第11話 重なる違和感
―騎士団本部・訓練場―
「本日の訓練は対魔獣連携だ」
ガルドの声が通る。
「前衛は三列、後衛は二列。いつも通りでいい」
「了解!」
隊列が整う。
――そこへ。
「配置を変更します」
ルークが口を開く。
「前衛を二列、後衛を三列に」
「魔法支援を厚くした方が効率的です」
ざわりと空気が揺れる。
「……必要ない」
ガルドが即座に切る。
「実戦想定だ」
「前衛が崩れれば意味がない」
「ですが」
ルークは引かない。
「最近の魔獣は後方撹乱が増えています」
「後衛強化が合理的です」
短い沈黙。
「……俺のやり方でいく」
「了解しました」
ルークは一歩下がる。
表面上は従う。
―訓練開始―
「前衛、前へ!」
号令と同時に動く。
「後衛、支援を切らすな!」
順調。
――のはずだった。
「……遅い」
誰かが呟く。
後衛の魔法が、わずかに遅れる。
「何してる!」
ガルドが声を飛ばす。
「……位置が合っていません!」
「は?」
「後衛三列想定で間隔を取っています!」
空気が凍る。
「誰の指示だ」
「……副官の事前指示です」
ざわり。
「……ルーク」
「はい」
「説明しろ」
「最適配置を事前に共有しました」
「お前は撤回したはずだ」
「表向きは」
わずかな間。
「だが現場判断で適用しました」
静かな返答。
―衝突―
「勝手なことをするな」
「結果は出ています」
「乱れているだろうが」
「致命的ではありません」
「……」
ガルドの目が細くなる。
「お前は誰の部下だ」
「……」
一瞬。
「……騎士団のために動いています」
直接の答えを避ける。
それだけで、十分だった。
―周囲―
「……今の聞いたか」
「……ああ」
「ルーク、あんなこと言うやつだったか?」
「……いや」
小さな不信。
だが確実に広がる。
―訓練終了後―
「本日の訓練は以上だ」
ガルドが締める。
誰も反論しない。
だが。
いつもと違う。
空気が、重い。
―ガルドの内心―
「……おかしい」
歩きながら考える。
「ルークが逆らう?」
「ありえねぇ」
だが現実は違う。
「……誰かが動いている」
確信に近づく。
―ゼル側―
「いい」
ゼルが呟く。
「表面に出始めた」
「はい」
「衝突が起きています」
「次だ」
「小さな失敗を入れる」
淡々とした声。
「成功の中に混ぜろ」
「……はい」
―締め―
その日。
訓練は成功した。
誰も傷つかない。
問題もない。
だが。
確実に。
“誰かのやり方”が食い違い始めていた。




