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12.教典は真実を語る(1)

私が眠れない時にすること、それは、読書に限る。

これは趣味ではなく、完全なる仕事だ。特に分断された魂について調べなければならない今、ますます書物を読む時間が増えた。後で蔵書庫にでも行って書物を探す事にしよう。

アカリは私のベッドで静かに寝息を立てていた。その寝顔は安らかである。きっと今日の厨房手伝いが余程楽しかったのであろう。私は少し剥がれた掛け布団をかけ直すと、再び机に戻った。

魂に関する書物は私の所有している中でたったの二冊しかなく、おまけに大した情報も無い。抽象的な内容ばかりだ。

後回しにしようとしていた蔵書庫行きを今する事に決め、部屋に厳重な結界を張ってから暗い廊下に出た。




真夜中で誰もいない筈なのに、何故か廊下は妙に騒がしかった。

「部屋の用意は出来たか?」

「すっ、すみません、まだです」

「出来るだけ早く終わらせろ、もうすぐ使用人長がいらっしゃる」

「はいっ」

そんなやり取りをしている二人の男。指示をしていた方はひげ面で、された方は童顔の青年だった。上司と部下、と言った言葉がお似合いな二人は、せかせかと歩いていた。

「すみません、何でこんなに騒がしいのですか?」

私が問うと、ひげ面の男は一気に顔を引き締める。

「ええ、サーマルジェス公爵が一ヶ月先の国際会議に参加するため、本日から宮殿に滞在されるのです」

国際会議・・・・ここルーナ=レア帝国を含んだ主要五ケ国で毎年行われていて、回ごとに話し合いのテーマが決められている。

余談ではあるが、この国は周辺国と比べて環境水準が非常に高い。建国当時から山や森の多い土地でそれを守りつづけた結果、先進国であるにも関わらず景観が美しいのだ。

今年の会議では日々深刻化している森林減少問題について話し合われる。故に会場はここ、ルーナ=レア帝国宮殿になったのだ。

サーマルジェス公爵ーーーーーこれはノアの事であるーーーーが会議に参加するのも頷ける。彼の治める地方は特に環境に関する条例が充実しているのだ。

「そうですか・・・ではくれぐれも、無礼のないように」

「はい」

私は二人に軽く頭を下げると、足早に蔵書庫へと向かった。




蔵書庫の中は思ったより暗く、静寂が闇を支配していた。魔術で四方を照らすと、私の周りだけがぼんやりと光る。

私が真っ先に向かったのは、禁書の棚だった。禁書扱いされるのは必ずしも闇の魔術や悪魔の召喚関連と言う訳ではなく、要するに・・・・あまり表沙汰には出来ない事が書かれた書物もある。

例えば、過去の魔術師の犯罪録。これが表沙汰になってしまえば、魔術排斥運動が国中で起こるだろう。

禁書棚とは、政治問題の隠れ場所なのだ。

・・・・とは言え今日私が来た目的はそういった書物では無い。私は纏っていた光を消し、(私にとっては)簡単な術を構成する。

「・・・・真実を語りし者よ、我の元へ」

勿論呪文は簡略化。唱えてすぐに、今自分が必要としている知識を頭の中に漠然と思い浮かべる。

・・・・すると一冊の本が棚を飛び出して私の目の前に落ちた。

見るからに古い茶色の革表紙・・・・・再び光をともして見ると、「真ヤングレラ教典」と掠れた文字で書かれていた。

真ヤングレラ教・・・・・確か二十年前に同時多発テロを起こしたカルト宗教。テロの後、教祖は即刻死刑だったようだ。

その宗教が・・・・真実を説いている、と言うのだろうか?私は半信半疑で古びた教典のページをめくった。


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