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インモータル!!!!  作者: 小元 数乃
全知認識《ラプラス》
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プロローグ

えぇ……ご存知なかたもおられると思いますが作者が書いている作品『インモータルッ!』の再編モノです。


 以前書いたものよりかは面白くなっていると思うのですが……どうかなぁ……。


 色々無茶している作品ですので、周りの評価がすっごい不安です。

 モクモクと上がる灰色の煙。シャッターは無残に吹き飛び、がれきの山が入り口をふさいでいる銀行。それを見て騒然としている野次馬たちを、紺色の制服を着た警官たちが何とか抑えている。


 そんな現場に、けたたましい音を鳴らしながら止まったのは一台の警察専用車両。そこから降りてきたのは高校生ぐらいの少女だった。


「状況は?」


「最悪です……。なぜだかはわかりませんが、銀行が爆発しました」


 なにやってんのよ! と、内心でこの現場を預かっていた警察に罵倒を浴びせながら、少女は現場で特殊なスーツを着てライフルを持っていた特殊警察の報告を聞き、思わず眉をしかめる。


 ここは学園国家『日ノ本』の巨大学園都市のうちの一つ『第六学園都市』内のとある銀行。さっきまで銀行強盗&立てこもり事件現場だったところである。犯人グループは十二人の連携プレーにより瞬く間に銀行を占拠。銀行員十数名を含む、52人の人質を取り警察に逃走用の車を要求してきたのだ。


 そこで呼ばれたのが彼女――この学園国家《日ノ本》の治安を守る《クラス4》――戦略級超能力者が揃えられた学生による武装警察組織《法律ルール》だった。


 その彼女が到着する前に事件は終わってしまった。人質もろとも犯人が爆死するというとんでもない事態によって。


「どうして犯人は爆死なんか……。逃走用の車を要求していたのだったら、死ぬつもりはなかったんでしょうに」


「わかりません……。いま他の班が中に入って現場検証を行おうとしているところ……」


 なんでこんなことを? と、悔しそうに歯を食いしばる少女に、警察官が更なる状況説明をしようとしたときだった。


 銀行内部から、雷を纏った独鈷杵が飛び出してきて、銀行の出入り口をふさいでいた瓦礫を瞬時に吹き飛ばす。


「「なっ!?」」


 響く轟音と土煙。それを見ていたやじ馬たちは一瞬だけパニックに陥るが、土煙から一人の少年が出てきたことによって、そのパニックは一瞬で収まる。


それは、錫杖を持った学生服の少年。グリーンのブレザーの前をだらしなく開け、赤いネクタイを会社帰りのサラリーマンのようにだらしなく緩めつつもかろうじて、首に巻いているその少年は、あたりの様子を見て黒髪の頭をガリガリとかき、大きくため息をついた。


「ったく、おせーよバカどもが。何回他国の餓鬼どもに手柄横取りされたのかわかってんのか?」


少しはプロとしての自覚を持ちやがれ……。と、少年が吐き捨てた言葉にぐうの音も出ない、爆発が起こったことによって黒煙を上げる銀行を取り囲んでいた法治組織関係者たち。


 そんな彼の頭部に、


「こらっ!」


 遠慮ない平手打ちが決まり、少年は盛大に頭を下げることとなった。


「ちょ、何すんだお前!?」


「事件解決して早々こっちの警察の方々にケンカ売らない! ここはご苦労様って言ってねぎらっておくのがベストなの!! そっちのほうが、お互いにとっても波風のたたない外交術なんだから」


「少なくとも本人たちの前でそれ言っている時点で、もう波風立てないこと諦めてるよね? あとお前ら、コントしてる暇があるなら助けた人質だすの手伝えよ!?」


 そんな風に言い合いをしながら同じように爆炎から姿を現すのは、白い上着と紅いスカートが際立つ、黒の髪の毛を編み込みにして精いっぱいおしゃれしている女子高生と、白と黒の頑丈そうな制服を着た目元に格子状の入れ墨を入れている男子高校生。


 そして最後に出てきた白黒の男子高校生が肩を貸して連れ出してきたのが、先ほどまで人質に取られていた人たちの一人だと気付いた法治組織達は、慌てて自分たちの仕事を全うするために爆炎に向かって走り出す。


「あぁ、さっきまで極限状態にいたんだ。あんま手荒なまねはすんなよ」


「は、はい!!」


 リーダー格と思われる錫杖を持った少年からそう言われ、白黒の制服に身を包んだ男子高校生から人質だった人物を預かり、一人の警官が敬礼をする。


 そんな光景が展開されると同時に、続々と警察官たちによって運び出される人質たちや、気絶し縛り上げられた銀行強盗達を見て、少女はようやく安堵の息を漏らした。


「また魔法使い(かれら)ね……」


魔法使い(かれら)がこっちに来てからは助けられっぱなしですね。それに犯人もろとも死亡というのも我々の早とちりだったみたいで……」


 苦笑を浮かべて肩を竦める少女に、警察官は無線をとり、苦笑を返しながらそう言った。


「ほんと……彼らももう法律(ルール)に入ればいいのに」


「それはだめよ……だって彼らは」


 少女はそこで言葉を切り野次馬の中に視線を走らせる。そして有象無象の野次馬の中から、ボロボロになった着流しに閉口しながら人ごみの中に消えていく、長い銀髪の少年を見つけた。


「留学生なんだもの」


 まったく、また調書に不備があるって怒られるじゃない。と、「自分は無関係ですよ?」と全身でウソの主張をしながら人ごみに紛れていく少年を睨みつける。そんな視線にさらされたにもかかわらず、少年はあくまでマイペースにガリガリと頭をかきながら、輪ゴムを使って腰まである長髪を肩あたりでまとめ直す。そしてようやく少女の視線に気づいたのか、事件現場を振り向き、


『あとはまかせんで~』


と、口パクで言ったあと、へらへら笑いながら人ごみの中に消えた。そんな少年の後ろ姿に、少女は小さくため息を漏らす。


 学園国家日ノ本――現在この国には、50年ほど前戦争をしていた隣国《天草》より、終戦50周年記念と、互いの国の友好の証として6人の留学生が派遣されていた。


 その六人すべてが、ある例外を除き――魔法使いだった。




…†…†…………†…†…




『昨日起きた銀行立てこもり事件を解決したのは、またもあの《魔法大陸》天草からやってきた勇敢な留学生の方々でした。これで彼ら留学してきてから解決した事件は20件を超えましたね』


『いや~。まったく頼りになる子たちですよ。まさしく《魔法使い》といった感じですね。今のところ彼らはいずれ故郷に帰る人間ということで《法律(ルール)》入所は見送られていますが、次の国家間交渉で彼らの《法律(ルール)》入りが許可されるかもしれないという噂もありますし……今後の彼らの活躍に期待したいですね!!』


 むやみやたらにハイテンションな声で、留学生を賛美するテレビ画面内のナレーターたち。そんな、彼らを三白眼で睨みながら松壊シシンはリモコンを操作し、テレビの電源を切った。


 こいつら、俺らが留学してきたときには『魔法なんて――超能力と比べれば出力に劣る欠陥だらけの異能ですよ』とか言っとったのに、えらい掌返しよったな~。と、思いつつ彼はもしゃもしゃと咀嚼していた朝食を飲み込み、歯ブラシ片手に洗面所へ特攻する。


 六つの魔法と一つの奇跡が支配する《魔法大陸》天草から、六つの都市と一つの財閥が支配する《学園国家》日ノ本にシシンが留学してから早一週間がたった。今のところ彼は彼の友人たちが遭遇したような、ブラウン管に映るような非日常的な事件に遭遇したことはなく平和な生活を送っていた。表向きには……であるが。


 別に目立つんはかまわへんけど、テレビとかに出るんはちょっとな……うちのおやじもそのせいで結構大変やったし。と、シシンは自分の目立つ容姿を洗面所の鏡に映しため息をつく。


 白銀の長髪に、血のように赤い瞳。肌は抜けるような……というか白いペンキでもぶっかけられたんじゃねーの? といわんばかりに白く、ともすれば病的な印象を受けてしまう。日ノ本ではアルビノと呼ばれる色素異常だそうだ。天草にいたころは『小麦色の肌を俺にくれ~』と日光浴を一日中していたのだが、結局肌がひりひりしただけで色が変わることはついぞなかった。おまけに、それを聞いた彼の主治医が、ものすごい勢いで怒ってきたのでもう二度とやらないことを心に誓っている。


 いや、あれはガチで怖かったな……背後に阿修羅が控えとったし。と、あの時の医者の顔を思い出しブルリと震えるシシン。


「まったく……。うちの一族はホンマ難儀な見た目しとんで~。こんな容姿を授けた親父を呪い殺したろか?」


 まぁ、そんなんできたら苦労し~ひんけど。呪殺は親父の得意分野やし、返されんのがオチやろうな~。と、歯磨きを終え、近くにおいてあったコップを手に取り、水を注水。口にふくみ、数秒ゆすいだ後、吐きだす。


 そんな朝の日常風景を演出しつつ、シシンは腰まで届く長い銀髪を肩のあたりでまとめながら登校に必要なものが入れられているカバンをとりに、リビングへと戻る。


髪をまとめる道具は輪ゴム。以前それを見ていた留学生の友人に『髪伸ばしているんだったら、おしゃれぐらい気を使えよ』と呆れられたが、べつにシシンは好きで髪を伸ばしているわけではない。彼自身もいいかげん鬱陶しいこの髪を切りたいのだが、彼の父親は自身も長い髪を持っているせいかあくまで長髪がかっこいいとでも思っているようで、絶対シシンの髪をこの歳の男子らしいショートにすることを許してくれない。


おかげでシシンはやりたくもない輪ゴム整髪を毎朝強いられているというわけだ。


まったく、理不尽やで。とシシンは『向うでも髪切ったら呪い殺す』と言ってきた父親の姿を思い出し、思わず背筋を震わせる。


 その時、シシンは自身の視界の端で何かが動くのをとらえ、日ごろの癖でそちらに自然と視線をやる。


何のことはない、そこにあったのはただの鏡。動いたのはそこに映ったシシンだ。着ている服は制服。一般的な黒の詰襟だ。


シシンは悪目立ちして嫌いな自分の肌の色とは真逆である黒が大すきなので、この国では野暮ったいといわれ絶滅しつつあるこの制服に喜んで袖を通している。


 ほんま、この制服に関してだけはこの学園都市に感謝セナアカンな。昨日ほかの奴らの制服も見せてもろたけど、あんな派手派手しい制服よう着れるわ。と、内心で、昨日久しぶりに合流した、強盗犯相手に無双しまくっていた留学生の友人たちの姿を思い描きながら、シシンは小さく失笑を浮かべつつ、リビングに置いてあった鞄を回収。


 さっさと玄関へと向かった。


「ほな、そろそろ時間やし……いってくるわ~」


 まあ、言うても誰もおらへんねんけど。と、一人さびしくつぶやきながらシシンは靴を履き、玄関に立てかけてあった()を腰にさし、部屋を飛び出す。この国では超能力という凶器を誰もが携帯している状態なので、護身用に武器を持つことが許可されていたりするが――たいていの人間が武装をするなら拳銃を選択する。刀を持つシシンはかなりの異端だといってもいいだろう。


 だが、そんな異端もなんのその。シシンは元気よく部屋を飛び出しエレベーターへ向かってダッシュ。新たな学校生活に胸を躍らせながら、新生活の第一歩を踏み出し、






「……………………」


その数秒後、カギをかけ忘れていたことを思い出しちょっとだけ恥ずかしそうにしながら部屋の前へと戻ってきた。


本日の日時は5月10日。一週間の入学研修を終え、松壊シシンは初めて、高校へと登校する。


ちなみに、このシリーズは最後まで書きあがっていますので、一日一回更新で一気にあげます。

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