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6.お祭り騒ぎで暴走中(1)

この章は、サレルのうっかりな一面が見え見えです。

「・・・・?」

私の頭の上に疑問符が浮かぶ。ひとまず状況を整理する事にしよう。

ここは自室。でも椅子に座っている訳でも、ベッドの上で横になっている訳でも無い・・・・恐らく昨夜ベッドに行く途中で行き倒れて床でそのまま寝てしまったのだろう。

確か四日も寝ていなかったはずだ。無自覚の疲労には気をつけなければと反省させられる。

重い身体を起こして立ち上がると、関節がズキズキと痛んだ。

ベッドの方に眼をやると、私のベッドでアカリがすやすやと眠っていた。僅かに寝息を立てているその寝顔は、とても穏やかだ。


「おはようございますぅ〜」

扉の向こうから気の抜けた声が聞こえた。扉を開けてみると、茶髪のメイドが立っている。

「ああサラですか。おはようございます」

彼女は普段無造作に結んでいた髪を丁寧に結んでいた。

「というかサレル様、あと一時間で式典始まりますよ?」

「あっ・・・!」

今日は式典、挨拶がある、だから正装に着替えなければならない・・・全ての言葉が繋がった瞬間、私は羞恥心を何処かに投げ捨てた。

「アカリ!もう朝です!今日は式典です!早く起きて下さい!!!」

「眠〜い」

「本当に早く!!」

私は部屋をせわしなく動き、落ち着かない様子で準備を始めた。

あのサラに笑われた事は、終生忘れないだろう。



「サレル、黒っ。黒すぎる。悪い人みたい」

身支度を終えてアカリと再会すると、いきなりこう言われた。

今の私の格好は一言で言うと「黒ずくめ」。黒い服の上に黒いローブを羽織り、靴までも黒く、さらに手には黒い手袋と言う出で立ち。黒、黒、黒・・・しつこい位に、黒一色。

一方でアカリは、青空のような明るいブルーのドレスに身を包んでいた。長い黒髪は高い位置で結われている。・・・・一体誰が彼女の衣装を選んだんだろうか?


「やあサレル君。お元気?」

通りすがりの貴公子が声をかけてくる。

皇帝側近のローラン・・・彼は容姿端麗で仕草も上品なため、貴族の娘達が彼のハートを射止めようと躍起になっているが、彼は一切振り向かない。なぜなら・・・彼は幼女好きだからである。

「あっ、ローランさんだ!」

「おお、なんて美しい・・・私のレディー」

一瞬襲う吐き気。この言葉がお世辞で無いのだから驚きだ。

「ローラン殿・・・仕事はどうされたのですか」

「陛下の側にはカインがいるし、

少し離れたとこでシーラが目を光らせてる。だから私は別の仕事があるんだ」

「別の仕事?」

ここでウィンク一つ。

「そ。何とこのローラン、可憐な美少女の付添人に任命されちゃいましたっ!!」

「・・・・・」

自らの主である皇帝よりも、ある日突然現れた少女に付きたいなど、普通は思わないだろう、普通は。

「ちょ、何でリアクションしてくれないんだ君は!アカリちゃんからも何か言ってくれよ!」

彼は分からないのだろうか・・・彼女が弱感引き気味であることに。

「あっ・・・そ、その、嬉しいです」

「だろーっ!?ほらーー!」

やっぱり気づいていない。

「はあ・・・・でも、何故貴方が?」

「だってさ〜、サレル君式典ん時忙しいでしょー、それに陛下がちょっと話が、というかデートを」

「陛下が、ですか?」

「うん。陛下が君とラブラブデートして、それからアカリちゃんと私でもラブラブ町巡り!」

私とアカリが引いていると、拡声器(私開発)から低い声が廊下に響き渡る。

「式典が後5分で挙行されます。外にいらっしゃる方は至急、ガラスの間にお集まり下さい」

よく通る落ち着いた声。カインだ。

「じゃあそろそろ行かなきゃね」

そう言ってローランはアカリの小さな手を取った。ひざまずいてアカリに目線を合わせる姿が様になっている。

「では、よろしくお願いします」

「りょーかい」

彼はひらひらと手を振ると私に背を向けて去って行った。アカリは一瞬振り向いて私を見た。水色のドレスがふわりと膨らむ。


純粋な少女とロリコン貴公子の行く先を心配しながら、私もガラスの間に向かって歩いて行った。

しばらくアカリの出番はなさそうです。

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