竹取妖呪~Act.2 真実の物語/1
東京から遠く離れたとある山の中に、一筋の光も射さない暗闇の洞窟があった。その山は古くから藤原氏によって管理され、現在でも藤原の血を引く人間が管理をしている由緒ある山だった。それ故に、人は寄りつかず、手付かずの自然を多く残すその山は、まさに彼女があの時見た風景そのものであった。
その洞窟の最深部に、堕人と呼ばれる妖がいた。
それらは、古き時代に月からこの世界に堕ちた亡者のような存在。人里離れた山の洞窟の奥にひっそりと暮らす月の罪人たち。一体何の罪で、どうしてこの場所に住み着いたのかは知られていない。ただ、彼らは不死の存在であり、太古の時代からこの場所で暮らしているのだと彼は言った。そしてその中でも最も古くからこの地に住む長老と呼ばれる堕人が、言ったのだという。
『もうすぐ月の姫が帰ってくる』
堕人の住処は姫を迎える準備に追われていた。妖忌妃はその中を堂々と歩いてくる。堕人には彼女の姿は見えていない。彼女は現在、その存在を世界から隔離している。それ故に、誰にも見つかることはないのだ。
堕人は皆のろのろとした動きで、洞窟の中の石を片付け、中を整地していた。姫を迎えるために道を作っているのだろう。
「もうすぐだ・・・。もうすぐ、この長かった日々も終わる」
「姫さまが帰ってきてくれれば、この穢れた体も元に戻る」
「月に、帰れる」
呻くような声があちこちから聞こえてくる。耳障りなその声に、トモミは少し不快感を覚えた。
しばらくして彼女は洞窟から抜け出した。そしてトモミは自分の存在を元に戻す。彼女を発見し、タツヤはすぐに彼女の元へやってきた。
「どうですか。本当に俺の言ったとおりでしょう?」
そうね、と相槌を打ち、彼女は彼を見る。いかにも現代の若者といった風な彼が、どうしてこれだけのことを知っているのか、疑問に思っていた。だが、それを聞くのははばかられる。
竹取妖呪。この呪いを実際に目撃したトモミは、その存在がどれほど危険なのか理解していた。だからこそ、この本は人の目に触れることなく、しかるべき方法をもって解呪しなければいけない。しかしこの男に逆らったら、この本の呪いを解くことが出来なくなってしまう。今は彼の機嫌を損ねるようなことをするべきじゃない。
「話によると明日の晩、かぐや姫は月から帰って来るらしいです」
その時に、竹取妖呪を彼女に渡せば、解呪される。タツヤの言葉を受け、彼女はその本を再び手に取った。
「それが、竹取妖呪」
「ええ。ようやく、この物語も終わりを迎えるのね」
今は、この得体の知れない男に従うしかない。全ては、明日しだいなのだから。