第7話 崩れ始める英雄
―辺境都市・広場―
「……本当なのか?」
「いや、でも……」
「ガルド様が……そんな……」
ざわめきが広がる。
小さな違和感が、
確実に形になり始めていた。
―騎士団本部―
「誰が流した」
低い声。
ガルドが机を叩く。
「誰がこんなふざけた噂を流した!!」
「現在調査中です!」
「ですが、出所が特定できず――」
「無能が!!」
怒号。
「街中で広まってるだと!?」
「……はい」
「収まりません」
沈黙。
ガルドの拳が、震える。
「……ありえねぇ」
「俺は……俺は……」
「全部、自分で――」
言葉が詰まる。
―回想―
魔物の群れ。
その中心で戦っていたのは――
「任せろ、ガルド」
ゼルの背中。
「……っ」
―現在―
「……違う」
首を振る。
「違う……あれは……」
だが、
言葉が続かない。
―騎士たち―
「……なあ」
「お前、どう思う?」
「……正直」
「ありえなくはない」
「……おい」
「だってよ」
「ゼルってやつの話、聞いたことあるだろ」
「……」
沈黙。
―ガルド側―
「……何を話している」
静かな声。
「……っ!」
「ガルド様……!」
騎士たちが慌てて敬礼する。
「……今の話だ」
「何を言っていた」
「い、いえ……その……」
視線が逸れる。
それだけで、分かる。
「……そうか」
ガルドの目が、わずかに冷える。
「疑っているのか」
「ち、違います!」
「そんなことは――」
「……ならいい」
だが。
その場の空気は、変わっていた。
―ゼル側―
「順調ですね」
リリアが言う。
「疑念は一度生まれれば消えません」
「……ああ」
ゼルは静かに頷く。
「人間はな」
「信じるより」
「疑う方が早い」
淡々とした声。
「特に」
「自分より上の存在にはな」
―次の手―
「次はどうしますか」
リリアが問う。
ゼルは、少しだけ考える。
「……奪う」
「何を?」
「部下だ」
短い答え。
「信頼を削ったなら」
「次は、支えを奪う」
「……」
「一人ずつだ」
「静かに」
「確実に」
その目は冷たい。
―締め―
―ガルドの部屋―
「……チッ」
酒を叩きつける。
「……ふざけんな」
「俺は……」
「俺は、間違ってねぇ……!」
だが。
その声は、
どこか弱かった。




