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魔法使いと少女~ある魔術師の日記~  作者: 秋川 青寿
異界の少女と宮廷の面々
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4.はじめてのおおそうじ(1)

四章開始です。

この章は割と短いです。

「あたし・・・どこで寝ればいいの?」部屋に入ってきたやいなや、アカリはぼそっと呟いた。

無理も無い。何しろ私の部屋は・・・・床が見えないのだ。本や水晶玉が所狭しと並び、どこに危険物が隠れているかわかったものでは無い。必要な物だから、捨てようにも捨てられないのだ。

「ルーナ=レアの宮廷魔術師の部屋はゴミ屋敷状態」・・・・この噂が隣の国まで伝わっていると言うから驚きだ。無理も無いが。

「えーっと・・・」

「掃除するなら・・・あたし、手伝うよ」

アカリが思案顔で提案する。私は少しためらった。彼女に危険物を触らせる訳にはいかない・・・・あともう一つ。宮廷魔術師と言う身分だから、「禁書」の類の所有も許される私は、健全な人間には見せられないような絵(例えば男が金縛りにあって悶え苦しんでいる絵)が載っている本も持っている。趣味、という訳では無いが、研究に必要だから持っている。

そんなものをアカリがもし見てしまったら・・・私のイメージがダウン、いや、教育上良くないだろう。

「いや、一人でやりますから貴女は・・・・」

言いかけた所でアカリは首を振る。

「無理だよ〜、だってあのおねーさんにまで部屋汚いって言われてたじゃん。それにあたし、掃除好きなんだ!」

笑顔で言って見せる。最初私には見せてくれなかった笑顔。口からため息が漏れる。せっかく彼女から言ってくれているのだから、気持ちには答えた方がいいだろう。

「分かりましたよ・・・・でも本を開いたり、見るからに怪しい物には触らないようにして下さいね」

「やったー!じゃあ早速やろ!」


こうして、初めての大掃除が始まった。

ところが。



「ギャーなにこれーーー!」

アカリが絶叫する。

「何ですか貴女はそんな大声出して・・・」

「だってだってぇぇ!なんかトカゲが本にいっぱい!!!!」

「開くなって言ったでしょう・・・」

「そう言われたら開きたくなるじゃん!」

アカリは私の注意を全然聞いていなかった。他にも「なんか緑色の液体がー!」とか「服でかいねー」とかいろいろ言ってくる。

「それはローブだからですよ」

と答えるのも億劫だ。

そんな調子で掃除をしている。魔術を使えば一発なのだろうが・・・日常生活は魔術に頼らない、と言う師の方針に倣って基本的に魔術を使わないようにしているのだ。

それに、少しずつではあるが部屋の中が少しずつ整理されていた。ごちゃごちゃになっていた本は綺麗に並び、あちこちに転がっていた瓶は棚の中に収まる。



「サレルって、兄弟とかいるの?」

大分部屋が整頓されて来た時に、アカリが唐突に質問してきた。

「弟がいますよ・・・私の事は、もう覚えていないでしょうけど」

「ふぅーん」

彼女は私の心情を察したのか、これ以上は何も言わなかった。

「貴女は?」

暗い空気を払拭する為に、彼女に聞く。

「珠紀って言うお姉ちゃんがいたんだけど、事故で死んじゃったんだ」

アカリは真顔で答えた。・・・・なるほど。彼女も姉を失って、私の気持ちが分かるから、何も言わなかっのか。大切な人を失った悲しみ。私は永遠に会えないと言うわけでは無いけれど、小さいうちに大切な人と引き離された身としては・・・気持ちは、わかっているつもりだ。

彼女は、かつての自分と同じ。改めて、そう思った。


「昼食でも・・食べに行きませんか?」

「うん!」

彼女は、再び笑った。

お付き合い頂きありがとうございます。

四章は次回までです。

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