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悪の組織で幹部をやってる。時給3000円で。  作者: かませ犬
第二章 悪の天秤

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第三十二話 聖剣

 始めからこの地に誘導する予定だったんだろうな。俺たちのアジトがあるエリアと違い、東部に位置するこのエリアは住民の避難が完了しているようだった。


 ヒーローが俺との戦いの場に選んだのはイーストエンド・オブ・ロンドンと呼ばれるエリアにある広大な広場だ。スポーツなんかに利用されていたと記憶している。


 存在感のある金色のヒーロースーツと、体から迸る戦意はヒーローの誘導がなくても俺をこの地に導いた。


 日本のヒーローのフォーマットのようなヒーロースーツだな。サンシャインのように太陽のデザインが入っている訳でもなく、稲妻が走るような黒いジグザグが走っているだけのシンプルなヒーロースーツ。


 色の割合の殆どを金色が占めているのもあり、太陽光を反射して目にうるさい。それすらも狙ったヒーロースーツなのだとしたら質が悪い。


 背中に背負った剣は初めて見るな。ボスとの戦いでは装備している姿は見た事がない。俺を倒す為に準備した新たな武器か、あるいはボスを相手する時は手を抜いて使っていなかっただけか、俺からすれば前者の方が助かる。


『予想通り待ち受けていたのは金ピカだな。見たところ他のヒーローはいないようだが、そいつ単体でボスを圧倒する。一瞬も油断するなよ助手君』


 マッドサイエンティストからの忠告を受けながら、ゆっくりと歩いて金色のヒーローとの距離を詰める。


 余程に自信があるのか俺が近寄ってきても身動ぎ一つしない。


「お前の名前はなんと言う、ヒーロー」


 戦いを今直ぐにでも始められる距離感で、俺の事を待っていたヒーローに問う。


 わざわざ俺たちを誘い出し、ヒーローたちに誘導させてまで俺との戦いを望んだ。罠であるならヒーローを集結させておくべきだ。一対一を選ぶ理由が分からない。


 一つの可能性として浮かぶのは、味方がいると全力で戦えないというパターンだな。攻撃範囲が広すぎたり、威力が高い場合に味方を気にして全力を出せないヒーローは稀にいる。


 わざわざ市街地からこの場へと俺を誘導したのは、俺に市街地を消し飛ばされるのを嫌がったのではなく、金色のヒーローが全力で戦える舞台に連れていく為。


 その為だけにあれだけのヒーローがこの作戦で動いた。ヒーローたちの信望が厚い事は窺えるな。


 それもあって、このヒーローの名前が気になった。ボスやマッドサイエンティストに聞いても金ピカか、金色としか返ってこない。最強のヒーローとして扱われるこのヒーローの名前に興味がある。


「『ワールド』とだけ名乗っておこう」


 これ以上、怪人と馴れ合う気はないと言わんばかりに背中に背負った剣を鞘から抜いた。


 形状は西洋剣。アニメや漫画で見るようなロングソードだが、ブレイドの部分に宝石のような玉が四つ埋め込まれていた。


 金色のヒーロー、ワールドが剣を構えると宝玉の一つに光が宿る。やはり、ただの装飾ではないか。


「こちらワールド、最優先討伐対象『仮面の怪人』(ペルソナ)との交戦を開始する。以後、戦闘が終わるまで連絡はないものとして扱う」


 ───その報告が、俺とワールドの戦闘開始の合図となった。








 白銀の剣が俺に迫る。


 その一振は鍛錬に費やした時間を窺える美しい一閃だった。その剣の対象が俺でなければ拍手をして称えたことだろう。


「面倒だな」


 剣を扱うヒーローと戦ったのはワールドで4人目。その中でも特に剣の扱いが上手い。そして面倒な相手だと改めて認識する。


 剣速は早く、狙いは常に的確。俺が避ける先まで予想した剣の一振は、交わしたとしても直ぐに追ってくる蛇のような剣。


 文字通り、剣が生きているかのように俺に迫ってくる。


「剣が伸びてるぞ。どういうカラクリだ」


 ブレイドの埋め込まれた宝玉の一つが青く輝いている。ぐにゃぐにゃと蛇のように曲がりながら追撃してくる剣を交わしながら、マッドサイエンティストに報告を入れる。


 明らかに剣が伸びている。元々の長さは1メートルあるかないかだった。それが10メートル近くまで伸びて俺を追いかけてくる光景は脅威を通り越してホラーだ。


 その上、剣に意識が向いた瞬間を狙ってワールドが左手で光弾を放ってくる。大きさは拳大でさほど大きくはないが、その威力は絶大。地面に直撃した光弾は底が見えない巨大な穴を生成した。


 当たれば俺でもただでは済まないだろう。


『あれはヒーロースーツのような技術じゃない。助手君には信じられないと思うが、金ピカが使っているあの剣は()()()()()


 迫ってくる剣先を右手で殴り抜くと、痛がるように剣が収縮していく。その光景は見ればマッドサイエンティストの言葉が嘘ではないのがよく分かる。


「生きた剣か」

『そうさ。あの剣には『聖女』の魂が宿っている。志半ばで散っていったあの男の仲間の魂がな』


 聖女だの、剣に魂が宿っているだの、なんともまぁファンタジーな話だ。


 詳しく聞きたいところではあるが、剣を構えると共に肉薄してきたワールドのせいでその余裕はない。


 ───人馬一体ならぬ、人剣一体。


 剣自身が自我を持ち持ち主であるワールドの為に自ら動く。厄介極まりない。


 だから。


「壊させて貰うぞ、その剣」

「させるものか。私の大切なものはもう二度と奪わせない」

既に手遅れ

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