第2話 消えた光
―地下施設・最下層―
「急げ」
ゼルは淡々と歩く。
「警備はどうなっている」
「第一通路、制圧済み」
看守が答える。
「第二通路は巡回が――」
「排除しろ」
「了解しました、主」
迷いはない。
ゼルの足は止まらない。
だが――
「……」
わずかに、眉が動く。
胸の奥に、また違和感。
「……まだか」
何かが引っかかる。
だが、それを言語化できない。
―別区画―
「……まだ、終わらないの?」
かすれた声。
ルナ・アークレイドは鎖に繋がれたまま、微かに笑う。
「本当に、しつこいね……」
「口を閉じろ」
研究員が冷たく言い放つ。
「お前は既に“不要個体”だ」
「……ああ、そっか」
ルナは目を閉じる。
「お兄ちゃんと同じで、壊れなかったから?」
「違う」
「再現性がない」
「価値がない」
「だから処分だ」
「……そっか」
納得したように、小さく頷く。
―ゼル側―
「前方、三名」
「排除しろ」
短い命令。
悲鳴が、すぐに消える。
「……進め」
だが。
「……なんだ」
まただ。
胸の奥が、ざわつく。
焦燥に似た感覚。
「……誰だ」
分からない。
―ルナ側―
「最後に言い残すことはあるか」
研究員が淡々と問う。
ルナは、ゆっくりと顔を上げる。
「……あるよ」
少しだけ、笑う。
「ねえ」
「お兄ちゃんは……まだ生きてる?」
一瞬の沈黙。
「……知らんな」
「そう」
ルナは、小さく息を吐く。
そして――
「よかった」
「……何?」
「だって」
優しい声。
「生きてるなら、それでいい」
―ゼル側―
「……っ」
足が、止まる。
「……なんだ、今のは」
心臓が強く脈打つ。
理由のない焦り。
―ルナ側―
「処理しろ」
剣が持ち上がる。
「……ねえ、お兄ちゃん」
ルナは目を閉じる。
「ごめんね」
「守れなかった」
「……でも」
静かに、微笑む。
「最後まで、信じてるから」
「お兄ちゃんなら――」
―ゼル側―
「――やめろ」
思わず口に出る。
何も見えていないのに。
―ルナ側―
「きっと――」
言葉は、最後まで届かない。
その瞬間
―ゼル側―
「――っ!!」
世界が、歪む。
胸の奥が、空になる。
「……は」
呼吸が止まる。
「……なんだ」
理解できない。
だが――
「……消えた」
確信だけが残る。
「……何かが」
手が、わずかに震える。
「……ふざけるな」
低く、呟く。
「……まだ、奪うのか」
ゆっくりと顔を上げる。
目が変わる。
「……もういい」
「全部、いい」
静かに告げる。
「一つ残らず」
「奪い返す」
その声は、冷たかった。
だが、その奥に。
わずかな“欠落”があった。




