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第19話 崩れる均衡

―騎士団本部・中庭―


「……重傷一名は医務室へ」


「軽傷は各自処置後、待機」


 淡々とした報告。


 だが空気は重い。


「……なあ」


「今回、明らかに判断ミスだったよな」


「……やめろ」


「どっちの?」


 誰も答えない。


 沈黙。


―別の一角―


「正直に言う」


 中堅の騎士が口を開く。


「このままじゃ、次は死者が出る」


 重い言葉。


「……」


「指示が二つある状態は危険だ」


「統一しないと持たない」


「……どっちにだ」


 視線が揺れる。


 誰も決められない。


―ガルド登場―


「……何の話だ」


 低い声。


 一瞬で静まる。


「……いえ」


「問題はありません」


「そうか」


 ガルドは一歩進む。


「なら聞く」


「なぜ迷う」


 沈黙。


「……」


 誰も答えない。


―強制の開始―


「今後、指示は一本化する」


 ガルドが告げる。


「俺の命令のみを優先しろ」


「副官の判断はすべて事前承認制とする」


 空気が変わる。


「……は?」


 誰かが思わず声を漏らす。


―反発―


「それでは現場判断が遅れます」


 ルークが言う。


「遅れは許容する」


 即答。


「統率の方が優先だ」


「……非効率です」


「効率は後だ」


「……」


 ルークが沈黙する。


 だが。


 周囲は見ていた。


―不満の噴出―


「……それじゃ意味ないだろ」


「また遅れるぞ」


「いやでも……」


「ガルド様の命令だ」


 分裂。


 もう隠れていない。


―ガルドの内心―


「……押さえ込め」


 思考が変わる。


「迷わせるな」


「従わせろ」


 統率ではなく。


 支配へ。


―離脱の兆し―


「……隊長」


 一人の騎士が小声で言う。


「俺、少し外れます」


「……何?」


「頭を冷やしたい」


 明確な拒絶ではない。


 だが。


 初の“距離”だった。


―ゼル側―


「いい」


 ゼルが呟く。


「始まった」


「はい」


「離脱者が出ました」


「次で増やす」


 静かな声。


「一人が出れば」


「二人目は早い」


―締め―


 命令は守られている。


 規律も崩れていない。


 だが。


 “従いたくない”という感情が。


 初めて、表に出た。



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