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第13話 広がる不信

―騎士団本部・食堂―


「……昨日の件だけどさ」


 誰かが小さく切り出す。


「南にあれだけいたの、やっぱりおかしくないか?」


「報告と違ったよな」


「でも結果的には収まっただろ」


「それはそうだけど……」


 言葉が濁る。


「……連携、ズレてたよな」


 沈黙。


 誰も否定しない。


―別の席―


「隊長の判断で二手に分かれたのが原因だ」


「いや、そもそもルート指示が曖昧だった」


「……どっちだよ」


 小さな言い合い。


「……どっちもだろ」


 結論にならない結論。


―廊下―


「……」


 ガルドが歩く。


 すれ違う騎士たち。


「ガルド様、お疲れ様です」


 敬礼は変わらない。


「……ああ」


 だが。


 視線が、ほんの一瞬だけ逸れる。


「……」


 ガルドは気づく。


 だが何も言わない。


―訓練場端―


「正直さ」


「最近、指示が噛み合ってなくないか?」


「……」


「ガルド様の指示と」


「副官の判断」


「どっちに従えばいいのか」


「……分かりにくい」


 低い声。


「おい、やめろ」


「聞かれたら――」


「……もう聞かれてるかもしれないだろ」


 空気が冷える。


―ルーク―


「……」


 少し離れた場所で立っている。


 無表情。


「(不信、拡大中)」


 小さく呟く。


―会議室―


「本日の任務についてだ」


 ガルドが切り出す。


「昨日の件は問題ではない」


「軽傷のみ、任務は達成されている」


「同様に対応すればいい」


 断言。


「……」


 誰も反論しない。


 だが。


 誰も強く頷かない。


―一人の騎士―


「……確認したいことがあります」


 手が挙がる。


「何だ」


「今後の指示は」


「ガルド様を最優先でよろしいですか」


 静まり返る。


「……どういう意味だ」


「副官からの指示との優先順位を」


「明確にしたいだけです」


 丁寧な言い方。


 だが中身は違う。


「……俺だ」


 ガルドが言う。


「俺の指示が最優先だ」


「了解しました」


 返事は返る。


 だが。


 空気は変わらない。


―ガルドの内心―


「……なんだ」


 違和感が強くなる。


「疑われている?」


 そんなはずはない。


「俺は……結果を出している」


「守っている」


 なのに。


「……なんでだ」


 答えが出ない。


―ゼル側―


「いい段階だ」


 ゼルが呟く。


「はい」


 リリアが頷く。


「内部で疑問が共有され始めています」


「個人の違和感が」


「集団の不信に変わる」


 静かな声。


「ここからが本番だ」


―締め―


 その日。


 誰も命令に逆らわなかった。


 誰も規律を破らなかった。


 すべては正常。


 だが。


 その“正常”はもう。


 誰にも信じられていなかった。



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