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桜散花~Act.4 似たもの同士/1

「双方、武器を納めなさいっ! この勝負、妖忌妃が預かった!」

 トモミは万年桜の前にたどり着くなり、いきなりそう叫んだ。タカヤはすぐに力を押さえ込み、龍を消し去る。サクラはそのままその場に座り込んだ。

「一体何があったんだ? この有様は・・・」

 山名は呟き、トモミと共に御伽の元へ向かう。意識を失っている御伽をトモミは抱き寄せて、お疲れ様と呟いた。そして、妖扇子を御伽から取り返すと、彼女はタカヤを見た。

「あなたは、酒呑童子の末裔ね。タカヤ、といったかしら」

「ええ、お久しぶりです、妖術王」

 その呼び方はやめて頂戴、とトモミは言う。

「あなた、どうしてここに?」

「私の住処に勝手に住んでいた鬼がいなくなりまして、どこに行ったかと探していましたらここにたどり着いたんです。冥界のことには興味はなかったんですが、この有様を見て、いても経ってもいられなくなり、霊冥姫の討伐を行おうかと思いまして」

 まあ、当然の流れでしょうね、とトモミは呟く。

「私も驚いたわ。まさか冥界をここまで作り変えるなんてね」

 この力をもっといい方向に扱えなかったものか。トモミは呟いて、タカヤを見る。

「でも、あなたのやり方も感心しないわね。新しいものはなんでも強制的に壊せばいいってものじゃないわ。いいものは残し、ダメなものは捨てる。昔の習慣にとらわれるのは妖の悪い癖よ」

「恐れ入ります。―――では、あの妖は・・・」

「主上! しっかりしてください、主上!」

 正宗丸はサクラを抱きかかえて泣いていた。霊冥姫の体が妙にぼやけて見える。

「妖の最後ね。魂魄はその力を全て失うか、成仏するかによって消滅する。彼女の場合は前者ね」

「そんなっ、主上を助けることは出来ないのですか?」

「そうなったらもう何も出来やしないわね。ただでさえ最も死ににくい妖なのよ、それが死ぬってことは、もうどうしようもない」

 そのまま消え去るのを待ちなさい。もう長くは無いわ。トモミはそう言って、万年桜に向かって歩き出す。

「この桜も、すぐに枯れてなくなるでしょう」

「―――が、―――ってた」

 かすかに聞こえるサクラの声。トモミは振り返りもせずにそれに耳を傾けた。

「―――は、それ、で―――った」

 静かに微笑むサクラ。

「それ、だけ―――で、よか―――」

「いいワケないでしょう」

 サクラの言葉を、トモミが切り捨てる。

「本当にそれでいいの? こんな無様な結末で、あなたはあなたの物語を終わらせる気? は、情けないわ。こんなばかばかしい話の終わりがあるものですか。私は認めない。認めないわ、こんな三文芝居」

 魂魄なら魂魄らしく未練がましくしてなさいよ。トモミはそう言い放ち、振り返る。

「死ぬな、サクラ! 義高はいつか必ずここに来るっ!」

 お前との約束を果たしに、必ず、必ず。妖扇子を開き、トモミはサクラに代わり、万年桜を操る。

「あなたの物語の結末を知るまで、あなたは死なない。私が死なせないっ!」

 トモミは魂を集め、それを一斉にサクラの中に流し込む。かなり難しい技であったが、トモミの開放された能力ならば、万年桜を操れさえすればなんとかそれを扱うことが出来た。

 無から有を操る能力。それは、ありもしない魂を作り出すことも出来る。特に深い情報も持たない方向性の無い魂故に単純にサクラの治癒に使用することが出来る。その魂はあっという間にサクラの力を回復させ、彼女の意識を回復させた。

「―――最低の、理屈ね。それこそ、あなたのわがままだわ」

「私とあんたは似たもの同士ってことよ、サクラ」

 そして、二人で笑う。

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