表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/30

5.建国記念で大忙し(1)

建国記念日編スタートです。

私達は宮殿の外に出ることにした。先程より少し雲行きが怪しい。

「ねえ、建国記念の日って何するの?」

ふとアカリがこんな質問をしてきた。

「皇族や貴族達が集まって式典を行います。それからは宮殿や都のあちこちで祭りが行われます。貴族達だけではなく、その日だけは平民も混じって良いため、都は大賑わいです。夜は晩餐会と仮面舞踏会。ざっと言うと、こんな感じです」

そこまで言うと、アカリはぱっと顔を輝かせた。

「舞踏会?って事は、サレルも踊るの?」

「それは・・・」

舞踏会があるたびに壁の華を決め込んでいるなんて、言えない。

「私は一介の魔術師ですから」

またごまかした。

「なぁんだ・・・あのおねーさんと一緒に踊るのかなぁって、ちょっと楽しみにしてたのに・・」

あのおねーさんとは、十中八九皇帝の事だ。実は皇帝も壁の華を決め込んでいるなんて、もっと言えない。しかも理由が「面倒臭いから」だとか舞踏会の最中に抜け出して夜の散歩をしているとか、そのたびに付き合わされているとか、・・・・言えない。

「どしたの?」

アカリが不思議そうに私の眼を覗き込む。黒の大きな瞳で見つめられ、私は我に帰った。

「いえ何も。というかおねーさんではなく皇帝陛下ですよ」

彼女はえっ、と目を見開いた。・・・・無理もない。ルーナ=レアの皇族は気さくで自由奔放だ。だからこそ、国民の人気を得て、平和な大国を代々築き上げているのだ。

「あの人、偉い人だったんだねー。・・・・あたしもなんか準備手伝いたいなぁ。何かやることある?」

思わず私は首を傾げる。

確かに・・・・掃除婦達は宮殿の外でも中でもせわしなく動いているし、今日の夕暮れの賓客到着に備えてメイドやコックも忙しそうだ。しかし、ここに来たばかりの彼女には何もさせない方が得策だろう。でも私も仕事がある。誰かに面倒を見てもらわなければならない。やはりマリーか・・・・。



「やあ、若き宮廷魔術師殿。可愛らしい少女を連れて、何処へお出かけかい?」

甘ったるい男の声が、聞こえる。

目を細めて向こうを見ると、長い銀髪を後ろで結った色男がいた。紫色の服を着ている。

「随分と早いご到着で。ノア殿」

彼・・・ノアは都から少し離れた地方都市を治める上流貴族で、若いながらも地方の政治を安定させている、と有名だ。

彼は薄笑いを浮かべると私の腕を馴れ馴れしく触る。

「君と話がしたくてね。後で僕の部屋に来てもらえるかい?仕事が終わってからで良いからさ。君だけで」

珍しい・・・・貴族に呼ばれる事などほとんど無いのだ。ましてやノアなど、話すことすら少ない。何か重要な事でもあるのだろうか?

「分かりました。日没前にお伺いいたします」

「わかった。ではまた後ほど」

彼は軽く手を振ると、軽やかな足取りで去って行った。




かなり時間が押してしまったので、私は仕事に取り掛かる・・・・前にアカリをマリーの所に預ける事にした。

「良いけど・・・・アカリ、床磨きを手伝ってくれないかい?」

マリーを捕まえて頼んだ所、こう返事が帰ってきた。

「やるっ!」

アカリが威勢よく答えるとマリーは微笑み、近くにいた若い掃除婦にアカリを預けた。

「サレル、アンタは研究の虫だからね・・・・そういえば、ノア様に呼び出しを食らったって本当かい?」

「はい。何の用かはわかりませんが」

マリーは少し顔をしかめた。

「あの方は見かけによらず疑い深いらしいから、アカリの事を何か言ってくるかもしんないけど、アンタがあの子を信じてるんなら、それだけを言えばいいから」

「心得ています」

私は彼女の眼を見つめて笑った。

すると・・・。

「ちょっと!!アタシのサレルちゃんに何してんのよ!!!」

・・・・出た。

側近トリオの一人・・・シーラがものすごい勢いでこちらへ向かって走ってくる。これまた厄介だ。

「では失礼」

そもそも皇帝の側近は暇なのだろうか、というか皇帝は一体何故側近を遊ばせているのか・・・・私は皇帝を心の中で恨みながら、廊下を全速力で駆け抜けた。

逃げ足(だけ)は、早いはずだ。

側近達は暇なんです(笑)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ