第68話 完全な重ね
―王都外縁・荒野―
土煙が流れる。
ゼルが立つ。
呼吸は荒い。
だが。
動きは揺れない。
―ゼル―
「……入るようにはなった」
小さく呟く。
「だが」
「浅い」
現状の認識。
―リリア―
「……さっきよりは……」
「明らかに効いてます……!」
―ゼル―
「……ああ」
短く肯定する。
「だが」
「安定していない」
―問題点―
“乗せる力”。
それが。
毎回同じにならない。
強さにムラがある。
「……誤差がある」
―本質―
「形は再現できる」
「だが」
「中身がブレる」
―リリア―
「……そんなの……」
「どうやって揃えるんですか……?」
―答え―
「……揃える必要はない」
ゼルが言う。
「揃えるんじゃない」
「固定する」
―発想転換―
毎回同じにするのではない。
“同じ状態で打つ”。
―再戦―
カインが動く。
速い。
重い。
だが。
ゼルも動く。
―準備―
踏み込む。
速さ。
固定。
そして。
“内側”を固定する。
―一撃―
拳が入る。
ズレない。
逃がさない。
“内部まで届く”。
―結果―
カインの体が大きく揺れる。
三歩。
後退する。
今までで最大。
―リリア―
「……深い……!」
「今の……完全に……!」
―再現―
ゼルは止まらない。
二撃目。
三撃目。
同じ。
すべて同じ深さ。
―完全安定―
ブレがない。
ムラもない。
“完成直前”。
―カイン―
「……いい」
低く言う。
今までとは違う。
明確な圧。
「ここまで来たか」
―ゼル―
「……あと一段だ」
短く言う。
見えている。
最後の壁。
―締め―
通すだけでは足りない。
重ねるだけでも足りない。
それを。
何度でも同じにできた時。
それは。
“完全な力”になる。




