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HEROES SIDE 1.仮面の怪人

 ───あかん、眠くて仕方ないわ。


 時計を見ると時刻は22時30分を示しとる。ウチの家の時計より大きいから、見やすいんやけどカチカチという音も大きいんよな。


 普段やったら微塵も気にせぇへんけど、眠気と戦ってる今はこの音が子守り歌のように聞こえてしまうわ。早う集まらへんかなと、周囲を見渡して確認したけど集まりが悪いわ。


 ウチ含めてこの場に居るんは三人だけや。礼二はんと梨沙はんの二人は怪人の対応で欠席や言うてたからしゃーないけど、後の二人は何してんねん。

 

「どうしたの向日葵ちゃん、眉間にシワが寄ってるわよ」


 あかん、仲間の集まりの悪さに苛立ってたんが表に出てたみたいやわ。お隣からお上品な声で心配されてもうた。


「すんまへん、玲香はん。仲間の緊急事態言うのに優馬はんと夏目はんが来てへんから、ちょっと思うところがあったんよ」

「優馬君はわたしも分からないけど、夏目ちゃんは来れないわ」

「玲香はん、何か知っとん?」

「知っているわ。今回の招集はね、夏目ちゃんについて⋯⋯あ!」


 玲香はんが途中で喋るん止めはったから、どうしたんって思ったら司令官はんが会議室に入ってきたからやね。

 相変わらず静かに入ってくる方やわ。ウチらの横を通った筈やけど、足音一つせぇへんかった。気付いたら壇上におるし、司令官はん暗殺者の家系やったりするんやろか?


「シャイングリーンは来ていないようだな」


 会議室を見渡して、優馬はんの姿がないから司令官はんがため息吐いてはります。という事は司令官はんにも連絡してへんって事?

 あかんでー。社会人なんやったらしっかりと報連相をせんと。優馬はんはヒーロー以前に、社会人としての自覚があらへんな。


「待っていても仕方がない、この場にいる者たちだけで話を進める」


 この場におるんはシャインレッド、立花(たちばな) 真琴(まこと)はん。シャインブルー、篠宮(しのみや) 涼香(すずか)はん。シャインイエローのウチを含めて三人だけ。半分も出席してへんやん。


「事態は火急だ。知っている者もいると思うが、シャインブラックの生存反応が17時47分を最後に途絶えた」

「夏目はんが!?」


 涼香はんの方を見ると小さく頷きはった。玲香はん知ってはったんやね。真琴はんはウチと同じで初耳やったみたいや。びっくりしとる。


 ───あかん、ショックが大きいわ。眠気も吹っ飛ぶで、こんなん。


「向日葵ちゃん、大丈夫?」

「ウチは大丈夫。それより話の続きが聞きたいんよ」


 催促するように司令官はんを見つめる。部下が死んだかも知れん言うのに表情一つ変えへんな。相変わらず冷たい人やわ。淡々と話を進めてはります。


「現場近くの監視カメラから怪人との交戦の様子と、その最期を確認できた。死亡は確認されていないが、安否は保証されていない」

「どういう事ですか?」

「シャインブラックは怪人と戦いに敗れ、怪人の手で連れ去られた。それ故に安否は不明。どこに連れて行かれたかも分かっていない。本部は消息不明として処理している」


 処理した、という事は本部の人はもう夏目はんの事は諦めとるって事よね? 色々と言いたい事はあるんやけど、本部の判断は間違ってへん。怪人に連れ去られた者は誰一人として、生きて帰ってきてないんよ。


「シャインブラックを倒した怪人は過去にUSA支部のブラストマン、中国支部所属の雷雷を始めとした27人のヒーローを殺害している。本部はこの事を重く考え。その特徴から『仮面の怪人(ペルソナ)』と名付け最優先討伐対象として認定した」


 ───それが夏目はんの仇の怪人なんやね。

 真琴はんのほうを見ると拳を強く握りしめてるんが見えた。ウチらの中で仮面の怪人(ペルソナ)と交戦した事があるんは真琴はんだけや。


 真琴はん、自分の事を責めてはあきまへんよ。あの時、倒しておけば夏目はんは死ななかったって思ってるんとちゃいますか?それは自信過剰って言うんよ

 ウチらの中で一番強い言うても、相手はUSA支部でも指折りのヒーローを倒す怪人や。一人で立ち向かって勝てる相手やない。


 せやから、一緒に仇を討とう!サンシャインの皆が力を合わせれば倒せる筈や!


「先に言っておこう。我々、日本支部は本部が認定した最優先討伐対象である『仮面の怪人(ペルソナ)』との交戦を禁止されている」

「なんでや!夏目はんの仇やで!なんでウチらが戦ったらあかんのや!」

「ボクも向日葵と同意見です。何故、戦ったらいけないのですか」


 ───司令官はんの口から語られた理由は単純やった。日本支部のヒーローでは仮面の怪人(ペルソナ)には勝てないと本部が判断したからや。ウチらが弱いから仇討ちをする事も許されへん。 ふざけはるな!


 ウチだけやない、真琴はんも涼香はんも悔しそうな顔をしとる。本部の決定言うても素直に受け入れられる話やない。仲間であるウチらが仮面の怪人(ペルソナ)を倒さへんかったら、夏目はんも浮かばれへん!


「本部の決定は絶対だ。受け入れられないのであれば、ヒーロースーツは接収する事になる」

「ウチらにヒーロー辞めろ言うん?」

「私怨で動くなと言っている。本部の決定は間違っていない。これ以上私の口から言わせないで欲しい」














 結局、本部の決定は覆る事はあらへんかった。ウチらが弱いから仇討ちする事も許さへん。全てはウチらが弱いからや⋯⋯。


 司令官はんも言ってはりましたな。仮面の怪人(ペルソナ)と戦いたいのであれば強くなれと。本部に認められるくらい強いヒーローになれと。


 悔しいわ。こんなに悔しいんは初めてや。悔しくて悔しくて仕方あらへん。

 ごめんな、夏目はん。ウチらが弱いから戦う事も許されへん。ホンマにごめん。けど、ウチらは諦めた訳やない。

 強くなって、必ず夏目はんの仇取ったるからな!もう少しだけ待っといて!




 ───ホンマに勝てるん?




 食い下がるウチら諦めさせる為に司令官はんが見せてくれた映像。その一つは怪人を圧倒するUSA支部のブラストマンの戦闘の記録。

 ウチらでも戦った事がないようなビル程もある巨大な怪人を、一方的に打ち倒すその実力はヒーローの中でもトップクラスと言うていい。


 そのブラストマンが、仮面の怪人(ペルソナ)が相手では赤子のように扱われていた。一方的なソレは、もう戦いと呼べるモノではあらへんかった。


「⋯⋯あかん、一人やと余計な事ばかり考えてしまうわ」


 ウチらしくないわ。こんなにマイナスな事ばかり考えてどないすんねん!切り替えるんや!せやけど、


「寂しいわ」


 家には誰も居らへん。家族はとうの昔に交通事故で他界した。ウチだけ残してみんないなくなってしもうた。

 真琴はんか涼香の家に泊めて貰えば良かったやろうか? 家に帰ってから後悔しとる。


「日が変わってもうとるし、電話は迷惑やな」


 真琴はんはもう寝てるやろうし、涼香はんどうやろ?起きていたとしても電話する気にはならへん。涼香はんには迷惑かけたくないんよ。


 あー、でも、誰かと話したいわ。ヒーローである事は守秘義務で話せへんけど、相談に乗って欲しい。寂しくて仕方あらへんから、とにかく人の声が聞きたい。


「えーと、履歴より電話帳の方が早いやろか?」


 この時間に電話をかけても許してくれる人が一人だけおる。こんな時間にかけてくるな、なんて言うやろうけど、遅い時間でもウチの話に付き合ってくれる懐の深いええ男や。


 電話帳から目当ての名前を見つけて通話ボタンを押す。先輩と話すんはいつ以来やろ?ヒーローになってからは話す機会が減った気がするわ。


 数秒、コール音が鳴った後に先輩の声が耳に入った。


「夜分遅くすんまへん。人の声が聞きたくなりまして、連絡してしまったんよ」


 ───第一声は予想外通りこんな時間にかけてくるな、やったわ。それでも電話を切らずに話に付き合ってくれるあたり、人が良い。

 先輩は明日も仕事で、新人が入るから忙しいらしいわ。せやから手短に済ませろ言いますけど、出来ればウチの気が済むまで話に付き合って欲しいわ。その旨を伝えると怒られた。


 けど、やっぱりこの声を聞くと安心するんよ。なんでやろ? 他の男性の声は何とも思わんのに先輩の声はずっと聞いていたくなる。  

 ん!ってあかんよ!面倒くさくなって切ろうとしてるんやん!

 




 

「待ってや!ホンマにちょっとでええきん、ウチの話に付き合ってや。可愛い後輩の頼みやで()()()()

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