いの間で、咒素が起源を食い荒らす。だがその優劣は目に見えて明らかだ。イラエトの起源では、領域にあるネツキの起源を殺すことは出来ない。
「サエを裏切り、苦しめている君が!」
少女が人柱としての運命を受け入れた理由。それは、ユウトたちの生きる世界を咒素の汚染から守るためであった。しかし守られるべき二人は、その守られるべき世界から自らの足で飛び出した。契約者という、ヒトでない咒素そのものに成り果てた。少女に対し、これ以上の裏切りがあるだろうか。
勿論、ユウトには己の少女への裏切りを心得ていた。しかしそれも、アキミが少女の側にいると思えばこそ。
安全な場所で、誰かを歯車にすることで安寧を得ている者たちが居た。依巫が消耗品であることを肯定し、変えようともしない。そんな現状を、ユウトは打破したかった。だからネツキに力を求め、代替を可能とする仕組み(システム)そのものを破壊した。
なのに。アキミはもう少女の傍らには居ない。アキミは少女の最後の願いを踏み躙ったのだ。その無自覚さに苛立ちが募る。サエと少女を呼ぶのも許せない。契約者となり、サエの呪縛から抜け出した存在になってなお、その名で呼ぶなど。
少女はサエにヒトであることを奪われた。かつての名は失われ、食べる事も、寝る事も、老いる事すら少女には叶わない。暑さもなく寒さもなく、触れた手にすら気づけなくなりつつあった。
今を思うのも辛い。
そしてその隣には、アキミすら居ないのだ。
「あの日、お前が言った台詞をそのまま返してやる。どうしてお前はここに居る。どうしてお前はあいつの隣に居ない」
「君がすべてを壊したからだ」
間髪を容れずアキミは言い切る。膝を目掛けて叩きつけられる踵を、コンクリートを踏み抜く跳躍でかわす。
着地より早い追撃。それを五条の帯で迎撃し声を張る。
「壊して何が悪い。あいつを苦しめるだけの世界に、どんな意味がある。耳障りのいい言葉をあいつに囁いて、だが奴らが実際にやっているのは単なる保身だ」
「ならどうして気づかない。玄方がより遠い破滅より、目先の脅威を恐れると」
防御に回ったアキミへ五条を射ち放つ。到達の直前、アキミが路面に膝を着き、咒素を乗せた拳を振り下ろした。
何を。その疑問は、足元で生じた爆発が応える。
膨大な砂利とコンクリートの小片が、銃弾の速度で襲い来る。引き戻し傘状にした右の咒素を足元に、その弾雨を凌ぐ。
咒素が揺らぐ。逆さまの瀑布をものともせず、アキミが至近に詰めていた。
空中という不安定な体勢。強引に身体を捻るも、刀身が左の二の腕を掠める。歪んだ空間に肉が弾けた。鮮血が土煙を紅に染める。
本体と繋がっている起源は、やはり完全には打ち消せないらしい。肘から先が力なく垂れる。骨が見えるほど、ごっそりと持っていかれていた。
「玄方はあの日を境に君らを、宿敵である星隷を滅ぼす道を選んだ。その為にあらゆる手段が講じられた」
防戦一方のユウト。と言うのは御幣がある。双方、少なくはない傷を負っていた。
だがアキミの傷は、悉くが急所から外れている。怒りはあっても、ユウトはアキミに対し殺意を抱けずにいるのだ。そして、アキミの言葉に注意を奪われつつもあった。
アキミは三年の時を埋めるが如く、言葉を畳み掛ける。
「お陰でサエの咒染はもう限界だ」
咒染。それはサエが現世の存在である以上、幽世の咒素から世界を隔離する上で、避け得ぬ代償。封印がサエのオリジナルによるものではなく、依巫という代用品によって行われる、最大の理由。
「意識の混濁も始まった。じきにサエですらなくなる。それでもまだ、生かされている。その理由を君は知っているか」
咒染が進行すれば意識は咒素に呑まれ、やがてセイレイに似た災いを振り撒くだけの、理性も知性もないただの化け物へと変わってしまう。だから依巫はそうなる前に、玄方によって処分される。
そうさせないために、ユウトは修羅の道へと落ちたのだ。
「知らないだろう。簡単だ。殺すためさ、君ら星隷を」
だが、これは違う。そんなことを望んでいたのではない。願ったのではない。
これでは、希望も何もありはしない。
「お前は。それを黙って見ていたのか」
ユウトの胸の内で荒れ狂うのは怒りだった。徹頭徹尾、己らのことしか頭にない玄方への。奴らに唯々諾々と従ったアキミへの。そしてそれに勝る、愚かな己への怒りだった。
「僕では代わりになれない。なれなかった。ならせめて一緒に苦しんでやるくらいしか、僕に出来ることはないだろう」
槍状に纏めた右腕での見え透いた刺突。激情が急所を狙わせた。激情が支配しているからこそ、避けさせて距離を取ろうという思惑もあった。だが――。
刹那、視線が交錯する。
寂しげに憎しみと怒りを湛える瞳を、そこに映る決意を、ユウトは正面から見てしまう。
「ユウト、サエの為に死んでくれ」
アキミは刺し違える覚悟でいるのだ。
咄嗟に腕を捻り軌道を逸らす。無理な運動方向の変化に身体が流れた。
そしてユウトは、己の身体に突き込まれる白刃を眼にする。