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インモータル!!!!  作者: 小元 数乃
全知認識《ラプラス》
5/28

今後予定・逮捕

 翌朝。


殴りつけて出てきた直後では黒江もシシンも気まずいだろうと気を利かせた健吾は、とりあえず黒江を掃除されていない寮の中では、まだましな自分の部屋へと押し込み、彼はそんな彼女を守るつもりで、廊下で寝た。


シシンと信玄は深夜遅くまでなにやらごそごそやっていたみたいだが、黒江が錯乱する原因となった自覚はあるのか、彼女に近づこうとはしなかった。


というわけで、朝になって健吾はまともな寝床で寝られなかった影響で節々が痛い体を引きずりながら、『シシンと黒江の仲直り、どうしたもんか……』と思いつつ、黒江を扉越しに起こした後、とりあえず人の気配がする食堂へと足を運んだのだが、


「ひゃっは! ここでA連打ぁ!! 右押しつつLR同時押しからの、サンライトイエローCボタンオーバードライブっ!!」


「bbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbb!!」


「だが、断る!!」


「だが断るを断る!!」


「な、なにぃ!? パリィだとぅ!?」


「喰らえや、必殺――カウンター黄金バァアアアアアアアアアアアアアアット!!」


「ぐあぁああああああああああああ!?」


 何やら、旧世代のゲームの名作――大乱闘ブラッドクラッシャーズという、四人対戦の格ゲーをしていた。


 NPCは格好のカモとして率先的に狩られたのか、もうキャラ表示にバツがついており黒く染まっている。


 残ったシシンと信玄のキャラは、なにやら健吾ではわからないほどの高度な操作によってコマンドの中にない16連コンボを敵に叩き込んだり、裏技パリィによって敵を硬直させてカウンターとかをしており、そのゲームを小学生時代一応そこそこやりこんでいた健吾ですら全く勝てる気がしない戦いをしていて……。


「おぉ、健吾! 良いところに起きたんだな!! こいつちょっと強すぎるんだな!! 昨日の晩からガチバトルしているんだけど109勝112敗で負け越してて……こうなったら二人の力で袋にするんだな!!」


「五分でしたくしな! のろまは嫌いだよ!!」


「何やってんだ、お前らぁあああああああああああああああ!?」


 状況わかってんのかっ!? と健吾があげた怒声に二人は、ギャーと悲鳴を上げ徹夜明けで痛む頭を抱えた。完全な自業自得だった。


 するとそれに驚いたのか、どういうわけか下着にワイシャツ一枚で降りてきた黒江があわてた様子で食堂にやってきて、


「け、健吾さん!? どうしたんですか!? 敵ですか!?」


「健吾さん……やと!?」

「しかもその恰好は……」


 二人は一時的にゲームをポーズにした後ヒソヒソと話し合い、二手に分かれる。


 信玄は健吾の肩にポンと手を置き、「昨夜は……お楽しみでしたね」

 シシンは台所に向かいながら「赤飯たかなくちゃ~」とおばさん言葉で告げた後、爆笑しながら裏口から逃走。「ご近所の皆さん、うちの健吾が童貞捨てました!!」と大声で触れ回ろうとしたので、


「…………………」


 健吾は無言のままサイボーグの力をいかんなく使い、二人の肩を強制的に捕まえその顔面に文字通りの鉄拳を叩き込んだ。




…†…†…………†…†…




「悪ふざけが過ぎるだろう? 特にシシン――あって一日の相手になんでお前はそんなに全力全開なんだ?」


「「ごめんなさい……」」


 顔面がちょっとしゃれにならない感じでへこんだ二人は、早朝から古き良き日ノ本の文化、土下座を朝っぱらからやらされていた。


 爽やかな朝の陽ざしに包まれて高校生二人が、ピシリと決まった土下座をする光景というのはなかなかシュールなものだ。


「というかお前ら本気でたった一日で仲良くなりすぎだろ……。女の子一人泣かした後でよくそんなに仲良くなれたな」


「ふっ……エル・プ○イ・コン○ルゥ。シシンがこの言葉を言った瞬間、僕は気づいたんだな――。あぁ、こいつは僕の同類だと!!」


「そして我々の絆は血よりも濃いのだ。たとえそれが初対面の相手だったとしても、己が愛すべき芸術を共に知るものであるならば、もはやそこに時間など関係ない!!」


「あぁ、要するにお前ら両方ともオタクなんだな?」


「「ピンポーン!!」」


 イェーイといってハイタッチを交わすバカ二人。だが、数秒後の「誰が土下座をといていいといった?」という健吾の冷たい言葉に、切なそうな顔をしつつ再び土下座へと戻った。


「さて、黒江……。昨日のこと、仲直りしとかないと」


「この状態で!?」


 さぁ! といいながら、二人をその状態で拘束した健吾は、後ろに控えていた制服姿の黒江に爽やかな笑みを浮かべて促す。


 この学園都市の価値観はいったいどうなっているんですか!? と、黒江は健吾の言葉に戦慄を覚えたようだったが、一応謝らないといけないのは分かっているのか土下座をしているシシンに近づく。


「あ、あの……シシンさん。その、ごめんなさい」


「あれ? この状況だけ切り抜いたら俺、土下座してまで食い下がって交際申し込んだはいいものの、結局断られちゃった哀れな男に見えへん?」


「ヤバいんだな……。ちょっとトラウマ思い出して涙が」


「おれもだ……。女子はちょっとモテない男子たちに対して『ごめんなさい』の一言がどれだけその男子の胸をえぐるのかを自覚するべきだ」


「な、なんで私こんなに全方位からバッシング受けているんですか!?」


 ただ謝っただけなのになぜか男子勢全員の涙を引き出してしまったことに、黒江はちょっとだけ引いているようだ。


 ところで、なんでシシンと信玄は『こいつ、全然自覚ねーよ』『このフラグ一級建築士め!!』みたいな視線むけてるんだ? と、健吾は首をかしげつつ、


「で、シシン。この謝罪ちゃんと受け取ってくれるか?」


「いや、べつに俺が殴られたこととかどうでもよくてな?」


「いいんですか!?」


「当たり前やろ!? 自分が悪くないのに女子生徒からビンタ食らったとか、むしろ我々の業界ではご褒美です!! ここで大きな度量を見せることによって、その女子は思わず男子に好意を抱くゆールートが完成するしな!!」


「フ・ラ・グ! フ・ラ・グ!!」


「もうお前ら本気で黙れ……」


 もとよりヒステリー起こした女子の行動なんて、まともに取り合う気がないと分かった二人の態度を見て、健吾は「いままでの自分の気苦労はなんだったんだ」とため息を漏らしながら、唖然としている黒江へと向き直る。


「さて、馬鹿どもがはじめから気にしていないことが分かったところで、これからどうする?」


「……」


 健吾の質問に黒江は思わず黙り込み、考えをまとめるためにか椅子に座った。


 だがしかし、その姿には昨日のような諦観の色はなく、どうやって生き残るかを真剣に考えている顔をしていた。


 よかった、もう大丈夫そうだな。と、そんな彼女の様子に、健吾は少し安堵したような笑みを浮かべ、そんな健吾を見た馬鹿二人が、


「こ、これは……」


「フラグはやはり健吾のものだったんだな……」


「あのたらしがぁ……。とりあえず後ろから刺そか?」


「それよりもネットでお手軽爆弾の作り方調べるんだな。最近はちょっと調べればすぐに不必要な知識が手に入るから便利なんだな。時限式にしてアイツが家に帰るころに爆発するようにセットしておくんだな!!」


 と、何やら犯罪丸出しな計画を立て始めたので、遠慮なく殴りつけて黙らせる。


「私がなぜ第六学園都市へと逃げてきたのかは話しましたか?」


 そんな風に男子三人が馬鹿な喧嘩をしていることを完全に無視しながら、黒江は漸く口を開いた。




…†…†…………†…†…




「ん? 第一学園都市――六花財閥の影響が一番強い学園都市から逃げたかったからだろ?」


 黒江の質問に答えてくれたのは、健吾だ。その返答に「それもあります」と黒江は答える。


《六花財閥》は六つの学園都市建設に携わった――というか、六つの学園都市を作り上げた巨大財閥だ。そして、数年前に戦争インフレで儲かった金を使い《日ノ本》そのものを買い取り、国の主となった財閥でもある。民衆の反感を買わないために、形だけ設置された議会制の裏で――傲岸不遜に国を操る、この国の真の支配者。


「それもありますが……。実は第六学園都市はほかの学園都市にはないある特別な権利を手に入れている学園都市なんです」


 ご存じないですか? と、黒江に尋ねられて思わず首をかしげる第六学園都市古参の二人――健吾と信玄。この学園都市はほかの学園都市から厄介払いされた『超能力の成長が見込めないクラス3以下の落ちこぼれ』が集約されていることが真っ先に特徴としてあげられる――六花財閥に「いらない」と半ば廃棄された都市だ。


どこの学園都市からも嘲笑われる《できそこないの都》というのが内外共通の第六学園都市の評価。


長くこの学園都市に住んでいる二人ですらそのことは自覚しているのだろう。だから、彼らはとても不思議そうな顔をして、


「おい、黒江……お前本当に大丈夫か? どこかで精神系能力者の攻撃くらってない?」


「ストレス性による記憶障害が一番可能性が高いんだな……。くっ……暗部連中め。女の子をこんなになるまで追いつめて」


「いや、なんであなたたち自分の学園都市に対してそんなに評価低いんですか?」


「というか、住んでいる奴らにそこまで言われる都市に放り込まれた留学生っていったいどういう扱い受けてるととるべきなん……」


 俺実は冷遇されてるんとちゃう……? と、大げさにへこみ部屋の角に体育座りをして落ち込み始めた(フリ)をするシシン。


 当然今までの態度から真面目に落ち込んでいるわけではないと黒江は分かっているので、シシンの態度を平然とスルーし、


「この学園都市は、独自の法治組織を作る特別権限をもらっているんです」


「「あぁ……あの暴力教師軍団」」


「話が進まないので無視させていただきますね?」


 もういいかげん釘を刺さないとダメかな? と思った黒江は明確な怒りを込めたセリフをぶつけた後、深呼吸を一つ。思考と気分を切り替える。


「彼らは独自の法治組織ゆえに学園国家上層部――六花財閥と直接的つながりが持てませんでした。公的権力はあくまで教師の権限内。法律(ルール)のような犯人確保権限も、警察のような法律的加護も彼らはもちえません。ですが」


 それゆえに、彼らは彼らとして独自の正義にのっとって動きます。と、黒江は第六学園都市に来る前レインベルが話してくれた事情説明をなぞっていく。


「彼らは第六学園都市市長にして第六学園都市統一理事長の命によって権力を与えられた集団。その目的は《生徒に安全で快適な生活をしてもらうこと》。その目的の為なら、彼らは六花財閥直轄である第一学園都市の意向にすら逆らいます。おまけに第六学園都市は、半ば六花財閥が見捨てたような状態なのはご存知ですよね? その明確な理由として挙げられるのが、すべての公的決定権を統一理事長に委任されていることです。つまり、この学園都市においてだけは、第一学園都市よりも統一理事長の方が権力的に強いものを持っているのです」


「つまり……文部科学省の言うことをよう聞く公立学校と、生徒バカすぎて政府からの口出しが一切ない代わりに理事長が好き勝手できるようになってる私立学校みたいなもんかいな?」


「……えぇ、まぁ、だいたいそんな感じです」


「すごい不満そうな顔された!?」


 せっかくお嬢様が話してくれたのを一生懸命思い出しながら話したのに……。ひどい……。と、黒江は今までの自分の苦労を分かりやすいバカっぽい説明ですべて無駄にしてくれたシシンを涙目で睨みつける。


「で、ですので、あの先生たちに保護さえしてもらえれば、多少は暗部からの追撃も大人しくなるかなと分でこの都市に逃げてきたんです……が」


「割とがっつり追われていたな」


「遠慮なく入ってきましたね……。暗部」


「まぁ、公的権力って結構何やっても許されるんだな……。漫画の中でもだいたいそうだし」


「腐ってやがる……早すぎたんだ」


「なにが?」


 ほんといいかげんにしろよお前ら……。と、言わんばかりに健吾がシシンと信玄を睨み付けるのをみて、黒江はほんの少しだけ楽しそうに口元に笑みを浮かべ慌てて、不謹慎ですよね! と、頬を赤くしながら顔を引き締める。


「今僕何も言っていないんだな!?」


「あ、コラ裏切んのか!?」


 だが、そんな風に黒江ががんばったところでそれよりも不謹慎なバカ二人が不謹慎な態度をやめるわけがなかった。ので、


「で、お前がここを頼った理由は分かったけど、それがダメになった今どうするんだ?」


「いいえ、ダメになったわけではないと思うんです」


「というと?」


 結局二人を無視して話を進めようとした黒江に、信玄と胸ぐらをつかみ合ってガン飛ばしあっていたシシンはあわてて通常運航に戻り、話に加わってくる。


 どうやら話に置き去りにされては困るという普通の感性は残っていたらしい。


「第六学園都市の公的権力は、確かに第一学園都市の影響を受けていることがわかりました。私や健吾さんが指名手配を受けたのもそのせいです。ですが、それだけではまだGTAが第一学園都市の影響下にあるかどうか? ということは、実はまだわからないんです」


「健吾……さん?」


「名前呼び……だと!?」


「で、ですね」


「なぁ信玄……スルーされるとめっちゃさみしいな」


「そうなんだなそうなんだな……。ウサギだってさびしかったら死ぬんだな」


「で、ですね?」


 黙ってくれません? と、いい加減キレた黒江が両手を振り上げるのを見て、脱兎になったバカ二人。健吾はそんな二人を呆れたような視線で見ていたが、


「実際あの指名手配にGTAがどうかかわっているかはわからんからだな?」


「そういうわけです。実際公的権力――情報管制や、マスコミに対する圧力かけといった行動はあの組織は取れません。あくまで治安維持だけが彼らに与えられた超過権限なわけですし。だったら一度、彼らのもとを訪れてみるのも……一種の賭けになると思いますが、かなり有効な手段だと私は思うのです」


「なるほど」


 筋は通っているな、と健吾は同意してくれた。だが、


「でも、やっぱり希望的予想が強すぎますよね……。あの人たちが本当に第一学園都市の圧力に屈していない保証はないわけですし」


 その案を否定したのは、ちょっとだけ自信を無くした風な黒江自身だった。


 彼女は今まで守ってばかりいられた人間だった。潜入任務を行えるまでの忍として育てられはしたが、初の実戦では仲間後と一網打尽にされ、その後はクラス5のレインベルに拾われその庇護下にいた。


 そんな彼女は今まで、レインベルのために必死になったことはあったが、自分自身を助けるために必死になったことはなかった。


 だからだろう。自分を助けるための案に、自身を救うための策に――自信を持つことができなかった。


 だが、


「あ~。たぶん大丈夫だと思うぞ?」


 健吾は肯定してくれた。


「だなだな」


「えらい自信満々やな……」


 というか、まるでそれが自然だといわんばかりに、第六学園都市所属組がそろって首肯を示していた。


「え、えっと……なんでそう思うんですか?」


「だって……なぁ信玄」


「あぁ……まったくもってそうなんだな」


 だが、肯定を示してくれた二人の顔はどこかこわばるように歪んでいて、


「「治安維持(・・・・)の邪魔だって言って、第一学園都市の刑事たち殴り飛ばすような人たちが、その支配を受けているなんて考えられないよ……」」


「「……えっ!?」」




…†…†…………†…†…




「ま、またか貴様ら!? またなのか!?」


「あぁ、まただ第一学園都市(ほんちょう)警察ども。第一の連中に我々の動きがばれるとまずいからな。しばらく拉致監禁させてもらう」


 とある学園の古びた一室に、複数の男たちが縛り上げられ能力阻害の手錠をはめられた状態で転がされていた。


 その誰もがスーツとコートを着た歴戦の刑事たち。第一学園都市の治安を法律(ルール)と共に守る凄腕たちなのだが……。


「では、下の世話や衛生的な世話はムキムキマッスルなホモい奴らにやらせる。あんまり暴れるようなら好きにしていいと言ってあるから、後ろほられないようにせいぜい気を付けておけよ」


「「はなせ!! お願いだからはなしてくれぇええええええええええええ!!」」


 涙を流しながら悲鳴を上げる男たちにひらひらと手を振りながら、教師らしいスーツに身を包んだ老婆は態度悪く「ペッ……」と唾を吐きながら男たちが監禁された部屋を出ていく。


 そして、老婆――山邑女史はその部屋の前に煙草をふかしながら立っていた、なにやらとっても楽しそうなムキムキ中年教師に、ご苦労様ですと声をかけながら足早に廊下を歩いていく。


「現在うちの法律(ルール)と第一学園都市から派遣された法律(ルール)は丁嵐たちを見つけられていない。刑事連中は抑えられたからよかったが、第一の法律(ルール)に手を出すのはさすがにまずいか」


 一応これでも教師だし……。と、今まで全く自覚しているようには思えない行為をしていた人間がその、後ろから響いてくるアーッ! という悲鳴をBGMに、そのセリフをつぶやく。


 その時だった、


「あ、山邑先生」


「ん? なんだ、花楓野(かえでの)か」


 突如背後から声をかけられたので山邑女史が振り返ると、そこには菓子パンが大量に入った紙袋を抱えた、桃色短髪の第六学園都市法律(ルール)構成員の少女――花楓野紅葉(かえでのくれは)が立っていて。


「聞きましたよ! あのなんちゃってヤンキー、いつのまにか国家反逆罪で指名手配食らってるみたいじゃないですか!!」


「何かの間違いだと思うがなぁ……。あぁ、ところで花楓野、法律(そっち)に何かあいつらにつながる情報はいっていないか?」


「あぁ、すいません。私ちょっと別件を捜査中でして。|第六学園都市ルール本部うちにはさっき調査費用もらいに顔だしただけなんですよ。いや~、相変わらず第一の連中が来ると本部がギスギスしすぎて居づらいんですよね~」


「ん? 別件?」


 今法律(ルール)はその全戦力をもって丁嵐と、正体不明の女性と黒江を追っていたところだったと思うが。


「はい。指名手配かかる前に、彼方から『町のとある場所で銃声が聞こえた』という通報がありまして」


「なるほど。夏葉(なつば)からの通報だったか」


 とある事情ですべての五感を9割がた封じている病院に収容された自分の教え子――夏葉彼方(なつばかなた)の顔を思い出し、山邑女史は少し驚いたように頷いた。


 今は丁嵐と黒江の捜索で忙しい法律(ルール)ではあるが、まさか通常業務をしないというわけにもいくまい。しかも通報された事件は発砲事件。通報してきた人物はあの(・・)夏葉彼方だ。何らかの危険な事件が起きたことは確か。


「とはいえ、それ報告したら第一の連中とかなりもめただろう? 今は指名手配犯の確保が最優先。通常業務など放棄してかまわん!! とか言って」


「えぇ……。今部長と副部長が第一から来た代表の人たちと全面戦争中です。あ、暴力面ではなく口論面ですよ?」


 わかっている、と念のため予防線を張ってきた紅葉に苦笑いでそう返しながら、山邑は紅葉が捜査している発砲事件が少し気にかかっていた。


 その気になれば人一人ぐらい簡単に殺せる超能力を持った人々が跋扈する学園都市ゆえに、この国では一定の武装が許可されてはいるが、だからといってそうそう簡単に銃を撃っていいということにはならない。


 無許可で銃を撃てば必ず一回法律(ルール)か警察に顔を出さないといけないし、出したら出したで面倒な発砲理由記述書をかき、それが無罪かどうか、裁判所が判決を出すまで謹慎。まかり間違って有罪判決が出ようものなら、かなりの年数の懲役と罰金が科せられる。


 科学が発達した学園都市で、公的権力にばれないよう発砲を行うのは非常に難易度が高く、それこそクラス5級の感知能力でも持たない限り、監視カメラといった学園都市の治安維持組織の目をかいくぐることは不可能だろう。


 だが、


「花楓野……夏場以外にその発砲について何か知っているやつはいなかったのか?」


「え? あぁ、そういえば部長も話聞いたときかなり驚いていましたね。あれ、そういわれると珍しいですね? 部長、この学園都市で起こったことは大体知っているって豪語していたのに」


「……」


 紅葉の答えに山邑女史は何か嫌な予感を感じつつ、『今はかまっている暇はないか……』と、ため息を漏らしながら、ひとまず自分の生徒に警告だけ告げておく。


「花楓野――十分注意して捜査に当たれ」


「え? わかっていますよ。相手は拳銃もっているんですから」


「ちがう、そうじゃない。いつも以上に警戒しろ。もしかしたらお前がおっている事件」


 お前の手には余る事件かもしれない。そう言いかけた山邑女史はそこで彼女がかなりの負けず嫌いだったことを思い出し、


「あぁ、いや……なんでもない」


「?」


 余計な忠告をした方が危険か……。と、判断して言葉をにごしながら足早にその場をあとにした。




…†…†…………†…†…




 そして、第六学園都市法治機関たちが、上からの圧力をいつも通りに無視しながら事件解決に臨んでいたころ、とある廃墟にてある激闘の幕が切って落とされようとしていた。


 ずいぶんと前に廃棄された廃工場。以前は学校をさぼった不良生徒たちのたまり場になっていたのだが、敷地に入るための場所に数日前に『私有地につき立ち入り禁止』の札が立ち、一般の人間は入れなくなっていた。


 もっとも、本気の不良たちなら「だからどうした」といわんがばかりに侵入しそうなものだが、そこは第六学園都市クオリティ。誰かの物になった建築物に勝手に入ると不法侵入が成立し、嬉々としてGTAが飛んでくるので、ここを利用していた不良たちは誰もこの場所に戻ってくることはなかった。


 だから彼らは知らなかった。それによって、ある一つの組織の拠点にこの工場が作り変えられた、と。


「ようやく見つけましたわよ……」


 そんな誰からも忘れられた工場に、一人の少女が足を踏み入れた。


 長い金髪を縦のロール状にして巻き、瞳に鋭い光を宿した豪奢なドレスのような洋服を着た少女――レインベル・ヒルトン。


「おどろきましたね。元クラス5とはいえ、今では一般資料閲覧権限しかもたないあなたが、こんなところにまでたどり着けるなんて」


 以前は何かを巨大な重機で組み立てていたと思われる巨大な空間。だが、この工場がつぶされた際その機材たちは運び出されてしまったのか、今はその姿を確認することはできない。


 だが、かわりに工場にはあまり似つかわしくないものが工場には所狭しと置いてあった。


 それは銃だった。

 それは最新式の盗聴器だった。

 それは旧式の軍事用望遠レンズだった。

 それは第六学園都市のすべての情報が、刻まれた異常な地図だった。

 

 まるでどこかのスパイ映画に、スパイたちの隠れ家として出てきそうな光景に、


「御託は結構ですわ《全知認識(ラプラス)》。私の用件……お分かりですわよね?」


「……」


 レインベルは眉一つ動かすことなく、棚や壁に立てかけられたそれらすべてが見られる位置に置かれたデスクにすわっていた、スーツ姿の青年――東公浩を睨めつける。


「――あのスパイについて、ですね」


「黒江はスパイなどではありません!!」


 東が苦笑をしながらデスクから出現している立体画面ホログラムに手を走らせ、何かを調べていくのと同時に、レインベルの怒号が飛んだ。


 彼女は許せなかった――あれほど優しい少女が、あれほど自分に尽くしてくれた友人が、たった一度の過去の過ちによってこれほど苦しめられるのが。


 だが、彼女だって日ノ本の人間だ。スパイを放っておくわけにはいかないという六花財閥上層部の意見だってある程度理解はしていた。


 だから彼女は、六花財閥の中枢から切り離された上層部の情報などないに等しい第六学園都市に黒江を連れてきて、スパイ行為をしても大した収穫を得られない状態に彼女を置き、黒江の六花財閥に対しての服従とスパイ行為をもう一切行っていないことを示そうとした。


 だが、それでも暗部(やつら)は追ってきた。まるで黒江の存在そのものが許し難いといいたげに。


 それでもレインベルは何か平和的な手段がないかと模索しようとしていたのだ。それ故に、一度第六学園都市のGTAたちの保護を受けて、時間を稼ごうとしたのに――今度は黒江がいなくなった。


 そして、彼女を探していたレインベルが見たものは――裏路地についていた無数の弾痕。


それを、能力を使い調べてみると、第一学園都市で黒江を殺そうとしていたあるクラス5愛用の武器だと分かり、黒江の身に何があったのか長年の付き合いで彼女の考え方を大体理解していたレインベルは察した。


そこまで行きついたとき、とうとう彼女は我慢の限界に到達した。


「こちらが穏便にカタをつけようとしているのに……なんなのですかあなたはっ!! それほどまでに黒江が憎いのですかッ!! いったい何があなたをそこまで黒江を殺すことに駆り立てるのですっ!! 答えなさい、《全知認識(ラプラス)》!!」


 お嬢様らしくない、まるで獣のような怒気が込められたレインベルの詰問。しかし、彼女の詰問に対して、それを尋ねられた東は、


「あぁ、レインベル。レインベル・ヒルトン。やはりあなたは日向に生きる人間だ」


 うっすらと、酷薄な――感情などみじんも見えない薄っぺらい、蝋人形のような笑みを浮かべた。


「なにをっ!!」


「スパイを見逃せ? もうこの子はもうスパイなんてしないから、敵国(うち)で平和に過ごしても問題ないでしょう? そんなわけがないだろう」


 東はそう言いながら座っていたイスから立ち上がり、レインベルに向かって歩き出す。


「そんな怠慢を許してしまえば、仮想敵国である天草はどんどん頭に乗ってスパイを送り込んできますよ」


 東はその道中、呼吸をするのとそう変わらない錯覚してしまうほど自然な動作で、ケースに置かれていたPR-345と呼ばれるマシンガン式散弾銃(・・・)を手に取り、


「そんな鼠を何匹も送り込まれないようにするために、私たちは断固とした態度をとる必要があるんですよ」


「つまり――黒江は見せしめなのですね。日ノ本にケンカを売るとただでは済まないぞ、という」


「お分かりいただけてなにより」


 カートリッジを装填。そして、


「……交渉は決裂ですわね。そんなくだらない理由のために、あの子の命が失われることは看過できません」


「もとより、国一つの命運と自分のわがままを天秤にかけるような娘と、交渉する気などありませんでしたよ」


 レインベルの額に向け、セミオート射撃で無数の散弾を射出した!


 通常のマシンガンのババババババババ! などという無粋な射撃音はしない。現在の日ノ本製の銃は、使用者の聴覚に障害を残してしまいそうな大きな射撃音は立たないようになっている。以前彼がつかった拳銃はあくまで彼の趣味の範囲で使っているアンティーク銃だ。


 まぁ、アンティークといってもあの銃でしかできない色々な利点があるのだが今は置いておく。


発砲音がしない隠密性の高いマシンガン。だから、工場内に響くガガガガガガガガ! という音は、発砲音ではなく着弾音。


無数の小径鉄球弾頭が音速を引き裂き地面を打撃する、死のドラムロール。


 さらに散弾銃という性質上、その弾丸たちは放射線状に広がり広範囲を銃撃。通常の散弾銃ですらその制圧力は他の銃を圧倒しているが、いま東が使っているのはマシンガン並みの連射が可能な散弾銃。


 それによって銃撃された廃工場は、無数の火花と破砕音を響かせながらあたりを土煙で包み込み、散弾銃の標的となったレインベルの姿を覆い隠す。


「……」


 黒江との戦いでの失敗を二度と行わないために――今度は逃げられないよう、東が対逃走用に選択した制圧特化型の銃撃。日ノ本製の散弾銃の射程距離は、通常の散弾銃とは桁外れに違う300mを実現しているため、これで狙われればもう以前のような逃走はできないはずだ、と東は思考する。


 だがしかし、いま敵対している相手に使うのはいささか不釣り合いだったか? と、同時に後悔の思考もうかべていた。


 そして、彼が後悔した原因が、


「っ!?」


 一条の光となって彼の頬をかすめることによって焼き、数メートル離れた工場の壁に直撃。そこにかけてあった無数の銃器を巻き込み大爆発を起こすことによって、彼の後悔が正しかったことを示す。


「まさか、そのようなくだらないおもちゃで私を倒せると……本気で思っていたわけではないのでしょう?」


 毅然とした声音で東に話しかけながら、土煙から姿を現すレインベル。その姿には傷どころか――着用している服に汚れ一つ確認することができない。


「……さ、流石は戦闘向けの能力を持つ、クラス5といったところですか」


「あなた方のせいで()……が付きますけどね」


 辛辣にそう吐き捨てながら、レインベルは冷や汗を流す東を汚物でも見るような視線で見下し、そして、


「黒江が味わった苦しみには到底及びませんが」


 自分の能力を発動し、周囲の()に指令を下す。


 その内容は至極シンプル。


「苦しみ輪舞(ロンド)を――私が躍らせてさしあげますわ」


 ――我ガ敵ヲ撃滅セヨ――


 その指令を守るために、周囲に満ちている光は無数の光球へと変化し、レインベルの周囲を飾り始める。


 その見た目は文字通り満天の星。しかし、保持する力はそれとは真反対の破壊の力。敵対者に死を告げる凶星。


 その美しい光景を作り出した光たちは、一瞬でその形を崩し、


「……相変わらずその能力、ビジュアルだけは圧倒されますね!!」


 数万数億近いレーザーの大軍へと変貌する。


 レインベル・ヒルトン――日ノ本の公式の発表では現在4人しか現存していない超能力者の最高峰、クラス5に名を連ねた《弾幕皇女(ガトリング)》の称号を持っていた少女。


 その称号が与えられた理由が、光の弾幕となり東へと襲い掛かった!




…†…†…………†…†…




「さて、今後の予定が決まったところで……飯どないする?」


「「「……」」」


 な、なんやその今そんな空気ちゃうやろ言いたげな視線は!? と、シシンは思わず周囲の反応に涙を流す。


 無論ウソ泣きだ。そんなわかりきったネタに反応する人間はもうこの場にはいないのか、彼らはそれを平然と無視して、


「では、次にどうやってGTAに会うかですが……」


 グ~。


「「「……」」」


「――っ!?」


 黒江のお腹から盛大なあの音が響いてくるのを聞き、会議が一気に白けた。


「な、な!? 俺間違ったこと言ってへんやろ!? 話し合いのせいで昼近いやんか!? それやのに俺ら朝飯食ってへんやんか!?」


「はい、はい。わかった、わかった。俺達もいいかげん腹減ったし飯にするか」


「このタイミングで腹を鳴らすとは……なんておいしいやつなんだな」


「す、好きでなったわけではありません!!」


「まぁまぁ、エエやないかエエやないか。腹なるんは生理現象やで?」


 さぁ、ご飯やごはん!! と、シシンなウキウキしながらそんな風に雑談を交わし――黒江とほぼ同時のタイミングで台所に向かうため立ち上がる。


「って、あれ!? シシン!?」


「料理できるんだな!?」


「まぁ、諸事情で家事関連は大半できんねんな~」


 驚きすぎやろ? と笑いながら、シシンの脳裏に浮かぶ家の家事風景。


魔術に傾倒しすぎたせいで一般生活が壊滅的だった父親が四苦八苦しながら、洗剤と間違えて砂糖を洗濯機に突っ込む光景がよぎり本気で泣きそうになりつつ、台所に立つ。そして、そこに置かれていたやけに綺麗な冷蔵庫を開けてみると、


「って、あれ? なんもないやんけ」


「あら、本当ですね?」


「あぁ~。ほんと緊急事態ぐらいにしか使わんからなこの寮。買いだめとかそんなしてないんだわ。あ、でも信玄。お前こっちに来るんだったら食糧、なんかかってきてなかったのかよ?」


「料理できないぼくがそんな上等な食材買ってくるわけないんだな。流しの下の棚を見てみるんだな」


「ほ~い。って」


「これ……」


「ビバカップめん! インスタント食品!! それだけあれば人間死にはしないんだな!!」


「栄養偏っちまうだろう……。まぁ、今は緊急事態だから我慢するしかないけどさ」


 いわれた通り棚を開けその中の物を見たシシンと黒江は思わず絶句した。


 そこには文字通り、インスタントラーメンのプラスチックどんぶりがパッケージをかぶせたままズラーッと並んでいたからだ。


「いや、でも……いくらなんでもこれは健康に悪くないですか?」


「安心するんだな! こんな食生活を独り立ちしてからずっと続けているけど、いまだに僕は死んでいないんだな。すなわち、安全性は保障済み!!」


「お前がその体系になっている時点で全然保障されてないだろ……」


 もういつものことなのか、呆れきった声は上げるがため息を一つ付くだけで済ませてしまう健吾。


 いつもレインベルに食事を作っていた黒江もかなり不満そうな顔ではあるが、食材もなし、ある食料はこれだけという状況ではもうあきらめるしかなかった。


「いま外に出るのは危険ですしね……。どこで東が見ているかわかりませんし」


と、一応広範囲探索を行える人物が今回の敵である以上、自分から隠れ家をばらすような行いは避けたい黒江。まぁ、その努力も東が本気を出せば易々と無視できる程度の物なので、あまり意味はないと分かってはいるが……。


 だが、そんないろいろな事情を完全無視して、


「なんや、これは……」


 シシンは怒りに打ち震えていた。


「んあ? どうしたよシシン……」


「お前ら……こんな食事で、満足かよ?」


「いや、だって、これしか飯ないし……」


「俺は、嫌だね」


 戸惑った様子でシシンの怒りを収めようとする健吾に、シシンは爆発する!


「お前らは、せっかくちゃんとした飯食える状況にいるのにこんな劣悪な食事で満足する気かいな!? ふざけるんちゃうぞ!! ちゃんとした飯が食えるありがたみを、お前らは知らんからそんなことが!!」


「え、え!? な、なに!? なんでこいつこんなにキレてんの!?」


「ちょっと、食材買ってくる!! 二度とインスタントなんて食わへんと思えるほどの食事を、俺が作り上げたるわ!!」


「え!? ちょ、ちょっと、待ってください!! いま外に出たら東の視界に」


「家の中に居ようが関係ないんやろうが! いまさらそんな気ぃ使ってどないすんねん!!」


 まっとけやぁあああああああああ!! と、シシンは絶叫を上げると、財布が入った詰襟の上着を着込み、前のボタンを留めるのももどかしいといわんばかりに開けっ放しで寮から飛び出す。


 その速度、まさしく疾風のごとく。


 シシンはこの時、確かに一陣の風となっていた!!




…†…†…………†…†…




 残像さえ残しかねない勢いで寮を飛び出しどこかへ走っていくシシンを、寮に取り残された健吾たちは唖然とした顔で見送ることしかできなかった。


 そして、その数分後、


「なぁ、あいつ一体何があったの?」


「向うで飢饉でも起こったことがあるんだな?」


「いえ、天草(・・)は食糧関係は魔法でどうとでもできますから、ここ数百年間飢え死にを出したことはないんですが……」


 と、首をかしげながら突然のシシンの変貌をいぶかしんだ。


 彼らは知らない……。彼の父親が家事関係のスキルが壊滅的だったことを。おまけに、シシンを生んですぐに母親が死んでしまったためにその家事壊滅父親が、シシンが小学校に上がるまで料理を作っていたことを。そしてその料理が、毎日三回――つまり食事が始まるたびに魑魅魍魎を召喚して、彼の家を一種の魔界に変貌させてしまい、その魑魅魍魎のすべてを料理の匂いだけで消滅させていたことを……彼らは、知らない。




…†…†…………†…†…




「勢いよく出てきたんはいいんやけど……」


 寮を飛び出し食料調達にやってきたシシンは、ふと気が付くと、


「そういうたら、スーパーの場所きくん忘れとったな」


 絶賛プチ遭難をしていた。


 場所は寮から少々離れた閑静な住宅街。今の時間帯はもう通勤する人々の姿も消え、主婦か主夫が家の中で家事をする音程度しか聞こえてこない静かな一角だ。


 昨夜はここを通って寮に逃げたため、ある程度自分の居場所は分かってはいるのだが、


「目的地がわからんかったら、居場所わかってても意味ないと……」


 常識やな!! と、内心で自分をほめた後、


「はぁ、そんな常識勢いのままぶっちぎった俺はなんやねん……」


 あほやろ? と、自分で結論が出てしまいへこむシシン。その背中には何とも言えない哀愁が漂っている。


 とはいっても、落ち込んでいても助けが来るわけやないしな……。これからどないしよ……。と、シシンはとりあえずあたりを見廻してみる。


 居場所だけは分かる。そこら辺にある塀やポストに張り付けてある住所の札がこの場所を明確に教えてくれるのだから。


 問題なのはここからどうやってスーパーに行くか、


「考えるんやシシン。とりあえず俺には三つの手段が残されている」


1.近所の人に聞く――この年齢で迷子とか恥ずかしすぎて死ねるから却下。

2.アカシックレコードに接続する――燃え上がれ俺の中二力ぅ!! みられると恥ずかしすぎて死ねる自信があるので却下。

3.携帯電話でネット接続――日ノ本に来てから勉強漬けでそんなもの買っている余裕もなかったので不所持。ないものねだりしても意味ないので初めからスルー。

4.通りすがりのおまわりさんに聞く。


「ということで……。へい、そこの法律(ルール)構成員さん! 悪いんやけど道教えてくれへん?」


「いいけど、その前に補導するから名前と所属校を言ってね?」


「あれ? なんか俺、逮捕されてへん……」


 なんでや? 俺なんか悪いことしたっけ? と全く自覚もないまま首をかしげるシシン。そんなシシンに、たまたま近くを通りがかった桃色短髪の、法律(ルール)腕章をつけた、セーラー服少女はニコリとほほ笑みかけながら、あっさりとシシンに手錠をかけた。


 時刻は現在12:20分。通常の学生なら授業に大人しく参加している時間帯だった……。


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