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第3話 解放

―地下施設・中層―


「警報発令! 被験体ゼル・アークレイドが脱走!」


 赤い光が、廊下を染める。


「迎撃部隊を――」


「遅い」


 声が落ちる。


 次の瞬間。


 男の首が落ちた。


「……っ!?」


 血が噴き出す。


 ゼルは、その横を通り過ぎる。


「進め」


「はい、主」


 契約者たちが、迷いなく従う。


―別区画・指令室―


「何をしている!」


 怒号が飛ぶ。


「たかが一人だぞ!?」


「ですが……!」


「近づいた者から順に、動きが……!」


「恐怖で……!」


「制御不能です!」


「……ちっ」


 男が舌打ちする。


「王弟殿下に連絡しろ」


「例の個体が――」


「“失敗した”とな」


―ゼル側―


「前方、重装兵五名」


「排除しろ」


「了解」


 爆音。


 悲鳴は、すぐに消える。


 圧倒的だった。


 戦いですらない。


 ただの処理。


「……」


 ゼルは、止まらない。


 だがその奥で。


 あの感覚が、残っている。


「……消えた」


 胸の奥の空白。


 埋まらない何か。


「……誰だ」


 答えは出ない。


「……いい」


 切り捨てる。


「外に出る」


―最上層・出口前―


 巨大な扉。


 重装部隊が構えている。


「ここで止まれ!」


「これ以上進めば――」


「殺す」


 言葉を遮る。


 静かな宣告。


「……撃てぇ!!」


 矢と魔法が放たれる。


 だが――


「遅い」


 ゼルが一歩踏み出す。


 空気が歪む。


「契約しろ」


 兵士たちの動きが止まる。


「な……!」


「身体が……!」


「選べ」


 ゼルの声が落ちる。


「従うか」


「死ぬか」


「……くっ……!」


 数名が崩れ落ちる。


 残りは――


「……従います……!」


「……契約、成立」


 扉が開く。


 光が差し込む。


ー外


 眩しかった。


 十年ぶりの光。


 ゼルは、ゆっくりと目を細める。


「……これが」


 小さく呟く。


「外か」


 風が吹く。


 だがその顔に、感慨はない。


「……終わりだ」


 振り返る。


 地下施設。


 すべての始まり。


「燃やせ」


「はい、主」


 爆炎が上がる。


 施設が崩れ始める。


 悲鳴。


 崩壊。


 ゼルは、それを見ているだけだった。


「……まだ足りない」


 静かな声。


「奪われた分には、届かない」


 目が、細くなる。


「王弟」


 初めて、明確に口にする。


「貴族」


「研究者」


「裏切り者」


 一つずつ。


「――全員」


「殺す」


 風が吹く。


 炎が揺れる。


 ゼルは、歩き出す。


 奪い返すために。



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