表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/30

10.宮廷魔術師新旧対決(2)

魔術決闘のルールは、たったの二つしかない。

一つは、相手を殺してはならない。

もう一つは、相手の体に後遺症を残してはならない、と言うこと。

要するに、それ以外何でもして構わない、と言うことだ。

例え、建物を半壊状態にしても。




「いけーっ!」

「ファイトーッ!!!」

熱狂的な歓声が上がる。一方で私は、相手から来る光線を結界を上手く使ってかわしている。

「我、七千の光に命ずる。・・・・一体となり、標的を惑わせよ!」

師が呪文を唱えている。彼が最も得意とする、幻覚魔法。

呪文が終わってからまず見えたのは・・・・赤いドレスを着た若い女だった。私は結界を張る前に、その幻覚に惑わされてしまった。

白い肌は雪の様で、ほんのりと赤い唇をしたその女は、当然肝心な所も大きい。彼女はこちらへ投げキッスをしてきた。

・・・・その動作は余りにも妖艶で、私の体が凍りついた様に動かなくなる。

その時。

「とりゃああああ!」

気合いの入った、叫び声。そしてそれが聞こえたのと同時に、私の頬に強烈なキックがお見舞いされた。当然ながら頬はヒリヒリと痛む。私は右手で蹴られた頬を押さえながら、左手でより強い結界を作り出した。

「・・・・武術で決闘するなんて、一回も聞いておりませんが、師よ」

そうは言って見たものの、これは単なる言い訳に過ぎない。

・・・・魔術だけに頼らず、頭を使い、場合に寄っては武術も使用する。これが、ローレンス=アルバの「戦い方」である。

私には魔術を使って結界を張ったり攻撃することができても、残念ながら武術には長けていない。それに、幻覚に惑わされてしまう心の弱さ、これも私が彼に勝つ事が出来ない理由だった。

・・・・やはり私は、師には敵わないのだろうか。

・・・・「最後のテストだと思え」。

弱気になった私の頭の中に、囁くように聞こえてくる、あの言葉。

まだ、負けていられない。私は頬から右手を離し、パチンと一つ指を鳴らした。途端に、金色の光線が、私の手の平から弾け飛ぶ。すると・・・・その光が師の腕をかすり、彼を奥の壁まで突き飛ばす。周りにいた女性観客が、きゃっと小さな悲鳴をあげた。

「・・・・わしと違って公共物を大切にするのじゃな、サレル。お年寄りよりも」

彼は背中をさすりながら苦笑して答えた。

「貴方が壊しても私が壊しても、責任を負うのは私でしょう」

私は鼻で笑うと再び魔術を行使する為に指を鳴らす。

「ふん。・・・・わしはこれからが、本気じゃ」

彼はそう呟き、バキバキと十指を鳴らした。一体何の戦いなのか、既に分からなくなっている事については何も言わない。




その後も彼は武術と魔術で攻防を繰り返していた。私は何種類もの魔術を同時に行使し、それをかわしていく。時には相手の隙を突いて攻撃をするが、それでもなかなか決着がつかない。

私達の激しい攻防に、歓声はますます大きくなり、ガラスの間が熱気に包まれる。

「おおーっ」

「凄い」

「負けるな!!!」

ここが宮廷であると言うことが分からなくなる程に、各々が叫んでいる。

ところが。

・・・・ピキッ。

亀裂の入るような、軋む様にも聞こえる、音。

「今、何か音しませんでした・・・・?」

「そうじゃな。一体何・・・・」

師の言葉を最後まで聞かずに、亀裂はピキピキと音を立てながら、ガラスの間の全体に広がった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ