第91話 折れない理由
―王都外縁・荒野―
風が通り抜ける。
砂がゆっくりと落ちる。
距離が開く。
ほんのわずか。
だが。
それは今までになかった“間”。
―カイン―
「……ここまでだな」
小さく呟く。
自分の状態を。
正確に理解している。
―認識―
遅れている。
ズレている。
そして。
そのズレは戻らない。
―結論―
勝てない。
それは。
もう明確だった。
―リリア―
「……」
息を呑む。
カイン自身が。
認めた。
―ゼル―
「……そうか」
短く返す。
興味はない。
ただ。
終わらせるだけ。
―沈黙―
数秒。
動かない。
だが。
終わっていない。
―カイン―
「……それでもだ」
静かに言う。
顔を上げる。
視線は。
変わっていない。
―リリア―
「……え……?」
思わず声が漏れる。
勝てないと分かって。
まだ。
立つのか。
―カイン―
「理由は単純だ」
淡々と。
感情はない。
「終わるまで戦う」
―意味―
勝つためではない。
逃げるためでもない。
ただ。
“終わるまで”。
―本質―
それが。
カインという存在。
―ゼル―
「……そうか」
短く返す。
理解した。
それだけ。
―踏み込み―
カインが動く。
速い。
だが。
もう最速ではない。
―衝突―
拳がぶつかる。
――静止
ゼルの一撃。
完全に入る。
―結果―
深い。
重い。
だが。
―カイン―
崩れない。
踏みとどまる。
無理やり。
体を前に出す。
―反撃―
拳を振る。
ズレている。
だが。
それでも。
当てる。
―相打ち―
衝撃が走る。
両者が揺れる。
―リリア―
「……なんで……」
理解できない。
勝てないのに。
ここまで。
―カイン―
「……理由は要らない」
低く言う。
「戦うだけだ」
―締め―
勝てないと分かっても。
崩れない。
逃げない。
終わるまで立つ。
それが。
“強者”だった。




