第12話 小さな失敗
―辺境都市・外縁森―
「本日の任務は索敵だ」
ガルドが告げる。
「最近、森の浅い場所に魔獣の気配が増えている」
「原因を探れ」
「了解!」
隊が動き出す。
規模は小さい。
危険度も低い。
だからこそ。
“気の緩み”があった。
―森の中―
「……静かだな」
「気配も薄い」
「報告通りなら、もっといるはずだが」
騎士たちが周囲を警戒する。
「隊長、分岐があります」
道が二つに分かれる。
「北と南」
わずかな沈黙。
「……北へ行く」
「了解」
だが。
「南に微弱な反応があります」
別の騎士が言う。
「……どちらを優先する?」
視線が集まる。
「ガルド様は北を優先と――」
「だが反応があるのは南だ」
「……」
誰も決めきれない。
―分断―
「……二手に分かれる」
隊長が判断する。
「北は俺が行く」
「南は三名で確認」
「了解」
小さな判断。
だが。
それがズレを生む。
―南ルート―
「……気配が濃くなってきた」
「近いな」
その瞬間。
――ガサッ
「来るぞ!」
魔獣が飛び出す。
「っ……!」
想定より多い。
「数が違う!」
「応援を――!」
だが。
連携が取れない。
「位置がずれてる!」
「援護が遅い!」
小さなズレが、重なる。
「ぐあっ!」
一人が吹き飛ばされる。
「くそっ……!」
―北ルート―
「……静かすぎる」
ガルドが止まる。
「気配がない」
その時。
「――応援要請!」
声が届く。
「南ルートより!」
「魔獣多数!」
「……っ!」
「全員、南へ向かえ!」
―合流―
「遅い!」
騎士が叫ぶ。
「数が多すぎる!」
「隊形を整えろ!」
ガルドが前に出る。
「俺が押さえる!」
剣が閃く。
圧倒的な強さ。
だが。
完全ではない。
「……連携が合っていない」
小さな遅れ。
わずかなズレ。
それが積み重なる。
「撤退だ!」
ガルドが判断する。
「撤退しろ!」
―戦闘後―
森の外。
負傷者が座り込む。
「……大丈夫か」
「軽傷です……」
死者はいない。
だが。
「……予定外だったな」
誰かが呟く。
―原因不明―
「なぜ南にあれだけいた?」
「報告にはなかった」
「配置もズレていた」
沈黙。
「……誰の判断だ」
答えは出ない。
―ガルド―
「……」
黙って立っている。
「……これは」
小さく呟く。
「ミスか?」
だが。
何かが引っかかる。
「……違う」
言葉にできない違和感。
―ゼル側―
「いい」
ゼルが呟く。
「成功だ」
「はい」
リリアが頷く。
「軽傷のみ」
「完璧だ」
「責任が曖昧」
「原因が不明」
静かな声。
「だから残る」
「不信だけがな」
―締め―
任務は成功した。
死者はいない。
問題もない。
だが。
確実に。
“信頼”だけが削れていた。




