8.
全校集会は
私にとって素敵な時間
隣のクラスの、大好きな君の
隣に座ることができるから
「寒いし、めんどくさいよね」
防寒具を抱えて
体育館へ向かう間のささいな会話に軽くうなずくけど
私はそんなこと言えない
うるさいくらい鳴る体からの音が
届いてしまわないか心配で
でも、会いたくて
ゆっくり歩くんだ
ざわざわした体育館もようやく落ち着いて
全校集会がはじまる
体育座りで、膝にブランケットをかけて
小さく縮こまる私の隣には
君がいる
目が合ったこともなくて
話したこともなくて
きっと、君は私の事なんて知らなくて
でも、私は
はじめて体育館で隣に座ったときから
こんなにも胸がぎゅうぎゅうするんだ
「では、校長先生の挨拶」
ひんやりした空気と先生の長い話で
周りの人の頭がだんだん重そうになっても
私は目が覚めたままで
ゆっくり、ゆっくり
そーっと、君を見る
一瞬、どきりとした
君はまぶたを閉じて
あぐらをかいたまま寝てしまっていたから
まつげと前髪が一緒に揺れてる
かっこいい
もう少し、君に近づけたなら
そんな気持ちが頭より先に動いて
またそーっと
指先を君の身体を支えてる腕の先の
長い指先に近づける
ちょっと、ちょっとでいいから
バチッ
想定外の静電気に
「ひぁっ」
自分の声と
「うわっ」
君の声が重なる
目線も、重なる
はじめて、重なる
「あ、あ・・・」
どうしよう
声が出ない
目線も外せない
どうしよう
寒さなんて感じない
きっと、顔が真っ赤なんだ
恥ずかしい
「ごめん、ね」
と目の前で笑う君は
柔らかく私に言ってくれた
私の気持ちが先走りした所為なのに
「い、いえ」
やっと、顔が動いて、前を向く
なんだかもう
自分が分からなくて
とりあえず、冷たい空気を
すーっと吸って
ゆっくり吐いた
そして、電気が走った指先を
そっとなでる
*伝わる電流