臨死此岸~あとがき地獄
二人、どこか謎の舞台に立ち、緊張した面持ちで本番開始を待っている。
不意に本番スタートし、スポットライトで照らされる。ムツキ、焦りながら喋り始める。
ムツキ(以下:ムツ)「ムツキと」
死神小町(以下:小町)「小町の」
二人「あとがき地獄~っ!!」
あとがき地獄――番外編「臨死此岸~Corpse river」
あとがき小説です。
ストーリーとは関係ないので別に読まなくても問題ありません。
ムツ「はいはい、あとがき地獄も三回目ですね~。ついに真の主役ムツキちゃんがやってきましたよ~!」
小町「小うるさい子だねぇ・・・。まあ、いいか。えーっと、今回の章についての補足説明をするコーナーだったね」
いぬ「どうも、呼ばれてないけど犬兎です」
小町「お、あんたが噂の犬っぽい兎か。あたしは死神小町。小町って呼んでくれ」
いぬ「おーらい、マイちゃん。これからは小町って呼ばせてもらうわ」
ムツ「マイちゃん?」
いぬ「あ、それは小町の本名ね。以前死神課にいたときにその美しさから、死神小町って呼ばれてたんだけど、それ以来、自分のことを小町って呼ぶようにって強制しだしてね」
ムツ「要するに、図に乗ってるわけだ」
小町「うるさいよ、バカ。なんだよ、誰だって褒められたら嬉しいじゃないか?」
いぬ「そこは否定しない。でも、その褒め言葉を強要するのはよくないと思うよワタシ」
ムツ「しっかし、よく喋る話だったね。内容の八割強が会話って」
いぬ「しかも台詞は、ほぼ小町。一方的に話を聴かされた御伽も災難だねぇ」
小町「何だよ、文句があるならはっきり言えばいいだろ?」
いぬ「会話が長い分、作成が面倒だった」
小町「きっぱり言ったな、お前・・・」
いぬ「ウチは合理主義者なわけよ。本来ならこんな面倒な話書きたくなかったんだけどね。まあ、これから先の話に関わってくるかもしれない小町ちゃんのことを書いておかなきゃならないなーと思ったのさ。まあ、あれでなんとなく小町ちゃんのキャラも掴めたでしょ」
ムツ「長台詞だけの小説を書いてみたい、っていう犬兎の高校時代からの願望が表に出た丸投げ小説の原点ともいえるスタイルだな」
いぬ「ああ、じゃあ今回は丸投げ小説について話してみようか。臨死此岸に関しては特に補足もないし」
小町「丸投げって言うからには、当然丸投げなんだよな」
いぬ「もち。風景や仕草の描写を一切省き、会話と行動だけを描写する創作スタイルだね。無駄な文章を書かないから小説全体の文字数の削減と簡略化を図っているよ。その分読者は作者のイメージに捕らわれず、自分のイメージを構成しながら小説を読み進められる反面、読者にもある程度の読解力と想像力を必要とするのさ」
ムツ「妖紀行は完全丸投げにならないように気をつけているけど、それでも多少の丸投げ感はあるよね」
いぬ「服装とかその辺は極力描写しないようにしてる。ウチの趣味がばれるから。昔書いた小説なんてもっと酷いよ。主人公やヒロインの容姿すらも描写してないんだから。自分の思う主人公とヒロインを自由に想像しなさい、って」
小町「御伽はどれかというとそれに当たらないか?」
いぬ「あ、ばれた? はい、御伽は皆さんの想像する御伽のままで、自由にイメージしてくださいね」
小町「お、そろそろ時間のようだね。今回のあとがき地獄はここまでだよ」
ムツ「次のお話はいつ完成するかわかんないけど、気長に待っててね」
二人「では、最後に次回予告です。ばいばぁい!」
第三回あとがき地獄――番外編「臨死此岸~Corpse river」/了
次回予告
色は匂へど 散りぬるを
「この歌、正宗丸も知っているかしら?」
我が世誰ぞ 常ならん
「じゃあ、この歌にまつわる伝承も知っているかしら」
有為の奥山 今日越えて
「そんな歌が、どうしてこの現代に至るまで、語り継がれているのか」
浅き夢見じ 酔ひもせず
「百年でも千年でも語り継がれる、呪いなのよ、それ」
今は昔、竹取翁というものありけり
「あなたが読んだのは、今あるほう? それとも―――」
千年余りの沈黙を破り、紐解かれるもう一つの竹取物語。
「読んだものは死ぬ、なんて噂になってたっけ」
五大妖、呪縛王と謳われた本を巡り、激突する妖たち。
「これがあれば、妖忌妃など、怖くはない・・・っ!」
怒りが頂点に達した時、トモミは妖忌妃の力を目覚めさせる。
「殺してあげるわ。あなたの、全てを・・・」
次回、妖紀行~Border of strange第三章。
「竹取妖呪~a story of thousand curse」
それは、月の姫に捧げる、呪い歌。