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第34話 揺らぐ天才

―魔導区画・上層監視塔―


「……再構築」


 リシェルが呟く。


「拘束式を再編成」


「次は崩されない」


 手が動く。


 魔法陣が再展開される。


 完璧な手順。


 ――のはずだった。


―遅れ―


「……遅い」


 小さく呟く。


 わずか。


 ほんのわずか。


 だが。


 確実に。


「……なぜだ」


―違和感―


 計算は正しい。


 構造も完璧。


 理論も破綻していない。


 それなのに。


「……間に合わない」


―原因―


「……思考が遅れている?」


 自分で気づく。


 初めて。


―ゼル―


 もうそこにいる。


 距離が違う。


 さっきまでとは。


 明らかに。


―圧迫―


「……来るな」


 リシェルが呟く。


 無意識に。


 初めての言葉。


―自己崩壊の始まり―


「……違う」


「来ても問題ない」


「対応できる」


 理論は正しい。


 だが。


「……できるはずだ」


 言葉が弱い。


―再構築失敗―


 魔法陣が展開される。


 だが。


 わずかにズレる。


「……精度が落ちている?」


 ありえない。


 だが現実。


―ゼル―


「……揺れているな」


 静かな声。


 リシェルの動きが止まる。


「……」


「理論は正しい」


「だが」


「お前が崩れている」


 核心。


―リシェル―


「……っ」


 息が詰まる。


 否定できない。


「……そんなことはない」


 だが。


 声が揺れる。


―確定―


「……そうか」


 ゼルが言う。


「なら試す」


 一歩踏み出す。


―限界―


 リシェルが後退する。


 一歩。


 また一歩。


「……ありえない」


「この距離は……」


「……おかしい」


―締め―


 理論は崩れていない。


 だが。


 “使う者”が揺れた瞬間。


 完璧は意味を失う。



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