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魔法使いと少女~ある魔術師の日記~  作者: 秋川 青寿
異界の少女と宮廷の面々
2/30

1.事件発生(1)

本編スタートです

心臓が止まるかと思った。


さかのぼる事三時間前、私は夕食を取るために第三食堂へと向かった。

王族や賓客は応接間や客室、大広間で食事をとるが、使用人は第一から第五食堂に分かれて食事を取る。宮廷魔術師と言う身分でも、使用人は使用人なのだ。

食堂に入ると既に何人かのメイドが休憩していた。メイド達は談笑しながら食事をしている。バイキング形式になっているため、入口近くでは掃除婦らしき女性がパンとスープを持っておかずを選んでいた。彼女は大食いで有名だ。全使用人大食いコンテストでの優勝経験三回。

ちなみに私は・・・・・・ここにきてから八年間ずっと最下位である。

私はスープにパン一個、そしてゼリーをとる。

「サレル・・・・・・あんたねぇ、どんだけ胃袋ちっちゃいんだい」

「宇宙の胃袋を持つ貴女に言われたくありませんよ、マリー」

「ふふ、あたしにとっちゃ褒め言葉さ。ほら、あたしのステーキ分けてやるよ。食いな」

そういって彼女、マリーが差し出した皿に乗っていたのは牛のステーキ。少し小振りで、たれがかけてある。

「生憎、今は胃袋の調子がよくないので」

「・・・あんた、胃が弱いのかい?」

「少々。・・・なので遠慮します」そう言って熱々のステーキをマリーに手渡す。 「そうかい・・・ちゃんと取ったモンは食べるんだよ」

「言われなくても食べますよ」


彼女と別れ、広く装飾品の少ない食堂の奥の座席に座り、食事を取りはじめる。パンもスープも温かい。ゼリーは・・・何だろう、少し固い。

「それはゼリーじゃなくてナタデココですよ。サレル様」

私の感想に答えるように話し掛けてきたのは、先程まで談笑していたメイドの一人だ。

「なたでここ?」

「はい、なんか異世界で流行ってるらしいです。知ってます?ロートンの『行け異世界』」

「一応、シリーズ全部読みました」

荒唐無稽で失望した、とは言わない。

「ええっ!?読んだんですか!?私も読んだんです!面白かったですよね?特に主人公と王子がお互いつんつんしながらデートしたり、クマ太とらい恩が・・・・」


彼女の一時間に及ぶ小話が終わってようやく部屋に戻る。いかんせん研究がはかどらない。今日は三日ぶりに寝ようか、いや、多少無理をすればいい結果が得られるかも、なんてことを考えていると、もう部屋の前。

・・・・何か物音がする。ゴソゴソと、何かがうごめく音。侵入者か?いや私の部屋に限ってそんな事は無い。雑音が空耳であることを願って、重いドアを開けた。何も変わらない本の山。


・・・・・・そして、部屋の奥に、漆黒の長い髪を持つ少女が横たわっていた。


「・・・・」

漆黒の髪。そんな髪の色はこの世界には存在しないはずだ。私やこの国の半数以上の人間が持つ銀髪碧眼や、紫髪紫眼、金髪碧眼、緑髪緑眼、青髪青眼位しか私は見た事がない。もしかしたら、遠方の民族は黒髪黒眼なのかもしれない・・・そこまで考えてから、本の山を越えて彼女に近づいた。

少女は明らかに幼児体型で、小さな手足が彼女の幼さをますます強調していた。女であるにも関わらず、ズボンを履いている。

まさか、異世界なんてものが本当にあるというのだろうか?この少女にきけば、何か分かるかも知れない・・・眠っているようなので、起こしてみることにした。私はかなりの数の言語に精通しているので、話せるだろう。

そう思った私は、彼女に、“目覚めの魔法“をかけた。


間もなく、少女は幼さを感じさせる大きな眼を開けた。

案の定驚いて辺りを見回す。私が声をかけようとしたその瞬間。



「〜〜〜〜〜!」

なんと言う事だ。

私が学んだ言葉はどれも彼女の言葉にあてはまらなかった。


お付き合い頂きありがとうございます。

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