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第6話 狩りの開始

―辺境都市・裏通り―


「……ここか」


 ゼルは足を止める。


 昼間の喧騒とは違う、裏の顔。


 汚れた路地。


 酒と血の匂い。


「ガルドの影響下にある裏組織です」


 リリアが静かに言う。


「表では英雄」


「裏では、こういう連中も使っている」


「……そうか」


 興味はない。


 だが――


「使えるな」


―建物内―


「誰だてめぇ――」


 男が言いかける。


「契約しろ」


 それだけだった。


「……っ」


 空気が、歪む。


「な、なんだ……!?」


 膝が崩れる。


「身体が……!」


「選べ」


 ゼルの声が落ちる。


「従うか」


「死ぬか」


「……く、そ……」


 数秒の抵抗。


 だが――


「……従う……!」


「……契約、成立」


 静寂。


「命令だ」


「ガルドの情報をすべて出せ」


「……了解しました、主」


―数時間後―


「なるほど」


 ゼルは資料を見下ろす。


「動きは単純だ」


「定期的に巡回」


「討伐任務」


「民衆の支持」


「……典型的な“英雄”だな」


「ですが」


 リリアが言う。


「裏では」


「気に入らない者を排除」


「組織の掌握」


「……歪んでいます」


「元からだ」


 ゼルは淡々と返す。


―ゼルの思考―


 ガルド。


 あの男は単純だ。


 力。


 評価。


 立場。


 それがすべて。


「……壊しやすい」


―命令―


「まず外側から崩す」


「部下を奪え」


「……はい」


「噂を流せ」


「どんな内容を?」


「事実だ」


「ガルドの功績が」


「他人のものだったと」


 リリアの目がわずかに動く。


「……大胆ですね」


「違う」


「当然のことだ」


―数日後―


「なあ、聞いたか?」


「ガルドの戦果って……」


「昔、別のやつの功績らしいぞ」


「まさか」


「でも妙に辻褄合うんだよな……」


 噂が広がる。


 ゆっくりと。


 確実に。


―騎士団本部―


「……何だと?」


 ガルドが机を叩く。


「誰がそんなことを――!」


「分かりません!」


「ですが、街中で……」


「……っ」


 拳が震える。


「……潰す」


「噂の元を探し出せ」


「全員だ」


―ゼル側―


「動いたな」


「はい」


「予想通りです」


「……いい」


「もっとだ」


「全部崩す」


 静かな声。


「立場も」


「評価も」


「誇りも」


 一つずつ。


「最後に残るのは」


「何もない自分だけだ」


 ゼルは、わずかに目を細める。


「そこで、ようやく理解する」


「何をしたのかをな」


―締め―


「……待っていろ、ガルド」


 低く、呟く。


「すぐに壊してやる」

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